チャーハン落語 『料理人に聞け!』

チャーハンをテーマにした短編落語脚本を書きました。
タイトルは『料理人に聞け!』。

 ~ ~ ~ ~ ~

リポーター「えー、本日は【日本一の味】と呼び声の高い、こちら豊竹飯店に 参りました。

こちらのご主人に【日本一のチャーハンを作るコツ】を伺いたいと思います。
ただ、ご主人は大変無口な方でして…。
厨房でチャーハンを作りながら…だったらインタビューに応じる、とのことでした。

すでにご主人は、だいぶ前から厨房でスタンバイしてらっしゃいます。
ご主人、お待たせしてすいません!」

(ご主人、レンジで中華鍋を熱している)ジリジリ、ジリジリ…

リポ「ああ、待ち過ぎてジリジリしてらっしゃいますね。お忙しい所恐縮です。ではインタビューを始めてよろしいですか?」

(鍋に油とラードをひく)チャッチャッ、チャッチャッ。

リポ「はい、チャッチャッと始めます。
まず単刀直入に伺います。
ご主人にとって、チャーハンの極意とは何でしょう?」

(溶いた卵を鍋に流す)ジュ~~~。

リポ「ジユウ! なるほど、自由な発想で先入観無く作るということですね!
ではご主人がチャーハンを作る際に意識なさっていることは?」

(ボウルのごはんを鍋にあけ、薬味を入れる)ドサッ、サッサッサッ。

リポ「ははぁ、ドウサッ(動作)をサッサと。素早さが秘訣ということですね。
さて、チャーハンの方はこれから、いよいよ佳境に入ります」

(鍋とおたまが激しくぶつかる)コッカラコッカラ、ココカラココカラ!

リポ「ここから、ここからがチャーハンの醍醐味です!
おたまで先程のごはんをほぐして、炒めながらの味付け!
リズミカルな動きです!」

(炒める音と、おたまの音が交錯する)
ジャージャーコッカラコッカラ、ジャードコドコ、コッカラコッカラ!

リポ「さらに繰り返し、ここからとアピール!
香ばしい匂いが漂ってまいりました!
ご主人、このチャーハンを求めて、お客さんがお店に押し寄せるんですね!」

(塩と調味料を投入)サァーット、サット。

リポ「殺到すると。なるほどー。
お客さんは、どのへんからいらっしゃるんですか?」

(鍋を強く揺する)ドコカドコカドコカ!

リポ「そりゃ、どこかでしょうけど」

(炒める音と、鍋の音と、おたまの音が交錯)
ジュージョー、カンダ、ゴタンダ、ゴンダワラ、クダン、トダトダ、タカダノババッ!

リポ「十条、神田、五反田、権田原、九段、埼玉の戸田に、高田馬場ですか!
あちこちからおいでですね」

(再び炒める音、鍋とおたまのぶつかる音)
ジャーコッカラコッカラ、ジャンジャンデキテク、ジャンジャンデキテク!

リポ「そうこうしているうちに、【日本一のチャーハン】がじゃんじゃん出来ていきます!
醤油と胡椒で味つけをして、おたまにクルリとまとめて…」

(おたまの縁を鍋で叩く)カン!(チャーハンの皿を出す)セイッ!

リポ「カン・セイッ! 完成です!
いやー、見事な【日本一のチャーハン】の技でしたね。
ご主人、どうもありがとうございました!
私もすっかりお腹が空いてしまいました。
あれっ、ご主人はもう後片付けの鍋洗いに入られましたね。
ご主人ーっ! このチャーハンはご主人お食べになりますかーっ?」

(流しで鍋を洗い始める)カラン、ジャー。クラワンクラワン、ジャー。

リポ「クラワンのジャー? ああ、食べないんですか? では私が頂きます」

                               (了)

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