見出し画像

言語知識の「定着」について

今回は言語知識の「定着」についてのお話です。定着とは記憶であり、定着を図るということは覚えるということです。ことばは知らなければ使えませんから定着は絶対に必要です。前回まで述べてきた「理解」もこの定着のための手段という位置づけになります。

定着には意識的なものと無意識的なものがあります。前者は例文暗記に代表されるもので、後者には文章の音読などがあります。例文暗記の基本的な方法は「声出し」と「筆写」です。つまり、繰り返し声に出して読んだし、手で書き写したりするわけです。市販の例文集には日本語訳が付いていますから、英語と日本語を対応づけながら、そしてそれまで理解してきた文法や語彙の知識を参照しながら、声に出したり書き写したりしていきます。声に出すときは棒読み厳禁です。個々の語句の発音の正しさも重要ですが、文法的な分析に基づいた抑揚を付けていくことも同じくらい重要です。このときに、この文はどんな文脈や場面で使うのだろうかと考えながら進めていくようにします。それがまた、音読の仕方に影響していきます。書き写す場合は英語と日本語の比較対照により多くの時間が割けます。このため「これはこの訳でいいのかな」というような疑問がわくことがあります。そのような場合は躊躇せずに辞書や文法書を参照して疑問を解決することに努めることが大切です。

例文は「文」という単位で切り分けられたものです。書きことばでいうならば「文章」というより大きな単位があり、「文」は「文章」の断片に過ぎません。このため、文章全体に触れる学習が必要になり、その一つに文章の音読があるわけです。文章の声出しも文の声出しと同様の注意点を踏まえるわけですが、文章では、「誰が、誰に向かって、いつ、どこで、何のために、どのように」書いた文章なのかをできるだけ考えるようにしていくことが大切です。こうすることによって「どう音読すべきか」という方向性が見えてきます。たとえば、新聞記事であれば、ニュースキャスターが原稿を読むような読み方が一番近いでしょう。初期のセンター試験のような手紙文であれば、特定の相手に語りかけるような感じになるわけで、そのときの感情はどのようなものかを文章から読み取って声にのせていくわけです。文章全体に触れる学習にはこのほかに精読などの翻訳学習がありますが、これらは別に述べていますのでご参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?