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題名読書感想文15:検定を省略したら重複する

 本の題名だけ読んで感想を書く、最も読書を拒絶した読書感想文、それが「題名読書感想文」でございます。同時期に、似たようなタイトルをかき集めて感想を書く「パロディタイトル収集記」というものも始めたんですが、よくよく考えればこれも「題名読書感想文」じゃないか、とようやく気づきまして、先日、ふたつのテーマを統合しました。

 さて、今回のテーマは「検定」です。世の中には様々な検定がございまして、人気の検定ともなりますといくつかの出版社が問題集や参考書をこぞって刊行しております。

 中でも人気の検定に語学がございます。日本では外国語がひとつできるだけで履歴書に記入できますから、英語を筆頭に様々な本がございます。だから、今まで見逃していたのかもしれません。

 よく使われる単語は省略される場合があります。それは語学検定であっても同様で、例えば「英語検定」は「英検」なんて略されます。むしろ、略語のほうをよく使うと言っていい。

 しかし、フランス語検定の略語は「仏検」なんです。

 いや、もちろんフランスは「仏」の一文字で表すとは知っていましたけれども、改めて「仏検」と見ると、ものすごく仏教または仏像の検定っぽいんです。

 調べてみたら、日本仏教検定の存在は確認され、過去には日本仏像検定も開催されていたようです。

 日本仏教検定もまた略語として「仏検」を名乗っているようでございまして、「やはり『仏』の本家は仏教でしょう」と暗に仰られているかのようです。現在のところ、ふたつの検定が真の仏検を巡って争ってはいないようですが、略語が重複するのは往々にしてございます。

 アルファベットの略語なんて重複しまくりで、ウィキペディアでもそれが簡単に確認できます。同じNSCでも「国家安全保障会議National Security Council」なんて物々しいものからお笑い芸人の養成所New Star Creationまでバラエティに富んでいます。

 そこで気になったんです。他にも、別の検定と重複する可能性がある言語が他にもあるんじゃないかと。なんでそんなものが気になるのか自分でも分かりませんが、気になったなら調べるしかありません。

 ただ、全ての言語を調べていてはキリがありませんので、調査対象を特定の言語にしぼりました。具体的にはウィキペディアの「ネイティブスピーカーの数が多い言語の一覧」から母語話者3000万人以上の31言語に加え、東京外国語大学で学べる言語、それから私が「何となくこれは日本でも知られているんじゃないか」と勝手に選んだ言語、あとは人工言語代表としてエスペラント語をピックアップしています。

 各言語の漢字表記に関しては、日本で比較的よく用いられている表現を選んでいます。日本語表現がない場合は、外国語の漢字表記の多くが中国語由来という状況をふまえ、中国語表記を採用しています。

 なお、実際にその言語の検定が国内に存在するかどうかや、略称があるかどうかは考えておりません。勝手に作っているものも多いですし、実際に存在する言語検定と名前が異なっている場合もございます。ですので、正確性には目をつぶり、暇つぶし代わりにお楽しみくだされば幸いです。

 そんなわけでいろいろ調べてみましたところ、おおよそ3つに分類されました。「略したら日本に馴染みのない漢字が飛び出てきた検定」「略語にしても競合がなさそうな検定」「略語にしたら競合がありそうな検定」です。順にご紹介して参ります。


1.略したら日本に馴染みのない漢字が飛び出てきた検定

 略語にしたら日本語でも馴染みのない漢字が出てきてしまった言語検定を紹介して参ります。

パンジャーブ語検定:旁検

 パンジャーブの漢字が「旁遮普」であることから来ています。ちなみに「旁」を調べたところ、以下の結果が出ました。

音読み
ホウ・ ボウ
訓読み
かたわら・ つくり・ あまねし・ ひろい・ かたがた・ よる
意味
①かたわら。わき。「旁若無人」 ②つくり。漢字を構成する右側の部分。 [類]①②傍 [対]偏 ③あまねし。ひろい。ひろく。 ④かたがた。ついでに。 ⑤よる。よりそう。

 なんか見た目のいかつささえ気にならなければ、日常生活で使おうと思えば使えそうな言葉ですね。

 他にもいかつい略語になってしまったものもあります。

ビルマ語検定:緬検

 ビルマは漢字にすると「緬甸」のようです。緬も甸も馴染みが無さすぎて、古代中国の思想家みたいな単語になってしまっています。とりあえず、「緬」を調べたところ、こんな感じになりました。

音読み
メン・ ベン
訓読み
はるか・ とおい
意味
①細い糸。 ②はるか。とおい。「緬然」

 旁もそうですけど、漢字からは想像できない意味ばかりです。

 まだあります。続いてはこちら。

フィンランド語検定:芬検

 フィンランドは「芬蘭」になるため、芬検となりました。これまた初見すぎて違和感しかありません。「芬」の読み方と意味は以下の通りです。

音読み
フン
訓読み
かおる・ こうばしい・ かおり
意味
①かおる。こうばしい。「芬芬」 ②かおり。よいかおり。また、よい評判。ほまれ。「芬香」 ③おお(多)い。さかん。

 よい香りっぽさがゼロなのは、我々が芬と出会ったばかりだからだと思われます。芬になれてくれば、芬を見るたびに自然とよい香りが想像できるのでしょう。

 こんなのもあります。

チェコ語検定:捷検

 チェコは漢字で「捷克」なのだそうです。「チェ」の部分を担当しているのが「捷」なんでしょうか。では、チェ・ゲバラは捷ゲバラなのでしょうか。試しに、チェ・ゲバラを中国語版ウィキペディアで調べたところ、「切·格瓦拉」と出ました。切られてます。切ってるのかもしれませんが。

 「捷」はこんな感じです。

音読み
ショウ
訓読み
かつ・ はやい
意味
①かつ。戦いにかつ。勝ちいくさ。「捷報」「大捷」 ②はやい。すばやい。「敏捷」「捷勁(ショウケイ)」 ③ちかい。近道をする。「捷径」

 チェコがすごい字なら、スロバキアもすごい字です。

スロバキア語検定:斯検

 スロバキアは「斯拉仏克」なんだそうです。もうどの文字がどれを担当しているのかよく分かりません。

 「斯」はこんな字なんだそうです。

音読み

訓読み
これ・ この・ かく・ かかる
意味
①これ。この。ここ。「斯界」「斯業」 [類]此(シ) ②ここに。すなわち。 ③かく。かように。このように。 ④外国語の音訳に用いられる字。「瓦斯(ガス)」

 「外国語の音訳に用いられる字」という、身も蓋もない意味が出て参りました。漢字辞典の意味でそんなのが出てくるんですね。知りませんでした。

2.略語にしても競合がなさそうな検定

 続いては、日本語として割と馴染みがある字なんですけれども、日本に存在する他の検定と名前がかぶらなそうなものです。

 ここはもう、一覧をザッと載せてしまいます。注釈が必要なものにかんしては、その都度、付け加えてあります。では参ります。

中国語検定:中検
朝鮮語検定:朝検 ※実際は韓国語能力試験またはハングル能力検定。
英語検定:英検(英吉利)
アラビア語検定:亜検(亜剌比亜)
タミル語検定:坦検(坦米爾)
ベンガル語検定:弁検(弁軽)
スペイン語検定:西検(西班牙)
ロシア語検定:露検(露西亜)
ドイツ語検定:独検(独逸)
ベトナム語検定:越検(越南)
ウルドゥー語検定:烏検(烏爾都)
イタリア語検定:伊検(伊太利)
カンナダ語検定:康検(康納達語)
オリヤー語検定:奥検(奧里亞語)
ウズベク語検定:月検(月即別)
モンゴル語検定:蒙検(蒙古)
フィリピン語検定:比検(比律賓)
ハンガリー語検定:洪検(洪牙利)
ギリシア語検定:希検(希臘)
ラテン語 拉検(拉丁) ※「羅甸」とも書く。その場合は「羅検」。
スウェーデン語検定:瑞検(瑞典)
ノルウェー語検定:諾検(諾威)
オランダ語検定:蘭検(和蘭)

 特殊なものとして、オランダは1文字で表す場合は2文字目の「蘭」の字を使います。

 これらの言語は検定試験を略語にしても他の検定試験と今のところ重複していないようです。ただ、ちゃんとした資格ではなく、一種のクイズみたいな形で「〇〇検定」としてネットで公開しているケースが見られまして、例えばオランダの「蘭」と重複する「ラン(蘭)検定」、ギリシアの「希」では「希ガス検定」を確認できました。

3.略語にしたら競合がありそうな検定

 最後に、「〇検」にしたら競合がありそうなものをご紹介します。

 まず最初はもちろん仏検です。日本仏教検定と「仏検」の名を分け合っています。

 そういう意味では、日本語検定の「日検」も「日本仏教検定」のような「日本〇〇検定」の略語と重複する可能性が高い。そんな略語を使っているかどうかはともかくです。

 違う言語だけど頭文字が同じのため、略語にするとかぶってしまう事例がいくつかございました。まず、テルグ語は「泰盧固」語、タイ語は「泰」語ということで、どちらも「泰検」になってしまいます。

 まだあります。ヒンディー語は「印地」語、インドネシア語は「印度尼西亜」のため、どちらも検定の略語は「印検」です。更に、名前に「検定」はついてませんが、国内に「印」で始まる資格「印章彫刻技能士」が存在しており、略語の重複する可能性がございます。

 マラーティー語は「馬拉提」語、マラヤーラム語は「馬拉雅拉姆」語、マレー語は「馬来」語ということで、どれも「馬検」です。なんだか車検の馬版みたいにも見えます。見た通り、馬の資格との重複可能性がございまして、例えば「乗馬ライセンス」がこれにあたります。

 ちゃんと国内の検定と重複する可能性がある言語もあります。例えば、ジャワ語は「爪哇」語のため、ネイル関係の資格と重複の可能性がございます。具体的には「爪ケア技能検定」「ネイル知識検定」「ネイリスト技能検定」などがあります。

 トルコ語は「土耳古」語ということで、「土検」となります。こちらは「土木技術検定」との重複が考えられます。

 ペルシア語は「波斯」語、ポーランド語は「波蘭」語ということで、略語はどちらも「波検」となります。波から始まる検定は見つかりませんでしたが、2番目の字を採用するオランダスタイルにより、「熱波師検定」との重複可能性が考えられます。

 他にもオランダスタイルによって重複の可能性が出てくる言語がございます。グジャラート語は「古加拉特」語のため、略語は「古検」となります。こちらは「考古検定」との重複が考えられます。スワヒリ語は「史瓦希利」語のため、略語は「史検」となります。当然ながら「歴史能力検定」との重複が考えられます。

 最後に特殊な事例を6つほどご紹介いたします。

 ポルトガル語は「葡萄牙」語ということで、「葡検」です。「葡萄」はもちろんブドウでございますから、ブドウがらみで何かないかと思って探したら「ポルトガルワイン検定」がありました。フランスワインやスペインワインなどの検定はないのに、なぜかポルトガルワインだけ国内で検定があるとは。やはり、ポルトガルが「葡萄牙」であることと何か関係があるのでしょうか。

 ラオス語は「老檛」語ということで、略語は「老検」です。頭に「老」がつく検定を探したところ「日本シニア検定」が出てきました。場合によっては、こちらと重複する可能性が考えられます。

 アゼルバイジャン語は「阿塞拜疆」語ということで、略語は「阿検」となります。調べたら、「あわ検定」というものが見つかりました。「あわ」が「阿波」なのか「安房」なのか、その両方なのかは不明ですが、一応は重複の可能性があると思われます。

 ウクライナ語は「宇克蘭」語ということで、略語は「宇検」となります。そのような検定は確認できませんでしたが、奄美大島に「宇検村」という自治体が存在しています。

 デンマーク語は「丁抹」語ということで、略語は「丁検」となります。そのような検定は確認できませんでしたが、統計学では「t検定」という分析方法が存在しています。

 エスペラント語は特に漢字表記が見つかりませんでした。中国語ではどう表記するのか調べてみましたところ、なんと「世界語」というものすごい名前になっていました。この場合、略語は当然「世検」となり、「世界遺産検定」と重複する可能性がございます。

 検定は省略すると他の資格と重複する可能性が思ったよりもあるのだと思い知らされました。今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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