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コレクション中毒が止まらない

 変なものを集める子だったと、今でも母に言われます。そう言われて思い出してみたんですが、確かに子供の頃、ものを集めては母から怒られたりいじられたりしていました。収集したものは覚えているだけでも、石、セミの抜け殻、ドクログッズ、ゲームの攻略本がございます。

 石は触り心地、色、においなんかで気に入ったものを集めていました。集めたらどこかに保管しておきたいと思った私、家の食器棚からおせち料理に使う重箱を拝借しまして、集めた石を詰め込んでおりました。そうすると、当然の流れとして母が私の部屋で重箱を見つける、開けたら石が詰まってて絶句、私が呼び出されて怒られるという現象が起きるわけです。石が詰まった重箱を見た私は、母の前で「タヌキに騙されて貰ってきたおせち料理みたいだ」との感想を漏らし、母の怒りを追い炊きしてしまいました。

 セミの抜け殻もよく集めました。あの艶々した外観が溜まらなかったんです。よく見ると色や形に違いがあって一つひとつに個性がある。最初は集めるだけで何もしなかったんですが、ある日、私は何となく姉のシルバニアファミリーを引っ張り出し、可愛らしい動物人形の代わりにセミの抜け殻を使ってみたんです。その姿を見た母は悲鳴をあげ、姉は聞いたことのないプロレス技を私にかけてきました。

 ドクログッズも母を怯えさせたコレクションでした。家族の旅行ではもちろん、学校の遠足や修学旅行、大会遠征など、どこかへ行くたびに頭蓋骨をかたどったグッズを買ってくるんです。キーホルダー、シャツ、ポスター、置物。ジャケットにドクロが描かれたCDを買ったこともあります。いわゆるジャケ買いというやつですね。部屋のインテリアが徐々に黒魔術化していく私を見て、母は眉間にしわを寄せながら「もっとマシなお土産を買いなさい」と言いました。

 攻略本に関しては、少なくとも石や抜け殻やドクロに比べて見た目がまともだったためか、母が悲鳴や怒鳴り声をあげるようなコレクションではありませんでした。でも、母は知らないんです。ゲームの攻略本は文字通りゲームを攻略するために購入する本なのですが、私はそのうち持ってないゲームの攻略本まで買い始めたんです。そして、読んで楽しんでいました。「このゲーム面白そうだな」と思い、攻略本の後にゲームを買ったこともあります。最終的には、母が家計簿に使うつもりで買いためていたまっさらのノートを引っ張り出してきて、私の頭の中にしかないゲームの攻略本を書いていました。それを見ても母は何も言いませんでしたが、狂気が分かりづらくなっただけで、ヤバさは他と大体同じくらいだと今になって思います。

 ただ、母がとやかく言わなくなったのには別の理由もあったようです。母が姉に「あいつは何で変なもんばかり集めるんだ」と愚痴った時、姉は「でも、母さんも足の爪とか集めてんじゃん」と思わぬ一撃を食らわされたようなんです。どうも母は自分の足の爪を切るたびに容器に入れて集めていたようなんですが、確かにこれはこれでクレイジーです。足の爪以前にもきっと数々の珍品を集めてきたのでしょう。息子の奇行の原因が自分の遺伝子にあると知り、母はトーンダウンしたようなんです。

 さて、コレクションの天敵と言えばスペースです。どんなものでも、集めれば集めるほど保管場所に困る。集めたものが膨大になればなるほど、整理整頓だけで時間がかかります。同居してる家族には文句を言われますし、喧嘩なんてしたら怒りに任せて捨てられかねない。引っ越しだって大変です。

 そんな数々の理由に加えて、大人になるにつれて飽きてしまったこともあり、石も抜け殻もドクロも大体は処分してしまいましたが、ドクロシャツはまだ部屋着として使ってますし、攻略本はなんかプレミアがついてるとか言われて貧乏性が刺激され、母に頼んで実家の本棚へ置いてもらってます。さすがに自作攻略本は恥ずかしすぎて即資源回収行きでしたが。

 とにかく、引っ越しを何度か経たこともあって、ものをコレクトするのは大変だと身に染みるようになりました。部屋が散らかる原因にもなるし、大体のコレクションは終わりがありません。探せば探すほど珍品が出てくる深い沼なんです。もの集めはやめようと何となく思ったんですが、思いついてしまったんです。面白いエピソードとか不思議な名前とかだったらどれだけ集めようとスペースは要らない。せいぜいノートに書き込んだりパソコンに入力したりするだけで、物理的にスペースを圧迫することはほとんどなくなる。

 しかし、コレクションは増えれば増えるほど大変で、大体は終わりがありません。ネタになるエピソードや変わった名前もまた同様で、こうやって作業している私のパソコンには奇怪なネタ帳や名前一覧があちらこちらに溜まっています。近年はクラウドサービスが盛んになったこともあって、ネットのあちらこちらにアホなネタ帳が散り散りで保管されています。困ったことに、こうやってネタをnoteなどで形にするよりも、ただ何となく思いつくネタ数の方が多いため、ますます変なメモがあっちこっちに放置されています。

 こんな現状を母に知られないよう願うばかりです。

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