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悲しい時に思い出して

コロ日4 25日目
2024年4月10日(水)

4月。桜が咲かないまま新しい季節になった。

 いつの間にか真新しいスーツに身を包んだ新社会人らしきひとたちを街中で見かけるようになって、何とも言えない感情になる。もう私も社会人4年目に突入してしまった。まだ1年目だった頃は、社会人4年目ってもっとこうなんだかすごい先輩だと思ってた。何だか思ってたのとちゃう。一体私は、誰の残像を追い求めていたんだろう。

 桜がようやく咲き始めた頃、彼女とデートをした。日曜日のことだ。久々に丸一日デートができるとはしゃいで、おめかしをして出掛けた。世の民がやれ代々木公園だ中目黒だ新宿御苑だ千鳥ヶ淵だとお花見で群れる中、我々は庶民の味方、もはや神奈川県、町田へと向かう。

 なぜ町田?それな。元々全然そんな予定ではなかったんだけど、私の祖父(一応芸術家)が最後の集大成で個展を開くというので、最終日ギリギリに行こうと思い立ち、ついに彼女を巻き添えにした。本音は、お小遣いを貰いに行くのが目的でした。

 彼女なんて全然関係ない上にまだ親とも会ったことないのに、先に祖父と会うことになるとは思わなかったよね。巻き添えにしてしまった彼女、ごめんね。彼女とはさすがに打ち明けられなかったので祖父には「友達だよ」と伝えたら謎に3人でスリーショットを撮る羽目になった。「はいチーズ」で固まる笑顔。ゴチゴチに緊張して写ってる彼女が可愛くて笑ってしまった。まじでほんと、なんこれ?

 おもろい世界線〜と思いながらちゃっかり一万円を貰った。ふたりでそのあとしっかり高い焼肉ランチを食べた。美味かった。残り6000円。

 桜のシーズンだからか元からなのか、町田は全然ゴミゴミしてなくて最高だった。確かに人はそこそこいるけど、全く不快にならない程よいレベルの人混み。これだよ、求めていたのは。全ての場所がこれくらいの人数で分配されて欲しいと切実に願った。多分無理だけど、頼む、ほんと。無理だよ、あんな朝の東横線の車内みたいな街中を歩くなんて。

 そういう感じでふたりでのんびり買い物をして、ぶらぶらして、空いてるゲーセンでモモンガにトライするも敗退して、しっかり町田という街を堪能して帰宅。残高、ほぼ0円。高校生の時、高校が近かったので町田は庭のようによく来ていたけれど、平凡で映画館もないつまらない街だとしか思ってなかった。また歳を重ねてから来ると、別の見方ができるんだなあと新しい発見ができて大変よかった。

 そうして最寄り駅に着き、彼女が親から譲り受けたQUOカードでコンビニで爆買いして、ギルティでウマウマな冷凍うどんをふたりで食べた夜。面白い動画を観ながらふたりでけらけら笑った。

 こういう平凡で何気ない日々が、一番きれいでサイコーなのだと心の底から思った。こういう日々の中で煌めく日常を、心の中にたくさん溜め込んでおきたい。なにか大きな悲しみがあった時に、きっと思い出せると思うから。

 彼女は、昨日、また入院してしまいました。あんなに元気に笑顔を見せていたけれど、元々特殊な難病を抱える彼女は、夜は持病で少し具合が悪そうで、朝起きてもずっとだるそうだった。

 仕事行くのやめなよ、休みなよ、と言っても「早番だから休めない」と社会人として見習いたい偉すぎる意思で頑なに拒むので、仕方なく一緒に家を出て見送った。今思えば、あの時すぐに連れ戻してお母様に連絡して病院へ連れて行くべきだったのかもしれない。仕事に行った後は、やはりダメだったようで、お昼頃に早退させられて爆睡した後親に病院へ連れて行かれ、良くなったとLINE。

 でもそれも一時的だったらしく、翌日も仕事を休んでいたようで、お昼すぎに突然電話が来た。ミーティング中で出れなかったため折り返したら、途切れ途切れの声で無事を告げられた。やばい予感がしてたのかなあ。お父さんが家に来てて、ワンモアホスピタルかもしれない、などとお茶目に言われて、状況が全然わかってない私はえっ!えっ?!などと情けない声を漏らしたけれど、「ごめん切らなきゃ」と何も分からないまま通話終了。現時点で、これが最後の会話です。

 いや、死んでないですよ生きてますよ。生きてるし大丈夫だし、また元気な彼女と会って冗談を言い合ってけらけら笑う、そんな日々が戻ってくると信じて疑ってないですよ。でも、それでも、心配だし不安になってしまって、最悪の事態を想像したりしてしまって、堪らなくこわい。

 あなたのいない世界を想像して、お風呂でちょっぴり泣いた。いや結構泣いた。心底好きなんだなあと思った。無事に戻ってきたら、何もしなくていいから「生きてくれてるだけで、そばにいてくれてるだけでいいんだよ、ありがとう」と伝えたい。愛する人を失うということを想像するのが、こんなにも重いことだと初めて知った。何かを失ったことがある人が強い理由が、わかった気がした。

 今朝は丸一日連絡が来ないまま朝が来て、心配で目が覚めてしまって、入院していることも知らなかったけれど、これだけ連絡が来ないということは、連絡できないくらい具合が悪いということで、それはつまり入院しているということではないかと予想はしていた。

 でも私は家族でもないし、住んでる場所も離れているし、何も情報が入って来なくて、不安で押し潰されそうになったので、唯一繋がっていた彼女の妹に勇気を出して聞いてみた。やはり、入院していた。それも過去一ヤバかった時と同じくらいのやばい数値が出てしまったらしく即入院となった、と。

 最悪の場合は生死を彷徨うこともあるそうなので、気が気でない。仕事をしている方が気が紛れて良い。たまに、病気のことを調べたりなどして落ち込む。その後、特に妹ちゃんからのアップデートはないし、彼女からは相変わらず連絡はないし既読もつかないし(まず読めないだろうし)、お見舞いにも行けないし(親族じゃないとダメな病院らしい)、本当に何も状況がわからない。

 分からないことが多いと、その分、想像力が豊かになってしまって、色んなことを妄想してしまって、マイナスな方向に思考が進んでいくので、本当に良くない。考えるのをやめようとすればするほど、考えてしまうのは何故?ハッピーハッピーハッピー!の猫ミームの猫が今は目の前に欲しいです。お願いします。

 彼女は、今、どうしているだろうか。実は今日は、記念日なんだけれど。なんて思いを馳せたところで、出来ることは何もないので、病院の方へ向かってひたすら愛の念を送るなどしてみる。どうか、早く回復しますように。

 何だかたくさん書いてしまった。長い長いラブレターみたいで、彼女が無事に戻ってきた時には恥ずかしさが増す気しかしていない。やばくね。どうしよう。まあいいか、嬉しい時にも思い出せば。

愛を込めて。おやすみ。

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