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【質問箱】リンパ嚢胞ができ不安

私が代表を務める卵巣がん体験者の会スマイリーでは匿名で質問をしたい方のために「質問箱」を設置しています。
回答はスマイリーのTwitternoteなどで回答していきます。
今日の質問と回答は以下のとおりです。

お答えします

患者会の相談取り扱い範囲

詳細な治療経過、相談内容について記載いただきありがとうございます。
少し難しいご相談のため回答までにお時間をいただき申し訳ございませんでした。

今回の患者様のご相談は

  1. 術後に生じたリンパ嚢胞の大きさや状態が変わらないか

  2. リンパ嚢胞が今後悪さをしないか

  3. 現在リンパ液はどのような状態なのか

  4. 卵巣がんの再発が不安

といったものです。

患者会では医療法・医師法などの観点から、診断(あなたは●●という病気です、あなたの病気は今後こうなります)、介入(あなたはこの抗がん剤治療をするべきです、あなたは紹介された治験に参加するべきです)をすることはあってはならないと考えます。

今回のご相談は診断にかかわってくると判断し回答するかどうかとても悩みました。

アドバイザーの医師に相談しました

スマイリーの活動を応援してくださっている医師に回答前に相談させていただきました。
医師は詳細な診療情報提供書や画像をもらわないとほんとうのところがわからないなぁという反応でした。
そのうえで、以下のようなご提案をいただきました。

  1. 主治医にちくちくした痛みがあること、今後このリンパ嚢胞がどうなるか不安であることを改めて伝えて説明を求める

  2. 主治医の説明では理解できない・不安が消えない場合はセカンドオピニオンに行きたいと申し出て、婦人科専門医に相談に行く

セカンドオピニオンとは

セカンドオピニオンについてはこちらに詳しく書かれています。

主治医と話し合いを行っても他の医師はどう思うのだろう、見解を聞いてみたいと思った時に利用することができます。
まれに「転院する」「主治医の変更」であるように誤解をされている方もおられますが、今後もこれまでの主治医のもとで経過観察や治療を行うことが前提で受けるものです。

メリットとしては以下のようなことがあります。

  1. 日頃の診察よりも時間をしっかりとってもらえるので主治医には伝えにくい不安や質問をしやすい

  2. セカンドオピニオンの結果をもとに主治医とこれからについて話しやすい

  3. セカンドオピニオン医師から主治医にフィードバックがあるので主治医も他の医師の見解を学び考えることができる

デメリットとしては以下のようなことがあります。

  1. 患者の権利だとわかっていても主治医にセカンドオピニオンをもう出るのに勇気がいる

  2. セカンドオピニオンは国民皆保険の対象ではないため費用がかかる(30分1万1000円〜5万円くらいの医療機関が多い)

不安を放置することはお勧めしません

スマイリーでは2016年9月1日から2022年5月31日までのあいだに8750件ほどの患者さんからの相談を受けています。
相談者様と同じく不安が解消されずに相談して来られる方も少なくありません。

図に示したように人が感じる痛みや苦痛はさまざまなものがあり、それらが相互に関係をしているといわれています。

相談者様はちくちくとして身体的痛みと、リンパ嚢胞が今後どうなるのかという不安を精神的な痛みを感じておられるのかなぁと感じています。

こうした痛みを放置することで、だんだん主治医と信頼が構築できなくなっていく人間関係の痛みという社会的痛みを感じるようになったり、自分の不安やつらさが取り除かれないことにより自分の肯定感や存在意義を否定されたような気持ちになる魂の苦痛(スピリチュアルペイン)を感じられる患者さんもおられます。

そうしたことが起きないよう、できる限り解決できるかもしれない不安や苦痛は早く取り除けると良いかなと思い、上記のような回答をさせていただきました。

再発の不安について

卵巣がん患者さんの意識調査研究は複数存在しますが、「再発の不安」はどの研究でも上位を占める不安です。

主治医は「できれば再発をしてほしくない」「今後も患者さんには元気に予後を過ごしてもらいたい」と思って初回治療をしていると思います。
しかし、卵巣がんの再発をする患者さんは決して少なくはなく、再発については個人差・不確実性があります。

患者さんは再発について不安を感じていてもそこは不確実性があるわけですから医師は安直に再発する・しないを答えにくいということはご理解いただけるものと思います。
実際にスマイリーのサービスご利用者様のなかには4期Bと診断され初回治療を受けた後10年以上無再発という方が何人もおられますし、1期Aと診断されて初回治療を受けた患者さんでも再発する方もおられます。

そこで、患者会としては再発の不安はあって当然であること、しかし再発を本当にするかは不確実性があってわからないことをお伝えした上で下記のような提案をしています。

もしものときに備えよう

ウォーキングなどの軽い運動はがん患者の不安を軽減するという「がんサバイバーのための運動ガイドライン(ブリティッシュコロンビア大学)」が発表されました。

卵巣がん治療で落ちた体力を徐々に回復することは、もしも再発をした時を考えると重要なことです。

コントロール不良の高血圧になるとベバシズマブが使えません。
糖尿病になると吐き気どめなどに使うオランザピンが使えません。
軽度の運動とバランス良い食生活を送ることはとても大切です。

再発するかどうかはわからない、だからこそ、もしもの場合に治療がしっかりできる体を作っていこうと患者さんにお話をしています。

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