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愛着関係の臨界期

愛着関係には、臨界期があるっていうんですね。

臨界期っていうのは、そういうものが形成される、ちょうどいい時期っていう意味でもあるんですね。

で、それは0歳から1歳半くらいまでが非常に重要な時期で、そこで形成されながら、そこだけで終わるんじゃなくて、2歳3歳って幼児期を通じて愛着関係は結ばれていくんですけれども、この臨界期があるんですね。
これは岡田尊司先生が言われていることなんですけれども、臨界期を過ぎると愛着形成がスムーズにいかなくなるっていう事なんですね。

つまり、0から1歳半くらいの間がすごく大事なのですが、それを外しちゃうと、そのあと“愛着関係を築いていくのは難しい“という意味なんですね。

「この時期に十分なスキンシップや、それから子どもの意欲を感じ取る感受性を持って、速やかにその子どもの要求に応えていく“応答性”を備えることが大事です」と。

子どもは側で見守ってくれたり、求めたら必要な助けを与えてくれる存在に対して、特別な結びつきを持つんですね。
それが愛着関係を育む大事な基本的な要件なのです。

愛着の絆がしっかりと形成されると、それは容易に消されることはないって言うんですね。
半永久的な持続性があるとおっしゃています。
そして、その子の一生を通じて、その人の人格の土台を形成し、その人の生き方に影響していくわけなんですね。

ですから幼児期にあまり愛着の絆がしっかり形成されていなくて、それほど問題意識を持たなかった人たちも、その問題が青年期になってきて非常に大きな影響を持って現れてくることがあるので、そこが問題なんですよ。

引きこもりの問題は後で取り上げますけれども、そういう意味で、非常に継続的なものであると。
前にお話したように、愛着関係の対象は、初めはお母さんとか親との関係です。
それから、小学校時代になると友達関係に変わっていきます。もうお母さんではなくて、対象が友達関係との中での愛着なんですね。

そして思春期になってくればそれが恋人に変わるし、その後は恋人から結婚して夫婦になったりして、そしてそれはずっと一生続いていくという。
そういう性質を持っているってことで非常に大事なことなんです。

愛着関係ついて詳しく、研究・治療もされている岡田尊司先生のお話で非常にそういうところも強調されています。

人間が幸福に生きていく上で、最も大切なものが安定した愛着関係なんですね。人と人との絆を結ぶ能力で、人格の土台の部分を形造っています。

安定した愛着スタイルを持つことができた人が、どういう力を持つようになるかというと、対人関係においても仕事においても、高い適応力を示すんですね。

人とうまくやっていくだけではなくて、深い信頼関係を築いてそれを長年にわたって維持していくことが、大きな人生の果実を手に入れるうえで重要なのです。

そういう人に対する信頼関係というのは、この赤ちゃんの時からできるんですよね。
非常に大事です。

おっぱいを含ませながら、お母さんは子どもの目をしっかり見てね。
目と目で見つめあいながらおっぱい含ませるって、その行為が非常に子どもの信頼関係を築く元になります。

それからどんな相手に対してもきちんと自分を主張することができます。
同時に不要な衝突や孤立を避けることができるんです。
そういう力が愛着関係の作られた子どもたちにはできていくんですね。

それから困った時は助けを求められる。これ大事なんですよ。
自分が何か困ったときに人に助けを求める力がないと。
助けを求めるなんてダメだって思っちゃいけないんです。

救いを求めることってすごく大事な力です。
そして自分の身をストレスから上手に守って、鬱になることも少なくなる。こういうふうに人に助けを求めながら人の力も得て、自分自身をちゃんと導いていくような、そういう力もすごく大事なことなんですね。

人に受け入れられたり、人を受け入れることで、成功のチャンスを掴んで、それを発展させていきやすくなりますよね。
人との関係がうまくつながっていかない人は、なかなか仕事もうまくいかないですよね。

発達障害は、最近、盛んに言われるようになりました。

発達の問題の背景には、実はかなりの割合で愛着の問題が関係している。
実際、愛着障害が発達障害として診断されているケースも多い。
これは岡田先生の言葉ですけれども、ちょっと人と違うと発達障害ではないかって思う人が最近多いんですけども、発達障害であるかどうかっていうのは、精神科のお医者さんがきちんと医学的な見解から診断するもので、やたらに周りの人が言ってはいけないことですね。

そうやって発達障害だと言って決めてしまうことが、その子をさらに追い詰めていったりすることにもなるので、発達障害という診断はなるべくしないで、子どもにどう対応したらいいかということを一所懸命考え方がいい
と私は思っています。

愛着の問題というのは一部の人の特別な問題ではないんです。
ほとんどの人に広く当てはまる問題です。
こういう傾向を持ってる人いないでしょうか。

自分自身のことをちょっと考えてみると、こういうふうなこと多少は皆さんにもあると思います。
それを乗り越えていく力を持たなければならないんですが、こういう風な問いも、もう少し考えていかなきゃいけないと思います。

愛着の安定性や様式は、対人関係のスタイルや親密さの求め方だけではなくて、その人の生き方、関心、恋愛、子育ての仕方、ストレスに対する耐性や、生涯の健康にまで関わってくるんです。意識しないところで知らず知らずにその人の心理とこころを支配している、それが愛着なんですね。

極端な場合、赤ちゃんの時に親と別れてしまった子どもたちが、愛着が形成されなかったために、私なんかは死んだほうがいいって思っている人もいます。そのくらい人の生き方にも考え方にも大きな影響を与えるのが愛着なんですね。

岡田先生は、たくさんの精神的に病む人たちに対応してこられた方です。
愛着という視点からその人の過去をたどってみると、そこに大きな原因が氷解するという風な意味で、こんな言葉を言ってらっしゃいます。

(2020年12月講演会より#1)


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