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Q1 「再エネ」なぜ太陽光発電を大規模にやるのか

今回のシリーズではパシフィコ・エナジー株式会社の社長の松尾大樹が太陽光発電所に関する様々な疑問に回答します。

今回は皆様に当社が取り組む再生可能エネルギー発電事業の一端をテーマに分けてご紹介したいと思います。
パシフィコ・エナジーはこれまで日本全国で15カ所計1,293メガワットという大規模な太陽光発電所を建設・運営してきました。一カ所あたり平均86メガワットというこの規模は日本で最大です。第一回は私たちがなぜ太陽光発電所を大規模にやる必要があるのかについてお話していきたいと思います。

理由はまず第一に電力価格を下げて消費者(国民)の負担を低減するためです。

一カ所に大規模な発電所を建設すると、規模の経済の作用によって発電容量(ワット)当たりの建設費用や運転費用を下げることができ、これによって安い電力価格でも太陽光発電を実現することができます。規模の経済の作用とは具体的には大量の太陽光発電パネルなど機器の一括発注などにより価格下落が期待されるほか、建設工程の最適化などによる作業効率の向上によって低コスト化が可能になります。パシフィコ・エナジーではこれまでコスト低減やデザインや作業工程の最適化の努力の結果、2020年には15.37円/kWhでの買取価格で太陽光発電所の建設に着手することができました。2012年当初の買取価格は40円/kWhでしたので会社設立以来10年間で実に6割以上の価格削減を実現したことになります。この発電所の工事は順調に進んでいて2022年12月には発電を開始し商業運転を迎えます。

では何もせず待っていればコストが下がったかというとそうではありません。当初はまだ日本で十分に太陽光発電所が無かったため最適な工法が確立されておらず工期とコストが不確実で40円/kWhでも手一杯でした。その後パシフィコ・エナジーは毎年少しずつ努力を重ねて設備の仕入れを直接交渉したり、パネルの配置と工法の最適化を進め毎年少しずつ買取価格を下げてでも発電所建設と運営が実行可能であることを証明して参りました。ここでも大規模にやっていたからこそ設備メーカーや施工会社の皆さんは前向きに協議に乗ってくれたと思いますし、小規模では相手にされなかっただろうと思っています。

パシフィコ・エナジーが建設してきた太陽光発電所の買取価格(着工年別)

現在輸入燃料費の上昇によって足元の卸売電力価格(※電気の時価)が20円/kWhを越えていますので、15.37円/kWhという買取価格は再エネ賦課金を一切増やしません(※再エネ賦課金は買取価格と卸売電力価格の差を補填する制度です)この発電所が完成すると我々にとって再エネ賦課金に依存せず、国民(消費者)負担となる賦課金を下げることのできる初めての太陽光発電所になります。

2023年には15.17円/kWhの買取価格の三田太陽光発電所が完成する予定です。また今年は山口県のゴルフ場跡地を利用し10円/kWh未満の太陽光発電所の開発に着手しました。こちらは2028年頃に完成する予定です。
 これまで固定価格買取制度の再エネ賦課金という消費者(国民)の皆様のご負担によって太陽光発電所は広く普及してきました。その買取価格は大量導入委員会という有識者によって決められましたが、その名の通り、その目的は大量に導入することで将来の再生可能エネルギーのコストを下げようというものでした。その政策目的を実現するため、また多くの消費者(国民)の皆様のご負担を低減するために、今後も継続したコスト低減を図り、安くて安全な電気をお届けすることが使命だと考えています。

大規模な発電所を造る理由は、第二に責任ある運営を行うためです。
一カ所に大規模な発電所を建設すると、複数の技術者を常駐させるために充分な現場の作業量と経済的収益を確保することができます。通常2メガワットを下回る小規模な太陽光発電所には法的に電気主任技術者の専任兼常駐が法的に求められず、作業量も限られることから、小規模な発電所には人を常駐させることがありません。パシフィコ・エナジーの場合にはこれまで30メガワットを超える規模の太陽光発電所を開発してきましたが、最低でも3人、多いと25人の常駐者によって太陽光発電所の現場を日々管理しています。毎日少しずつ発電所を見て回り、3か月をかけて全体を一巡する巡視管理を続けていくことで、カメラやセンサー、または発電量データによる監視では分からない細かな変化を察知したり、また、地元の自治会との協議などを丁寧に行うことが出来ます。また、常駐する技術者は毎日巡視することで発電所に愛着を持ち、プライドを持って発電所を管理するようになる傾向にあります。こういった作業員の愛着や熱意といった部分をパシフィコ・エナジーは重要視しており、人が常駐することが地元との共生を果たすためのカギだと考えています。排水溝を綺麗に掃除したり、ほつれたフェンスを細かく補修したり、変電所についた苔を綺麗に洗い落としたりするほか、発電所の中で見つけた新たな植物を記録したり動物の写真を撮ったりする技術者がもっと増えて欲しいと思っています。

また一カ所に大規模な発電所を設置すると安全対策に多くの費用をかけやすくなります。当社が建設した太陽光発電所の中には県が定める基準を大きく越えた防災ダムを設置したところがあります。これは地元の心配の声に耳を傾けた結果として対策を講じることができたものですが、大規模な発電所であるからこそ大規模な対策ができたという背景があります。

日本最大の258メガワット作東太陽光発電所では基準の1.8倍の防災ダムを設置し地域防災に貢献

以上のように電力価格をできるだけ下げるためということと責任ある運営を行うためという理由から大規模な発電所開発に特化してきました。しかしながら大規模にやることのネガティブな面として何となく怖いといった印象を与えてしまうこともあるかと思います。そのため、発電所の中を周辺住民の皆様に見てもらうことや、できる限り生活圏から見えにくい場所に作ったり、周辺を木々で覆うといった工夫を凝らして周辺に馴染むような努力を継続していかないといけないと考えています。


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