いつかの日々よ、

この部屋にくるのも今日が最後かもしれない、
よく聞くその言葉が今の私にしっくりくる。
奥で寝ている彼を起こさないよう、まるで侵入者かのようにコソコソと服を畳んで掃除もした。
最後に呑気に寝息をたたている彼に「はい、さよなら」そうして呆気なく幕を閉じるのだ。

思い返せば

真冬の公園で逆上がりを教えてくれたあなたを、
夜道を歩いて偶然出会したバッティングセンターで経験者でもないのに二人本気になって挑み続けたことを、
少しでも長くいれたらとココア片手に暖を取りながら温もりがなくなっても気にもせず話し続けていたあの夜が頭をよぎる。
物語にしてしまえば《プロローグで終わってほしかった物語》だったな。そう、そんな物語は存在しない。エピローグがあるとするのなら予想通りの結末。(^_^)(笑)。※この顔文字と笑のセットは悟りのその先の感情を意味します

時計の長針と短針がいつの間にか重なり合いそうになっている。
数回来ただけのなんの思い入れもない部屋に「じゃあ行くね」の届いたか届いてないかも分からない声掛けだけが虚しく残される。
映画にしてしまえば観客全員が分かりきっていた終わり方だったとエンドロールが流れ終わる前に席を立つだろう。もちろんエンドロール後に続編を匂わせる映像が流れるわけもなく。

外に出ると、少し冷たい風と共に私に纏わりついていた煙草の匂いが鼻をかすめる。
街中で煙草の匂いがした時に思い出すのはきっとあなたではないけれど、
こんな日々があってもいいよなと思えた。

じゃあお元気で

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眠れない夜に

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