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僕はおまえが、すきゾ!(19)

今回の騒動は、古賀朝子にしたら、何でも無かったようだった。
僕達はまた「鳥貴族」で会食をした。
僕は、生ビールを、優作はハイボールを、そして古賀さんは、スパークリングワインのグラスを頼んだ。
土曜の午後の店内は、客で溢れていた。
古賀さんは、優作に話し掛けるよりも、僕に話し掛ける事に注進しているようだった。
僕が今、予備校生だと言う事、大学は科学方面の大学を希望している事、将来はロボット工学を学んで、それを活かした職業に就きたいという事。
そして、映画が好きな事。
古賀さんの好きな映画は、名探偵コナンだった。
古賀さんは自分のコナン愛について、僕に切々とそれを語った。
彼女は劇場版コナンの中で、「ベイカーストリートの亡霊」という劇場版第6作目が特に好きだと言った。
その作品は、テレビドラマを書いていた有名な脚本家の野沢尚が手掛けたものだった。
彼女は、その作品の事を、コナンファンじゃなくても、楽しんで観れる映画だと言った。
僕はアニメ全般に関心が無かった。
「それ、ホントに面白いの?」
全く興味を示さない僕に、古賀さんは言った。
「今のⅤRの先駆け的な話なんですよ。ⅤRの仮想現実の霧のロンドンで探偵ホームズの代わりとなって、切り裂きジャックを倒すっていう話なんです」
ふーん、と僕は頬杖を突いて横向いて言った。
そんな僕の様子を慌てるように、優作は合いの手を入れた。
「面白そうじゃないの、へー、今度一緒に観ようよ」
優作と古賀朝子は意気投合していた。
僕は二人のツマラナイ話しに入る事もせず、ジョッキを挙げて、生ビールをグイと呑み込んだ。
僕は段々、不機嫌に、優作と古賀さんは陽気になっていた。

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