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例文の暗記と単語の暗記

今回は英語などの外国語の学習で、例文の暗記と単語の暗記がどう違うのかについてお話しします。

まず、例文暗記が勧められる理由の一つに、「文」が実際の書きことばのなかで、最低限のまとまりをもった単位であることが挙げられます。「語」にせよ、「文」にせよ、文章の中で見れば断片に過ぎません。「単語のような断片でなく文を覚えよ」では例文暗記の利点が説明できていません。「最低限のまとまり」というのは、「最低限の文脈」がそこにあるということもできます。つまり、基本的な語彙を実際に使われている形で覚えるための最小単位が「文」であるわけです。

例文暗記が推奨されるもう一つの理由に、それが文文法の実例である点が挙げられます。文法のしくみをことば(私たちにとってはとりわけ日本語)で説明されて理解しただけでは、文法知識を自在に使いこなすようにはなりません。文法規則が実際に適用された例、言い換えれば実際の文法現象に触れる必要があるのです。特に日本語訳と比較しながら覚えることで日本語と英語との違いに気づくことができ、英語のしくみに対する理解が深まっていきます。理解を深めながら覚えていくことで、ことばは自信をもって使うことができるようになります。

では単語を取り立てて覚えることは必要ないのでしょうか。もちろん文章を読んでいて出てきた単語を覚えていくといった、読解学習の一環で覚えることは必要です。そのほかに単語集のような、単語だけを扱う教材を使った語彙学習は必要ないのでしょうか。この答えは「必要あり」です。

その文脈に現れた語と、その意味が似ているもののその文脈に現れない語との違いを学ぶには、読み物的な単語集を読んで理解することも有効です。語法や類義語との比較などを言葉で説明してある単語集です。また、文脈に比較的左右されない語については文章中での出現頻度は少ないものの、知らなければ文章を読む時に支障を来します。このような単語は入試の英語長文でいうと出てくる語彙の5%未満にすぎませんが、このことは最大で20語に1語は知らない単語ということになります。このためこのレベルの語彙については単語集などを使って覚えることも大切なのです。

このことから、受験英語の最初の一歩が単語集であるのではなく、むしろ最後の一歩が単語集であるということになります。テーマ別単語集や語形成+語源で覚えるものなどを活用して語彙を増やしていくのは、むしろこれからの時期に必要なのです。ただし、例文暗記を含めた文レベル~文章レベルの文法知識の学習とその知識を使った翻訳学習がある程度進んでいる受験生がその主な対象になります。

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