【困窮してみた・再生編 No.20〜OZZYのメンタル歴・二回目〜】

【事務機のブラック営業会社】

 在籍期間こそ短かったものの、ネタの宝庫でした。
 営業部長の、
「騙すわけじゃない。気持ちよく踊ってもらうんだ」
 をはじめ、雇われ社長の
「血のションベンが出るまで頑張ってこそ営業マンだ!」
 等々のステキな名言が飛び交う、なかなかに「うわぁ……」な会社でした。
 前職を離職してから4ヶ月。ハローワークの職業相談を受けつつ、やはり色々な会社様からキック&ダッシュを喰らい、燃えて青春フルボッコ。ホセみたく真っ白な灰になりかけていた頃でした。
 ハロワ職員から「ここどう?」と勧められ、連絡→「今日面接したい」という返事→家でスーツに着替えて会社へ訪問→即採用。
 というスーパー展開で入社に至りました。
 ホント、即決系は怖いです。「アットホームな職場」「風通しのいい社風」と並ぶ四天王の一つです。え? もう一つ? 「幹部候補募集」だよ!
 面接の段階から「ああ……ここ、半年もたないだろうな」と直感しました。「じゃあなんで入ったの?」 といわれれば、「なんか断りづらくて……」としか言えません。ヤベぇ宗教とかマルチとかに落っこちちゃう人にも通じる精神状態に近かったのかもしれません。
 なんとか「サラリーマン」になりたい僕、でも年齢はすでに30オーバー。
 面接が始まってからは敬語ナシ(こちらは当然敬語)。先方は色付きのメガネを掛けた「新・仁義なき戦い」のときの布袋寅泰似のコワモテ社長と、色んな意味で百戦錬磨感ある営業部長。
 正直、とっとと逃げたかったです。だってぜったいヤバいもん(;´Д`)💦
「えー、30超えてんでしょ?」、「うーん……どうかなぁーwww」という社長&部長の、あからさまな「いや、マジかよwwwでも採用してやってもいいかなーwwwどうしようかなーwww」的な茶番が繰り広げられる中、
「スリザリンは嫌だ……スリザリンは嫌だ……面接終わって家に帰って、連絡がきたらお断りしよう……」
 と考えていたんですが、
「おし! いっか! 採用採用!」
 となり、こちとら「ファッ!Σ(゚Д゚)」ですよ。
 いやー、人間ね、ああいう状況になると「いやいやまって!」って断りづらくなるもんですよ。
 いや、大丈夫な人はもちろん大丈夫なんだろうけれど、僕はできなかった。あと、やっぱ年齢もあったし、「サラリーマン」ってやつになれるリミットはギリギリ(というかほぼアウト)。焦りもありました。
 流れに流され、週明けから出社に。もー初日から行きたくない。ただただ憂鬱でした。いや、断らなかった自分が悪いんですけどね。

 朝の唱和から始まり、一人ひとり今日の営業目標と小話(日々思ったことや起こったことから何を感じたか等々)を30分以上やった後、全員でトイレ掃除(毎日)。タバコを一服(社員は全員喫煙者でした)。それら正味約1時間。そのあとやっと営業活動です。
 見込み客がいないうちは、リストをもとに必死に営業電話。ガチャ切りを含め、1日200件前後電話です。終業時間(時間前ではなく)になったら、営業部長に今日の営業結果の報告です。見込み客や営業成果が上がらなければ、
「え……ウソでしょ? お前一日なにやってたの?」
 的な一言から始まり、こんこんと30〜40分の説教タイムです。その後は
「土木業さんや工事業さんたちは、このくらいの時間に事務所に戻ってるから、今からアタックしてみろ」
 ということで、再度テレコール。2時間ほど継続して、どうしても見込み客が見つからない場合は、「しょうがないから帰っていいよ」となりました。
 あるいはエリアを決め、ローラー(一軒一軒回る)の飛び込み営業。当然ながら、基本話は聞いてもらえず、「ドアバタン」、「罵倒」、「水かけられる」、「蹴られる」、「警察呼ぶぞ! と言われる」等々、一通りの飛び込み営業あるあるを経験してきました。優しめの人から頂いたお言葉は、

「こんなクソ暑いのにスーツ着てネクタイ締めて営業とか、どうかしてる」
「こういう営業は迷惑。いまどきメールでやろうよ」
「早く辞めたほうがいいよ、その会社」

 という、「ですよねー」なものでした。
 これが企業相手のBtoBならまた違うんですが、この営業会社は限りなくBtoCに近いBtoB。個人事業主や家族経営の零細事業者なんかをターゲットにしていたんですね。それもPCやネットワークのリテラシーが高い人ではなく、おじいちゃんおばあちゃん。「インターネット? あー、いらないいらない! 私全然わからない! わからないし怖い! いらない!」というアレルギー反応を示すタイプの人が上客で、言い方は悪いですが、「情弱を丸め込んで高いものを売りつける」タイプの営業でした。

 たしかに単機能のソフトウェアを走らせるなら、ある程度枯れたパーツでキッティングしたほうが安定しますが、型落ちどころか骨董品レベル……中で動いてるソフトウェアは、Accessのマクロだから、イジれる人ならイジれる。それを保守込みで200万円近い値段で売る……出来ないことを肩代わりするのが「仕事」というものですし、しっかり利益を取っていくことは悪いことではないとは思いますが、保守部品にも事欠くような骨董品をそんな高額で売りつけるのは、いくらなんでも……。
 直近の業界を辞めたのも同じ理由が絡んでいるのですが、自分のやっていること・売っている商品を、自分に対してごまかして正当化できなくなってしまったんですね。「良くないもの、お客さんに利益ではなく不利益を与えるものを騙して高額で売っている」という気持ちを抱いたままで、もう商品を売ることができず、毎日「早く終われ……早く終われ……」とずっと思っていました。
 そしてある日。駅に降り立つと、息が吸えなくなってしまったんです。
 呼吸ができなくて、蹲って。
 それでもなんとか会社に行って、でも何もできなかったから、電話をかけているフリだけしていました。録音されていなかったのだけは幸いだったと思います。その時、試用期間終了まであと2週間というタイミングでした。
 なんとか耐えました。社長と営業部長にどう切り出すか、一日中考えていました。試用期間を過ぎると、基本給12万円+コミッションとなり、経済的な意味でもさらに苦しくなりますが、その場で頑張るのは、僕にはもう限界でした。家族には言えませんでした。
 試用期間最終日、社内メールで営業部長に辞める旨をメールし、その後口頭で再度辞めたい旨を伝えました。
 そこからは早かったです。退職届のフォーマットがすでに用意されていて、名前とハンコを押すだけでした。すぐに受理され、翌日が退職日となりました。
 それだけ辞める人が多いということでしょうね。驚くべきことに、その会社は今でも存続していて、常時社員を募集しています。
(在職期間2ヶ月・次職までのブランク13ヶ月。(病み二回目))

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