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恍惚の人から介護を学ぶ

自分の老後をうっすら意識し始める。
その前に自分の親の介護があるだろう。
介護や老後、そういうことを考える、想像出来る歳になったんだと思う。

夏休み、3年ぶりに実家に帰省する電車の中で恍惚の人(有吉 佐和子著)を読んだ。

主人公は、茂造老人を献身的に介護する長男の妻・昭子である。戦争時代を生き抜いた世代のたくましさがある。女性が社会進出し始めた頃で、働きたくても、家事、育児、介護の重荷が女性にいやおうなしに降り掛かってくる時代である。
昭子のその介護ぶりは私なんか真似したくても出来ない。
でも、暗くなるようなお話ではなく、何となく清々しい。様々な気づきを与えてくれたので、自分の言葉で残しておこうと思う。

理想の死に方を思い描き、今からできることをしよう。

死の瞬間は誰にでも来る。でもその死に方(死までの道のり)人それぞれである。我が夫は、前日まで仕事や趣味のテニスをして、ぽっくり死にたいと言っている。
私も心身ともに元気でいたい。思い通りに体は動かなくとも、心と頭は健在で、死ぬ間際には穏やかな気持ちでいたいなと思う。外に出かける場所や環境があって、社会との繋がりも持っていたい。
自分の子供達や孫に介護してもらうとか、自分の家で過ごすとか、こういうのは、この本を読むと、その時の状況次第だなと思う。希望は、なるべく自分で出来るところまで頑張るけど、出来ないとなったら、頼る他人(家族だけではなく)や選択肢をいろいろ持っておきたいなと思う。

今から出来ることは、
自分の体のメンテナンス、筋力や体力つくり、自分の頭で考える癖、社会や他者とのつながりをもつことなどである。今からできることを少しずつ積み重ねれば、結構、素敵な死に方ができるかもしれない。

介護は人を死の道へ送り出す、尊いお手伝い。

子育てと介護はどちらも家族を相手にした行為である。主人公の昭子にも、義父(痴呆性老人)と、大学受験を控えた息子がいる。
子育ては、子供達を家族から自立させ、自分で生きていく道に送り出せたら終了。介護はどうなんだろうと考えてみた。介護の終了は、その人が死ぬことなのである。そこに行く着くまでに、歩けなくなったり、痴呆になったり、排泄が困難になったり、段々と退化し、死を迎える。そして、家族から自立ではなく、逆に依存が強くなってくる。
子育てとは違う、死への道へのお手伝い。そう思うと、不思議とすごい尊いお手伝いだなと感じてしまう。
恍惚の人では、茂造老人が、だんだんと変化をしていく。最期は穏な表情で、言葉は発せず、家族の顔も分からず、花や植物に笑いかけたり、こういう状態を戻ってくる(多分赤ちゃんの頃に戻るような意味だと思う)と言っていた。戻ることは手がかかるようになることで、介護をする側はもちろん大変である。ただ、この本の主人公昭子はその大変さの裏側で、茂造老人の変化を見ながら、寄り添い、死への道へ送り出す意義みたいなものを見出しているように感じる。

今は、中学生くらいから介護や福祉に関する授業や体験会をやっている。歳をとるということがどういうことなのか、どういった支援が必要なのか、少しは実感できると思う。介護はきついし、労働環境が汚いし、そういう負のイメージを持たれやすい。若いうちから介護を身近に感じることで、人生の中でも最も尊いお手伝いなんだと気付けるといいなあと思う。

親と介護について、ざっくばらんに明るく話す機会を持とう。

今回久しぶりに帰省し、高齢になった父母と会った。孫を大変可愛がってくれたし、言葉少なではあるけども、親の愛を感じることができた。
ただ、3年ぶりに会い、両親の足腰や体力は少しずつ衰えていることを感じた。孫と遊んだ次の日は、ぐったりしていたし、昔のように手料理を作る気力もないようで、外食が多かった。父は、仕事をやめて、家にこもりがちだと母が嘆いていたのも心配であった。

恍惚の人を読んで、親がどんな介護を望んでいるのだろうかと、気になるようになった。母はまだまだ頭の方はしっかりしているし、共働きで働き、子供を育て、親の介護も終え、これまでにやれなかった趣味ややりたかったことに邁進しようとしているようである。「介護どうしたい?」なんてストレートには聞けない。でもたまーに「膝が悪いから、もし動けなくなったら、援助お願いね」とか冗談まじりに言ってる母を見ると、多分私や妹、娘に助けてもらいたいなとは思っているようである。

元気なうちに、もし体が不自由になったり、頭が働かなくなった時、どのような支援をして欲しいかなどを明るくざっくばらんに会話した方がいい。本当に介護が必要になってからだと、本人も希望を出せない状態(痴呆とか、心が病んでしまったりとかかも)かもしれないし、心身が健康なうちに聞いておかないとなと思う。


さいごに

とりとめもなく書いてしまったが、「恍惚の人」は40代おすすめの本である。当時は高齢化や認知症、介護問題を取り扱ったセンセーショナルな社会派小説だったが、約50年経た今でも改善が必要な領域である。老若男女問わず、知っておきたい現実である。

いじょう!

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