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覚悟して見える世界は、優しい。

保育士として働いている職場に
来年度の契約は希望しない旨を伝えた。

上司との面談は突然予期せぬ日に訪れて
何の言葉も用意していなかったけど、
「正直に話そう」とだけ、覚悟して部屋に入った。

「来年度は勤務を希望しません。
ここまでお世話になって、申し訳ありませんが、
どうしてもやりたいことができました。
エッセイを書きたいんです。」

私は自分の一言一言に責任を持って伝えた。

上司の顔は驚きで止まり一瞬の沈黙があったが、
私が顔を挙げるとにっこり笑って

「かっこいいわね、書く仕事かぁ。
 そっかそっかぁ、嬉しいなぁ。
 若い人が夢を持つって。
 心から応援します。」

と言って、
上司は定年を迎えたらやりたい夢の話をしてくれて
20以上年の離れている私たちはそこでお互いの夢を語り合った。

もし

正直に「エッセイを書きたい」なんて言わなければ
適当な理由をつけて辞めたい旨を伝えていたら
上司の夢など聞けなかったはずだし
応援してもらえることもなかったと思う。

そして自分に覚悟が足りなければ
突然のチャンスに、
自分の夢を語ることもできなかったはずだ。

世界は優しい。

覚悟するのをずっと怖がっていたのに、
覚悟して見える世界は、なんて優しいんだろう。

こんなに優しい世界が広がっているなんて、
知らなかった。

こんな世界があることを、
私はどこでも習ってない。

帰宅して、隣りで美味しそうに
アイスを頬張る娘を抱きしめて、
この世界の優しさを私はかみしめた。


おわり


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