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読書感想文『後期日中戦争』、戦争について

日中戦争、ギリギリ記憶にはある。程度のチャラい自分が手を出して大丈夫だろうか…、と思いながらも、最近辻田真佐憲さんに興味を持っておりその流れで知り、読んでみた。結果大変興味深い内容だった。
コロナ禍で「戦争」の言葉をよく聞くようになった。戦争といえばまずは原爆、空襲、火垂るの墓…小学校で初めて第二次世界大戦のことを知った当時の強烈な「ツラい日本」の景色が思い浮かぶ。あとはヒトラー、スターリンなど、世界史の教科書や映画で見た特徴的な絵。でも日中戦争のことはほとんど知らない。盧溝橋事件がギリギリ記憶にあったくらい。

この本は知らなかったことだらけだった。読めば読むほど「こりゃ理解し合えないわ…」と思ってしまうというか、改めて今の時代の平和さにビックリする。戦争やばい。

いくつか印象的なエピソードがあって一つは阿南のエピソード。かなり激しい人格の人だったようで、「凡夫には精神家過ぎて、ついていけないめんもあったろう」と記述があった。あぁこれこういう人職場にいるな…、と思ってしまう。で、彼が責任者だった長沙作戦というやつは失敗してしまうんだけど、既にトップクラス軍人になっていた阿南が罰せられることは無かった。あぁこれもなんか見たことあるような図だ…。著者の広中さんも書いてるとおり、日本の責任を曖昧にする姿勢が見えて辛い。

あとは細菌戦。日本軍が自分たちが撒いた細菌に苦しめられたり、衢州一体では日本軍が広めたペスト菌が戦後1948年まで無くならなかったこととか。コロナ禍で嫌と言うほど伝染する病気のおそろしさを知っている今読むとグッタリする。
あと、日中戦争を終えて日本に帰ってきた兵士に対して「負けたくせに」とか言ってくる当時の人々もヤバい。

広中さんは日本が目的なく日中戦争を始めてしまったことが、この戦争の混迷の原因のひとつであると指摘している。これは現代にも通ずることなのだと思う。

戦争はヤバい。ヤバいんだけど、当時と通ずる何かが今の時代にもあるっていうところが更にヤバい。
戦後76年、それでも我々が生きているのはそこから地続きの時代なのだから、やはりこういう本を読んで今の時代を捉え直すことはちゃんと生きるために必要だと思った。

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