Baby's in black No.3

蒸し暑い一日に街中バイクを走らせるとこんなにも消耗するのかと絶望的な気分になる。早く家に帰って冷たいものを飲みたい。炭酸を摂取したいという強い気持ちが頭を何度もグルグルした。

スーパーに寄って炭酸飲料を買って真っすぐ自宅に帰る。郵便ポストを開けると手紙やら広告が珍しくごそりと入っていた。

自室の扉を開けたら取り敢えず窓を全て開けて熱気を外に逃がす。夕方ということもあって気持ちのいい風が少しだけ吹いている。さて…ジャガイモをレンジで温め塩コショウをかけて噛り付いた。私はジャガイモが何よりも好きなのだ。スーパーで買った炭酸をコップに入れそれを飲みながら郵便を確認した。どれも興味を引くものは無かったが、最後の一枚の手紙にコップを落としそうになった。千鶴さんからだった。手紙はさっき会ってからすぐに書かれたもののようだった。

「しばらく旅に出ます。今までいろいろありがとうございます。優弥さんと過ごした時間は今思い返してみると本当に心が温かくなります。あなたとの思い出はかけがえのないものです。もし、もしまた会える日があるなら話したいことが沢山あります。それではまた。 田所千鶴」

風が吹いてきた。今度の風はぬるりとしていて気分のいいものではなかった。私は急いで部屋を出て月歩堂へ車を飛ばした。まただ。また私からかけがえのない大切な人がいなくなってしまう。いつもこうだ。どうして。私の問いは夏の夜の蒸し暑さにふわふわと宙をあてもなくいつまでも漂った。最悪な一日だった。

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