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僕はおまえが、すきゾ!(24)

金曜日の夜、僕の携帯に優作から電話があった。内容は次の通りだ。開口一番、優作は言った。
―明日、俺と古賀さんと、古賀さんの女友達と四人で、ダブルデートしよう、そんな話だった。
恐らくあの古賀・メギツネ・朝子が優作をそそのかしたに、違いない。彼女ならどんな策を使ってでも、僕と優作の友情を壊そうともくろむに違いない。僕はすぐに言った。
「興味ないね」と。
優作は尚もご託を並べた。
―お前も彼女、作った方が絶対にいいって、と。僕はそれに多分なウザさを感じて、スマホの通話終了の赤マークをタップした。通話はバッサリと切られた。
優作の奴、仕様の無い事を拭き込まれたもんだな、僕はそう思って、電話を切ってすっきりとした気分になれた。
とその数十秒後にすぐさま携帯の着信音が鳴り響いた。優作からだった。
またどうせ、手を変え品を変え、ダブルデートの話を持ち掛けてくるに違いない。
僕はスマホの赤色の丸ボタンをタップした。電話は音を立てて、切れた。
僕に彼女など必要ない。恋愛は時間の無駄だ。
LINEのやりとりだろうが、長電話だろうが、デートだろうが、相手に僕の時間を奪われる事に何のメリットがあるのだと言うのだ。
自分の時間を捧げてまで、価値がある事があろうか。それなら一人で映画を観ていた方が、まだマシだ。そんな事を考えていると、またしつこいまでのスマホの着信音が鳴った。
「なんだよ!」と言って、僕はスマホの着信画面の緑色のボタンをタップした。通話は繋がった。
優作は、おい!どうして切るんだよ!と受話器の向こうで喚き立てるようにうるさく言った。
煩い奴だ、僕はそう思いながらも、優作と話してみる気になった。彼の言い分はこうだ。
―映画なら、別に喋る必要も無いだろう、だから、行こうぜ、古賀さんも古賀さんの友達も、宏人の事、凄く考えていてくれてるんだから。らしい。
煩わしい女子だ。映画を観るのなら、一人で行くに限る。集中して観るのなら、一人の方がいいに決まってる。
「だったら、俺とだって映画、観る事無いよな」
それとこれとは、別じゃないかよ、と僕は電話口で呟いた。
「俺、お前と映画観るのやめようかな」、優作がそう言うのも、全ては古賀の仕組んだ罠に違いない。僕にはもうその申し出を受け入れる事しか、選択肢は残されていなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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