【レシピのことば】 「切る」と言う動作について
一言で「切る」と言っても、色々な切り方があります。
ここで言う「切り方」は、切った後の形の違い(いちょう切り、千切り、みじん切り、など)による手順の話ではなく、それ以前の包丁の動かし方、動作、扱い方の話です。
「切る」には種類がある
英語で言うcut、slice、chopも日本語のレシピでは、文字数の関係で「切る」と一言で記載されている場合が結構多くあります。それが、お料理の仕上がりに影響がないレベルでの省略なら問題ないのですが、場合によってはレシピ通りにしたのに上手くいかない場合もあるのです。
必ずしも英語の表現と一致するとも限りませんが、少なくとも包丁の動かし方を考えると「切る」と一言で言ってしまうのは少し乱暴ではないかと思います。
では、どんな切り方があるのか整理してみましょう。
押して切る
野菜やお肉を切る時は、包丁を前方に押しながら下方向にも力を加えて切ります。
豆腐や小麦粉をこねた生地などの柔らかいものは、刃を前後に動かす事なく、上から下方向への移動だけで切ります。
じゃがいもやかぼちゃなどの固いものも、刃を動かさずに上から下へ力をしっかりかける事で切ります。
ここまでは、全て「押す」動作で切っていきます。
「押す」動作は直感的に分かりやすいので、特に教えられなくても、大人なら「◯◯を切って下さい」と言われれば結構切れます。
前後に動かして切る
野菜や果物の皮をむく時は包丁の持ち方を変えて、小刻みに動かしながら切ります。
大きな肉の塊やパンを切る時は、刃渡り全体を使って刃を大きく前後に動かして切ります。
ここで「押す」動作と「引く」動作が出てきます。
刃渡り全体を使って包丁を大きく動かす切り方は、知らないと出来ない切り方です。
大きなものを小さな包丁で切ると、断面が凸凹したりギザギザになってしまいます。
だから、牛刀やパン切り包丁は刃渡りの長いものが多いのですね。
引いて切る
魚を切る時は、ほぼ「引く」動作で切ります。
魚をさばいたり、お造りにする時は包丁を引いて切ります。「お刺身を引く」と言いますね。
逆さ包丁など、例外もありますが、魚をさばくのが上手くいかない場合は、この動作の違いを知らないために、肉や野菜を切る時と同じように包丁を前後に押してしまうため、身を押しつぶして崩してしまいます。
動画などで見れば、ほとんど押す動作をしていないのが見てわかりますが、静止画ではこの違いはなかなかわかりません。
違うと分かって見ていれば「あぁ、押してないな」と分かりますが、そもそもその違いに気付かないことの方が多いので、動画を見ただけでは魚をさばくのが難しいのですね。
また、引いて切る場合は、切る対象をまな板のどの辺りに置いて切るかによっても作業効率が全然違う場合があります。
「何を切るか」対象の違いによって包丁の動かし方も違うという事を知っておくと、料理が今までよりも少し楽しくなると思います。
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