「あ、」 懐かしい香りがした。 暗闇の中、窓際で煙草を吸う彼がこちらを振り返る。 「いい匂い」 そう言うと彼はふっと煙を吐きながら笑う。 「煙草吸わないのに珍しいね」 1Kの部屋に広がる煙の匂い。 この匂いを私は知っていた、愛していた。 雨音が部屋に響く。 生活できる最低限のもので作られているこの部屋とアプリで出会いお互いの事を何も知らない私達の関係はとても心地良かった。 友達と話すよりも知らない誰かと話す方が気が楽な夜だってある。 「この家凄くいいね、落ち着く」 「家賃二
先輩〜お久しぶりです 缶コーヒーとたばこ持ってきました 銘柄 分かんなかったんですけど きっと多分これ吸ってたような気がするんですよね。 最近 面白いゲーム見つけたんですよ また一緒にやりましょうよ お前下手くそすぎ、なんて通話越しによく怒られてましたけど 結構 あの日々が 私の楽しみでした。 この日々が終わるくらいなら、 そう思って押し殺した自分の気持ちは LINEの既読がつかなくなってから 寂しさに 今は ただひたすら後悔の気持ちへと変わってしまいましたが また一緒
お金の話はやめて、今日読んだ本の話をしよう。
この部屋にくるのも今日が最後かもしれない、 よく聞くその言葉が今の私にしっくりくる。 奥で寝ている彼を起こさないよう、まるで侵入者かのようにコソコソと服を畳んで掃除もした。 最後に呑気に寝息をたたている彼に「はい、さよなら」そうして呆気なく幕を閉じるのだ。 思い返せば 真冬の公園で逆上がりを教えてくれたあなたを、 夜道を歩いて偶然出会したバッティングセンターで経験者でもないのに二人本気になって挑み続けたことを、 少しでも長くいれたらとココア片手に暖を取りながら温もりがなく
ここのみんなの文や、言葉がとても好き。居心地がいいね、じゃあまた明日。おやすみ〜
私と君は何ひとつ同じものがない 私が読んでほしいと貸し出した小説は数ページ頑張って読んだ形跡を残したまま早三年が経とうとしているし、 私が好きなバンドを聴かせても心揺さぶられることはなく終いには音楽が無くても生きていけると言っている。 君の好きな食べ物は熱いもの、私の好きな食べ物は冷たいもの。 性格も似ていない ただ、それでも あの日公園で目が悪くなったと嘆く私に、 君は眼鏡を外して 「でもさ、綺麗だよ。あの街並みの光も車の光も全てが花火のようで、僕は好きだな」 そう言
ザリガニを釣りたい、 友達にそう言って電車とバスに揺られ100均で小さな網と糸を買ってその辺に落ちてる長い棒に巻き付け、見知らぬ土地の川のある公園に行ったら本場のザリガニ釣り少年団がいて、 「そんなんじゃ釣れないよ」と、共に二時間駆け回った24の夏。(殆ど荷物持ち) いい夏だった。_END
どのような場面や状況でも猫と寝れます。 この強みを活かし、猫と沢山寝たいです。
自転車でならどこまでも行けると信じていた。 二人乗りの後ろはいつもあの子で 冷たい風に攫われないようペダルを漕ぎ続けた。 四時半の黄昏、放課後 目的地は何処だった?忘れてしまったな 「大人になったらさ、」 あの子はいつもこの話をしていた 何歳(いくつ)になったら、ではなく“大人”と抽象的に話していたのは、まだまだ自分達には関係の無い遠い未来の話だと考えていたのかな 田んぼ沿いの道、辺り一面の緑が今にも橙色に包み込まれてしまいそうな景色とあの子の話が私の頭に溶け込んでいく。
〝小説は一人一人の人間の身体に沁みていく。 読んだ奴のどこか、じわっと沁みていくんだよ。人を動かすわけじゃない。ただ、沁みて、溶ける〟 大好きな伊坂幸太郎さんのモダンタイムスでの一節。私の大好きな一節。じわっと沁みて溶けた瞬間、私の心は救われるんだ。 P.S. 50円で買った古本の小説、物語後半からいきなり黄色のマーカーが引かれていて笑ってしまった。これだから、古本は最高だね。
私の「会いたい」と、貴方の「会いたい」 同じ言葉のはずなのに 違う意味なんだよね、摩訶不思議。 気付かないフリをして生きています。 呪文を唱えてもしも二人きりの世界になれても 数日で世界は滅びてしまうだろうね。 非現実的なのか現実的なのか、 頭の中で何かがグルグル渦巻いているのに 一体何なのか分からない、摩訶不思議。 本当は全部分かっているのにね。 絡みついて離れない湿った空気、腫れる扁桃腺、鳴らない通知、繰り返しの日々、嫌になってしまう前に寝てしまおう。今日を終わらそう。
帰り際、ふらりと最寄り駅近くにあった本屋に寄って本を買ったり、次は何を買おうかと本を眺める時間が私の楽しみだった。 『閉店してしまった本屋にできた二十四時間ジムが潰れて、また本屋ができますように』 私の願い。 2022.07.07
知らない映画が流れているテレビ 隣には知らない男の子 きっといつもと同じ流れだ、嘘の求め合いなんて虚しくなるだけだから嫌いなのに。 でも私は嘘をつく。 こんな出会い方でただ側にいてくれるなんてある訳なかったとまた今日も絶望するのだ。 流れる映画が終わりに向かっている。 電気をつけたまま誰かの家で映画を見たのは初めてだった。 「人の名前覚えられないんだよね」 それくらいが丁度いいんじゃない、なんて適当な返事をした会話を思い出す。 「ねえ、名前聞いてもいい?」 そう聞いて教
2020/09/28/00:58 伸ばしていた髪を、切った。 ここ二年くらいずっと伸ばし続けていた。 地元の友達に長くなったねと声をかけてほしかったし、髪を伸ばした姿も見たいといつか元彼に言われた言葉をどこか忘れずにいたのかもしれない。 だけど、髪を切った。 冬はコロナで地元に帰れないかもしれないし、元彼は彼女と幸せそうに過ごしているみたいだし、私の人生は私自身で決めなければいけないし!〝あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ〟 ___kaminobas
「こんな楽しい夜は終わってほしくないな」 「寝なければずっと夜なんだよ」 「あ、そうだったね」 不健康サークル、サークル長の私は文を打ちながら納得した。 時刻はAM3:00を少し回る。 サークル部員2名。 眠れない私達は夜に生きていた。 夜に執着するのは、今日やり残しことがあるからだと誰かは言った。やり残したことはない。 ただ、 「寝るのは勿体無い」 「不健康で最高だね」
いつか、この世界からSNSが消えたら 「Instagramで自分の投稿をしてくれる旦那さんをどう思うか」みたいなインタビューをある番組でしていた。 素敵だと思います〜、隠してないのがいいですよね〜、 街角で声を掛けられた人はそう答えていた。 いつか、この世界からSNSが消えたら 人の幸せをSNSで決めるようなことも、見せびらかすような恋愛も友達ごっこも見ることは無くなるだろうな〜。 きっと