【短編小説】魔法使いになりたかっただけ その2【連載】
ある夜。
仕事帰りだった私は、自宅のマンションで見慣れぬものを発見した。
「……なに、これ?」
何の変哲もないただの小さい段ボール箱が扉の前にぽつんと置かれている。このマンションはオートロックだから、部屋の前まで荷物が運ばれてくることはありえない。どうやって送られてきたのか全く見当もつかないが、表面には「―――へ」と私の名前が書いてあった。
持ち上げるとずしりと重たい。なんだか書類のようなものが沢山入っているようである。仕事の書類が送られてくるという話は聞いてなかったので妙に思った。
ひっくり返して裏を見てみる。そこには小さな字で、「玲子より」と書いてあった。
私は一目散に家の中へとそのダンボールを運び込んだ。どういうわけかは知らないが、行方不明になった玲子からの届け物のようだ。
リビングにダンボールを静かに置く。これはどうやら大切なもののようだ。
「私が開けてもいいのかな……」
二つの選択肢が頭に浮かぶ。
一つは、ダンボールには手を付けずに彼女の両親に届ける。普通に考えれば、玲子のものは玲子の家族のもとにあった方がいいだろう。このまま郵送してしまえば楽である。
もう一つは……今ここで開封してしまうという選択肢。
答えは明白だった。
「これは私が見なければならないのもの……なのかな」
誰にともなく、私はそうつぶやく。
宛先は私である。これは玲子が私に送りたかったものだろう。そう考えるならば、最初にこのダンボールを開かなければならないのは私である。
まぁ、とにかく見てみるか。そう思い私は、カッターを手にとった。
慎重にダンボールに封をしているガムテープを切る。開いた中には、二種類のものが入っていた。
一つは、おもちゃの魔法ステッキ。もう一つはノート、それも何冊も。
これはなんだろう。
私はまずおもちゃの魔法ステッキを手に取った。昔よくおもちゃ屋さんで売っていた、安っぽい玩具だ。今どきこんなものを親に買ってもらう子供もあまりいないだろう。
だが不思議と見たことがある気がした。たしか昔見たアニメで女の子が振り回していたような……。そう思い私は記憶を遡る。
そうして小学生の時まで戻った時、あぁ……と思い出した。
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