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なぜ私は特撮に夢中になるのか

 人は非日常に憧れる。誰だって退屈な毎日を繰り返すのは嫌だし、何か変わったことがあればちょっとうれしい。

 人は主人公に憧れる。誰だって称賛されれば嬉しい。注目されれば悪い気はしない。例えば怪獣がでてきて自分が倒して周りから感謝されればうれしい。この2つの人間の欲を満たしてくれるのが特撮だと思う。

 非日常を如何にして構築するか、それを人間ドラマにどう絡めるか。試行錯誤の結果、特殊撮影に至ったのだろう。本来ありえない大きさの怪獣を演出するためにミニチュアを作り、現実には存在しない爆発を表現するために火薬を使ったり、それを際立たせる人間ドラマを考えたりしてきただろう。

 例えば「ゴジラ」だってそうだし、「ウルトラマン」もそうだろう。「マタンゴ」も個人的には最後のオチが大好きだ。そういったミニチュア撮影や火薬での爆発表現は、いつしか特撮の醍醐味として認識されるようになった。

 最近の特撮を観てみる。「シン・ゴジラ」はゴジラを完全にCGで描いた。キグルミなんて一切出てこない。「仮面ライダー」は平成シリーズからあからさまに爆発シーンはなくCGでの演出だ。「スーパー戦隊」の巨大ロボも最近はキグルミとCGを使い分けている。これは果たして良いことなのだろうか。CGに頼りすぎて、特撮の醍醐味が失われていないだろうか。

 失われていない、と思う。非日常、非現実的なものを表現する方法がCGに移っただけである。以前は人手や時間がかかった表現が、今やパソコン上の操作で簡単に行える。こんな素晴らしいことはないだろう。お金がかかると言えばかかるが。

 そう、特撮の醍醐味はミニチュアでも火薬でもキグルミでもない。ありえないものをどう表現するか、という一点である。それに手段を選ぶ必要はない。だからこれからも、大いにCGを駆使しながら表現を続けてくれればいい。過去の伝統なんてクソくらえだ。時代に沿った考え方をすべきなのだ。

 きっと子どもたちも夢中になって観るだろう。来月から始まる「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」を。

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