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【英文記事和訳】2024年にウクライナがどうやってロシアに抵抗できるのかを知りたければ、ビロホリウカという集落を見てみよう(ウクライナ軍予備役将校Tatarigami氏)

上記リンク先の英文記事は、2024年にウクライナが前線において、どのようにロシア軍に立ち向かえばよいのかを分析したものです(2024年3月20日公開)。その典型例として、ルハンシク州ビロホリウカを巡る攻防戦を取り上げ、ロシア・ウクライナ双方の戦術を示し、ウクライナ軍が抱える問題点も指摘しています。

著者のTatarigami氏(ハンドル名)はウクライナ軍予備役将校で、フロンテリジェンス・インサイトという独立系戦争・紛争分析チームの一員として、ロシア・ウクライナ戦争に関するさまざまな報告を、SNS等で発信している方です。

なお、この翻訳記事中の画像は、原文記事からの転載になります。また、原文画像のキャプションは訳していません。

日本語訳

ウクライナ軍の前線は不安定な状態だ。砲弾不足、マンパワー不足、そして防空能力の欠如が、じわじわとロシア軍が前進するという結果を招いている。だが、連日のロシア軍の攻撃に対して、勇敢に立ち向かい続けている場所が地図上にいくつか見つけられる。

その一つがビロホリウカだ。この町は、南北からロシア軍が進軍してきているにもかかわらず、持ち堪えてきた。その秘密は、そこの強化防御陣地(なお、ウクライナが積極的防衛に転じてことを受け、現在、戦線全域で急ぎ構築が進められているのがこれだ)にあるだけではない。その秘密は、経験豊富な、戦場で鍛え上げられた部隊のなかに存在する。だが一方で、献身的に防衛しているにもかかわらず、ロシア軍の圧倒的なマンパワー、KAB滑空爆弾、FPVドローン[一人称視点ドローン]によって、数で劣るウクライナ軍防衛拠点はすり減らされ続けており、その状況は砲弾不足によって悪化している。

ウクライナの前線上に位置する、多くの同じような都市が直面すると思われる困難な状況を、読者の皆さんに示そうと考え、衛星画像や目撃証言の検証作業を進めてきた。

ビロホリウカは今でも持ち堪えている。しかし、かなり遅延している動員を、ウクライナが迅速に実行しない場合、また、是が非にも必要な砲弾の支援がない場合、これから説明するロシア軍の戦術によって、ウクライナ側防衛能力が、あちらこちらですり減らされていくのは確実だ。

ロシアの将軍たちがシヴェルシク方面を気にする理由

https://euromaidanpress.com/2024/03/20/want-to-know-how-ukraine-can-resist-russia-in-2024-look-to-bilohorivka/ から転載

支配領土を示した上の地図に示されているように、2022年9月にウクライナ軍が遂行した電撃的なハルキウ州解放戦以降、シヴェルシク方面において、もっと正確にいえばビロホリウカにおいて、前線の変動はごくわずかなものだ。

ビロホリウカ周辺での戦闘は1日たりとも止むことはなかったけれども、そうなのだ。しかも、この地域のすぐ南では、ソレダールを巡る悪名高い激戦が、2023年1月にロシア軍がここを占領するまで続いていた。

さらに川[ドネツ川]の対岸では、クレミンナ周辺の森林地帯における激しい戦闘が1年以上も続いている。その間、ロシア軍は一定程度の戦術レベルの前進ができたものの、防衛網の大突破は達成できていない。

2022年末から2023年初頭にかけて明白になったのは、どちらの側もこの地域で前線を大きく動かすことができないということだ。

ウクライナ軍は主に防御に重点を置き、一方でロシア軍は、情け容赦のない火砲・ドローンによる攻撃に支援された、小規模な戦術部隊の強襲攻撃へとシフトしている。ウクライナにとって入念に整えられた陣地は、このロシアの戦術に対して有効であることが時間とともに証明された . . .

この一年を通して、戦術レベルで拠点を喪失することは時折あったとはいえ、ウクライナは進軍してくる敵部隊に甚大な死傷者を出させることに何とか成功した。また、多くの場合、ウクライナは敵部隊を完全に殲滅した。リシチャンシク側面にウクライナ軍部隊が存在していることで、ロシア軍統帥部は相当規模の戦力をこの地域に縛り付けておかねばならなくなった。また、リシチャンシクに向かう西方からのウクライナ軍の反撃と、ソレダール地区に向かう北方からのウクライナ軍の反撃を意識せざるを得なくなった。

ついに、情勢はウクライナ軍部隊にとって悪化し始めた。その原因は、兵員交替の欠如と砲弾不足にある。ほとんど砲弾を持たずに薄く広がった部隊は、兵が足りない陣地をもはや保持できなかった。もしくは、ロシア軍の前進を阻止するための弾幕射撃ができなくなった。

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この地域が何といっても重要な理由は、ここがスロヴヤンシク〜クラマトルスク都市集合体への入り口としての役割をもっている点にある。スロヴヤンシク〜クラマトルスク都市集合体は今でもウクライナ側統治下にあり、ドネツィク州の占領されていない地域に位置している。この2都市の占領は、プーチンが宣言した「ドンバス解放」を現実化するうえで絶対に必要である。

この方面はロシア軍の高優先目標として明示されてはいないが、かなりの戦力集中がこの地域で継続しており、その大部分がロシア占領下のリシチャンシクとシェヴェロドネツィク地区に配置されている。

この地区に派遣されたロシア軍は、第2親衛ルガンスク・セヴェロドネツク軍団隷下部隊が中心で、交替で送られるロシア軍正規軍部隊と「戦闘即応予備」の混成部隊によって補完されている。さらにカディロフツィ部隊の一部が後方地域で活動している。

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当初、この地区の地形はウクライナ軍部隊にとって有利だった。それは、上の高低差地図で確認できる。この地図では、標高の高いところは赤色のような暖色で示されており、低いところは青色のような寒色で示されている。しかし、ロシア軍がこの一年を通して前進していった結果、大きな変化が起こった。現在、ビロホリウカ地区にある標高の高い地点の多くはロシア側支配下にあり、ビロホリウカ防衛の大きな困難になっている。

戦力配置:小規模なウクライナ軍部隊に食い止めらる優勢なロシア軍

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まずはウクライナ側から。ビロホリウカ地区の防衛は主に第54機械化旅団、第81空中機動旅団が担っており、それに付随してさまざまな機関・組織から派遣された部隊が展開している。

ロシア軍はかなり大規模な戦力を配置している。その戦力には第7・第6・第85独立自動車化狙撃旅団が含まれ、それに第6・第12・第16・第17戦闘即応予備大隊が付随している。

それに加えて、第4独立戦車大隊「8月[アヴグスト]」と第1102自動車化狙撃連隊が圧倒的な軍事力展開を支えている。上述したように、後方地域は第204特殊戦連隊「アフマト」が保持している。

シヴェルシクの南側側面を守っているのはウクライナ第10山岳強襲旅団で、ほかの部隊からの分遣隊によって強化されている。この側面を攻撃しているのは、主にロシア第123独立自動車化狙撃旅団の部隊であって、第51親衛空挺連隊も加わっている。

展開している部隊の数的優勢に加えて、ロシア軍はかなり多くの車両を有しており、また、注目すべき点として、火砲数と使用可能な砲弾数の点で、大きな優位を得ている。この優位性によって、ロシア軍は集中的な砲撃ができており、その結果、組織的に強化防御陣地を崩し、反復的な突撃を通して守備部隊を徐々に消耗させることができている。

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ビロホリウカ郊外の水処理施設のような場所は、上の写真で示されているように、極めて競合度の高い地区になることが多い。この写真では、数多の砲撃痕と破壊された建築物が、この施設の支配権を巡る激戦を明らかにしている。

工場施設は、将兵・武器・補給物資を隠蔽する。このような建造物が失われた状況において、屋根付きの強化された塹壕が、砲弾片とドローンの投下物に対する防護効果を、ある程度までは同じように与えることができる。

困難な地形と強固な陣地に、地雷原の敷設と頑強な抵抗が組み合わさり、ロシア軍に対して、前進することが難しいという状況を突きつけている。

同時並行的にロシア軍は、代替アプローチを模索する努力もしており、ビロホリウカを複数の方向から攻めることを、主に地形的に優位なところから圧力をかけるかたちで試みた。消耗の点で、このような戦術は相対的にウクライナ側有利であり続けてはいるけれども、戦力バランスがロシア側有利へと徐々に傾いていることが観察できる。

戦闘分析:絶え間ないロシア軍の攻撃にさらされるなか、ビロホリウカは如何に防衛線を保っているのか。

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年明け以降、ビロホリウカの東側側面が攻撃目標になっており、主に第6・第7独立自動車化狙撃旅団、第4独立戦車大隊、第1102自動車化狙撃連隊が連携して攻撃を進めている。多くの場合、このような攻撃はだいたい1個中隊規模の戦力で行われている。そして、この攻撃部隊は、少数のBMP[*注:ロシア製歩兵戦闘車]と1〜2両の戦車によって支援されている。

注目すべきこととして、2023年にロシア軍は、この地区においてFPV(一人称視点)ドローンの投入数を増す取り組みをかなり強化した。

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南側側面は主に第2・第123独立自動車化狙撃旅団隷下部隊が攻撃にあたり、そこに第51親衛空挺連隊が加わっている。ここ数週間、ロシア軍はこの場所でウクライナ側防衛線を打ち破ろうとさまざまなことを試みてはいるが、大きな進展を示すことはまったくできずにいる。

何カ月もの活発な攻撃から、全般的なパターンが抽出できる。それが以下だ。


ロシア軍はUAV[*注:空中ドローン]を用いた偵察から始め、技術的手段によって情報収集を行う。


攻撃前に、ウクライナ軍陣地に対して、ロシア軍はKAB(空中投下型誘導爆弾)を投入し、それに続けて砲兵による準備射撃を行う。

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分隊〜中隊規模の少人数のロシア軍が、徒歩または車両に跨乗して前進する。ロシア軍は、移動中にFPVドローンから加えられるリスクを軽減しようとして、車両に「Lorandit」のような電子戦システムを備え付けている。

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最初の遭遇戦の際、もしくはウクライナ陣地から50〜150mほどの地点に到達した際、可能な場合はFPVドローンと戦車火力に支援されながら、攻撃部隊は迅速に降車し、その後、突撃を行う


さらに混乱状況を引き起こして、ウクライナ軍が陣地を放棄せざるを得なくなるようにする目的で、ロシア軍は暴徒鎮圧用物質が含まれている化学ガス弾を使用することがある。

一般的にいって、ロシア軍はすばやく陣地を奪取して、すぐにそこの防御を固めようとする。ウクライナの自由に使える砲弾が制限されているため、ロシア軍が新たに陣地を占拠した際に、同軍をそこから追い出すことが難しくなっている。

残念なことに、この状況は、歩兵による反撃に頼らざるを得ない結果を招いている。この種の反撃は効果的だが、砲撃というもっと直截的な選択肢と比べ、損失の大きいものになる。

ロシア軍のこのような攻撃は、規模が比較的小さいとはいえ、継続的かつ頻繁に行われている。空中投下型爆弾・砲撃・ドローン展開が組み合わさるとき、ロシア軍の攻撃は、ウクライナ側にとってかなりの負担になる。注目すべきこととして、戦車2両と装甲車両8両を含む直近の攻撃の際、ロシア軍はFPVドローン15機をたった1箇所の防御陣地に差し向けてきた。

この種の攻撃の例を示す簡単な時系列事例が以下だ。


1月14〜15日:歩兵が跨乗した4両のBMP。BMPと歩兵の双方に大きな損害が生じたのち、ロシア軍は任務を放棄。


2月前半期:ロシア軍は歩兵主体の攻撃を試み、車両の投入は最低限にした。


2月17日:歩兵とともに戦車1両+BMP2両を投入。戦術レベルの部分的な戦果達成に成功。


2月18〜20日:追加の歩兵を伴う突撃を継続。車両投入は無し。


2月21日:シピリウカからBMP4両がウクライナ陣地攻撃に着手。BMP1両が撃破され、ほかの2両は損傷を被る。撤退を余儀なくされた。

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先週:ロシア軍はより規模の大きな強襲を敢行。2両の戦車と8両のBMP及びMTLB[*注:ロシア製汎用装甲輸送車両]に歩兵が随伴。

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小隊規模の部隊を投入するという方法で、ロシア軍はウクライナ軍守備隊を消耗させる段階的な戦術を採用している。

それぞれの攻撃に伴ってウクライナ側に生じる犠牲者や負傷者は、はっきりとした影響を示しており、交替要員に使える兵員源を減らし、その結果、防衛線は薄くなっている。

ロシア軍はある地域を十分に弱体化させるとすぐに、そこに生じた可能性のある脆弱さにつけ込む目的で、より大きな中隊規模の戦力を集結させる。

今のところ守備隊はロシア軍の攻撃をうまくいなしているけれども、守備隊にかかる疲弊の影響は明白だ。

2024年のウクライナの戦場を形づくる主たる要素

戦場を形成する主要要素は、砲弾・ドローン・車両にとどまらない。これら要素の相互関連性は、戦争の進捗とともに変動する可能性がある。しかし、これらはシヴェルシク〜ビロホリウカ地区を巡って続いている戦闘において、今後も重要なものであり続けることが予期される。

フロンテリジェンス・インサイト[*注:Tatarigami氏が参加している戦況分析チーム]が特定した要素は以下だ。

1.KAB ー 空中投下型誘導爆弾
ロシア国内でのKABの生産増加は、爆撃回数の段階的エスカレーションを招いている。この爆弾の精密誘導性は比較的低いとはいえ、KABの精密誘導性は時とともに向上している。ウクライナはKAB対策に関して、大きな困難に直面している。なぜなら、投下位置が、ほとんどの短距離防空(SHORAD)システムの有効射程外にあるからだ。確かにウクライナはパトリオット兵器システムのような対空(AD)防衛兵器を所有しているが、保有数は限られており、前線地域の大部分を適切にカバーするには不十分である。

2.電子戦の衝撃
FPVドローンの出現によって、ある動きが生じた。この流れのなかでは、数百万ドルもする車両でさえ、それと比べると安価な500ドルのドローンに容易に撃破されるのだ。この変動は戦場に大きな影響を及ぼしつつあり、車両の伝統的な使用法を変えている。戦場でのFPVの飽和によって、車両のもつ役割が最低限まで引き下げられている事例もいくつか存在しており、そこでは主に輸送手段として使われている。具体的には、破壊されるリスクを最小化するために、搬送して兵力を展開させたら、急ぎ後退するという行動になっている。

注目点として、BMPや戦車のような以前からあるロシア軍車両に、電子戦(EW)モジュールを装備することの増加を示す明確な傾向が存在している点がある。これらのモジュールは、FPVとオペレーター間の通信妨害を目的としており、増加する脅威という状況への適応的反応を示している。戦闘が長く続くなか、これらEWモジュールの性能が向上し、より標準規格化され、幅広い種類の車両に装着されることが予期される。

3.地雷との戦いという困難
第一次世界大戦と第二次世界大戦のような過去の戦争において、もしくは、ゲリラ戦において厄災であった地雷は、同じようにロシア・ウクライナ戦争における悩みの種になっている。その一方で、ドローンが既存の地雷除去ドクトリンを古いものにした。

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地雷除去対象地域から数キロメートル離れた位置にいるドローンに探知されるリスクを抱えるなかで、地雷除去車両の投入は難しくなっている。さらに、地雷除去車両の行動範囲が狭いため、FPVや対戦車チームによる待ち伏せ攻撃の影響を受けやすい。

ほかの手段として、装甲車両の前面に取り付ける装置である地雷処理ローラーの装着という手もある。このローラーは、車両のキャタピラが地雷や即席爆発装置(IED)に接触する前に、これらの爆発物を無力化する意図で設計されたものだ。だが、この方法にも欠点がある。なぜなら、戦車の速度と移動能力の高さがかなり犠牲になる可能性があるからだ。戦車がもつこの二つの特徴は、多くの戦闘場面において、容易に探知されて攻撃目標になることを避けるのに必要なものだ。

ロシアが展開した重厚な地雷原は、ウクライナ攻撃部隊の移動能力を阻害した。さらに、反撃のためウクライナが地雷原を突っ切る必要がある状況下において、安全な経路をつくるための地雷除去作業は、時間浪費的でもあり、極めて危険なものでもある。というのも、その際にロシアはウクライナ軍工兵を簡単に見つけ出すことができ、工兵が容易に攻撃目標になってしまうからだ。

このことは、ロシア軍にとっても同じようにいえる。結果として、ウクライナ南東地域に地雷が多く埋設されたことが、戦争をより静的かつ陣地戦的様相にしている。

4.強化防御陣地の重要性
堅固に建設されて、隠蔽された強化防御陣地の存在は重要なもので、攻勢作戦に対して決定的とさえいうことができる。これはウクライナが2023年夏季反転攻勢に失敗したことからも明らかだ。防御陣地を入念に整えることで、死傷者もしくは物的被害を生み出すのに必要な砲弾の数は、著しく増加する。ロシア軍は領土を奪うと、できるだけ早く野戦陣地を新たに構築しようとしているが、このようなロシア軍の行動は反撃を難しくしている。

これは、大地を多層構造防衛陣地システムに変えていくというアプローチであり、ロシア軍が攻撃に成功する毎に、戦術レベルの防衛線が新たに一つできあがる。

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ビロホリウカの場合、ウクライナ側陣地の周辺に無数の塹壕が構築されていることは、この地区に動きが無いようにみえる主な理由の一つになっている。これらの防御用構築物は抵抗力を強化するのみならず、防御ネットワークの重層化を生み出すことに貢献しており、その結果、突入前進を企図する敵側の取り組みを困難にしている。

ビロホリウカ:ウクライナの防衛戦略を示す小宇宙

ビロホリウカのような地点は、アウジーウカのような場所よりも、ウクライナの見通しをより反映している。2014年以来、防御準備とその組織化が進められてきたアウジーウカとは異なり、ビロホリウカは一般的な前線を分析する点で、また、得られた経験をほかに適応するという点で、よりよい機会を与えている。

このことは私たちに最後の質問を投げかける。それは、大きな見通しに関してビロホリウカから得られる教訓は何か、という問いだ。

2024年の重点は、以下3つの重要要素に集中する可能性が高い。

  1. 強化防御陣地

  2. マンパワー

  3. 砲弾

ビロホリウカ防衛戦は、ロシア軍の前進ペースを遅らせ、ロシア軍を消耗させるウクライナ軍の能力を示すショーケースだ。この戦いはドネツィク州全面占領といったロシア側政治目標を挫くほどの損害をロシア軍に与えてきた。シヴェルシク地区、とりわけビロホリウカは、1年を超える期間、ロシア軍を寄せ付けずにいることに成功し、支配領土の変動はごくわずかなものだった。とはいえ、兵力不足が続くことに直面しており、最近の砲弾不足によって事態は悪化している。

これは防衛に関する考え方が妥当であったことを明白に示しており、適切な兵員交替と効果的な火力支援に必要な十分な数の砲弾が伴えば、さらなる向上が見込まれることを示唆している。

2025年に攻勢を遂行する能力を獲得するために、ウクライナは新たな動員を行わねばならず、それに伴い、兵員交替、訓練、兵力の再編を進めていかなければならない。それに加えて、西側からの支援が、2025年ウクライナ攻勢にとって、必要不可欠なものになるだろう。

ウクライナ軍には、ロシア軍が行っているような小規模な戦術部隊による消耗アプローチを用いる余裕はない。それは、砲弾と動員できる人的資源が十分にないという要素があるからだ。

このことを踏まえると、2024年のウクライナ軍は、塹壕にこもって、貴重な時間を稼ぐ必要があるのかもしれない。ビロホリウカのケースが示しているように、ウクライナが強化防御陣地を効果的に構築し、そこに兵員を充足させ、ロシア軍の進撃を地雷原と砲火力によって阻止できる場合にのみ、このアプローチは成功する。

KABの広範な使用がもたらす困難さが続いていく可能性は高く、解決策は、パトリオット防空システムの追加調達とその配備、そして、最新鋭空対空ミサイル装備のF-16の調達とその実戦配備しかないかもしれない。

パトリオットとF-16両方の兵器システムの訓練には、かなりの長さの時間がかかる。ゆえに、たとえウクライナがこれらの兵器の追加パッケージを受け取れたとしても、すぐに実戦投入はできず、兵士の訓練を行い、これら兵器向けの兵站を整える時間が必要になるだろう。

このことからも、ウクライナが注力する必要があるのは、強化防御陣地の構築のみでなく、それら陣地を隠蔽する取り組みにもあることが、はっきりと分かる。

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