中小企業の決算書はいくらでも嘘がつける~非上場会社の決算書を見るポイント~
法人のお客様と新しく取引をはじめるとき、帝国データバンクなどから調査報告書を購入することがあります。
私たちの場合、先にサービスを提供し、後からお支払い頂くことが多いため、お客様の信用度を確かめる必要があるからです。
この調査報告書に掲載されている決算書を見ていると色々なことが解ります。
経営者がどのような考えで事業の舵取りをしているのか。
財務状況は余裕があるのか、ないのか。
事業の収益性の推移。
色々なことです。
しかし、たまに「この決算書は真実を語っているのだろうか?」と不信感を持つことがあります。
中小企業の決算書は、やろうと思えばいくらでも嘘がつけます。
不信感を持ったとしても、取り引きをする/しないはケースバイケースです。予測される取引額などで判断すれば良いことです。
では、どういった場合に不信感を抱くか、どんなポイントを見ているのかについて書いていきます。
■ 情報公開に消極的
信用調査機関に対して、理由は様々ですが、情報を出し渋っているケースです。ちょくちょくありますね。
決算書がかなり大雑把な数値でしか示されていないこと、ひどい場合には、ほとんど数字が伏せられていることもあります。
会社によっては、帝国データバンクと東京商工リサーチのそれぞれに違う数字を開示していたりします。
こういう会社の経営者は、「情報開示しても何の得にもならない」という場合が多いそうですが、これ得策とは言えないと思います。隠そうとすればするほど、これから取引を考える事業者としては不信感を募らせます。
固有の技術、取引先などに営業上の秘密があることはわかります。しかし、決算数値自体に大きな営業上の秘密があることなどほとんどありません。
隠す方が不信感を抱かれやすいのですから、堂々と見せれば良いのです。
■ 不動産とか有価証券の価値、下がってませんか?
決算書の真偽を見る際に、不動産や有価証券等の簿価が高い場合、注意が必要です。
よくあるケースは次のようなものです。
バブル期に高値で不動産や株式を購入する。
↓
バブルが弾け、売るに売れず塩漬けにして持ち続けている。
↓
購入時の高い簿価のまま貸借対照表に載っているが、実際の価値は簿価の数分の一(ひどい場合には数十分の一)
上場企業の場合には、資産は時価で評価しなければなりません。時価で評価ですから、例えば株価が下がっていれば簿価を引き下げ、引き下げた金額を損失として計上する必要があります。
でも、非上場の中小企業は、そんなことしなくてもいいのです。購入時の価格のまま貸借対照表に載せ続けてよい。それがどれだけ実際の価格と乖離していようとも。
しかし、賢く財務もしっかりしている企業であれば、そんな塩漬け物件は売ってしまいます。売って損失を出せば利益を減らし、節税になるのですから。
でも売らないということは、その企業の状態は相当良くないと考えられます。真実の姿ではなくても貸借対照表を「お化粧」しておかないとまずいということなのでは?と勘ぐってしまいますね。
■ 在庫として評価されている物、ほんとに売れますか?
業種によりますが、多くの在庫を抱え、簿価も大きい場合があります。
この場合、その在庫として評価されている物は本当に売れるのかが大きなポイントです。
本当は簿価ではもう売れない、あるいは0円でも売れない物を貸借対照表に価値のあるものとして載せているケース、実は少なくありません。
この場合も、賢く財務もしっかりしていれば、その在庫を減損して損出しをしてしまうのです。そうすれば先ほどと同じく節税にもなりますし、何より損失確定することによりダメージを可視化し、新しい事業活動、新しい打席に立つことができるからです。
それをしない、できないということは、やはりその企業の財務状況を疑ってしまいますね。
■ 売掛金、本当に回収できますか?
売掛金、つまり商品を納入したけれどまだ入金されていない「ツケ」ですね。これ、本当はもう回収できないにも関わらず貸借対照表に載せ続けているケースがあります。
回収できないツケなんて無価値です。
先ほどと同じですが、賢く財務もしっかりしていれば、これも損失として計上しさっさと片付けます。
処理していないということは、まあ疑いますよね。
■ 簿外債務ないですか?
簿外債務、文字通り貸借対照表に載っていない債務です。
実際には借り入れがあるのに載せていないといった解りやすいものもありますが、中には「他社の借入の債務保証をしている=その他社がバンザイしたら債務を返済する必要が生じる」といったケースもあります。
これは決算書を見てもわかりませんが、その企業についてある程度知っていれば想像することはできます。
■ 結局本当のことはわからないが、推測はできる
まあしかし、非上場の中小企業の決算書の真偽を見極めることは難しいです。
とはいえ、推測することはできます。
わりとベタですが、その企業の経営者と接点があれば、人となりと決算書を突き合わせてみます。
誠実な感じか、見栄や虚勢を張るようなことはないか…結構そんなことと決算書はリンクしています。
怖いですね。書いていて、ちょっと我が身のことを振り返りました。
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