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【SNS投稿和訳】ウクライナ戦況:2024.04.27時点におけるアウジーウカ地区の戦闘序列と今後の展開予測(フィンランド軍予備役将校パシ・パロイネン氏)

OSINTアナリストでフィンランド軍予備役将校のパシ・パロイネン氏が、ウクライナ東部アウジーウカ方面における両軍の部隊配置状況(ORBAT[戦闘序列])と今後の作戦動向に関する分析を、Xに投稿しています(日本時間2024年4月29日04:32投稿)。この連続投稿を日本語に翻訳したものが、本記事になります。なお、記事中で用いた画像は、パロイネン氏のX投稿に添付されているものを転載して使用しています。画像が不鮮明に表示される場合は、パロイネン氏のX投稿にアクセスして、画像を閲覧してください。

日本語訳

2024年4月27日時点のORBAT[戦闘序列]と作戦展望に関する連続投稿。過去1週間、ロシア軍はアウジーウカ[Avdiivka]地区で一連の局地的な成功を収めてきた。この成功の始まりは、2024年4月22日にオチェレティネ[Ocheretyne]という村落内にロシア軍が予期しないかたちで突然進入してきたことがきっかけだった。

この突然の成功に関する正確な理由は、完全には明らかになっていない。だが、兵員交替に関するミス、リソースの振り分けミス、複数の旅団から引き抜かれた臨時編成部隊間の連携に関する問題に関係している可能性は高く、砲弾とマンパワーの全般的な不足がこのような問題をさらに悪化させたのだろう。ロシア軍はウクライナ軍前線に対して継続的に圧力をかけている。その方法の一つは小規模部隊による突撃であり、もう一つは上述のウクライナ側の問題を確実に利用していくための探りを入れる偵察行動である。オチェレティネでの突然の成功後、ロシア軍は戦線上の開口部に追加戦力を集結させ始めた。これらの追加戦力は、複数の旅団・連隊(第30・35・55自動車化狙撃旅団と第433・27自動車化狙撃連隊)から引き抜かれた戦力である模様だ。なお、第433自動車化狙撃連隊は、まだ編成途中にある第27自動車化狙撃師団の一部をなす部隊だ。

この地区の戦線上には、さまざまな部隊がとりわけ密集しており、そのため、ロシア軍がこのような空間的に余裕のない戦場に各旅団・連隊の全戦力を投入している可能性は低い。

ここの戦線に投入されている部隊の大部分は、予備として後置されていたり、過去の戦闘以降、戦力を再建している途中であったりする戦力を、今でもかなり多く有している。ここで示した地図に示されているのは、各部隊編制の大まかな位置を示しているだけであって、これら編制に属する部隊の一部が戦闘に投入されている。

各部隊記号の下に書かれている年月日は、最新情報の年月日を示している。また、1カ月以上前の情報も、かなり注意しつつ扱ってみた。「*」マーク付きの年月日は二次的情報を利用したことを意味しており、不正確さが増している。

両軍ともに各戦力を、戦術的部隊集団としておおまかにまとめて運用しているものと推定できるが、特にウクライナ軍に関して、戦闘序列は実際のところかなり混沌としており、はっきりとは分からない点が相当ある。多くの旅団が個々の大隊集団へとばらばらに分けられてしまっており、戦線上で幅広くさまざまな方面で行動している可能性がある。両軍の死傷者が増すことで、各旅団はもっと小規模な臨時編成グループへと小さくまとめられてしまうことにもなっている。また、ロシア軍は地域別編成連隊から来た新たな歩兵を、より経験豊富な旅団に送り込んでいることが多い。

アウジーウカを巡る戦いとその後の作戦において、1~2個の地域別編成連隊に属する部隊を、1個正規旅団/正規連隊の指揮下に置くことが一般的にみられた。このことは、ほぼ間違いなく今後も同様に続くだろうと思われる。

オチェレティネ占領には機会主義的な側面があったかもしれないが、ロシア軍がこの状況を利用する用意を整えているのは間違いなく、オチェレティネ占領によって、攻撃側に新たなさまざまな戦術的な好機が生じている。オチェレティネ内部に突進した直後に、ノヴォバフムティウカ[Novobakhmutivka]とソロヴョヴェ[Soloviove]をすばやく奪取し、手際よく迅速にベルディチの未占領箇所を確保することで、ロシア軍は開口部を広げていこうとした。ロシア軍はまた、ノヴォカリノヴェ[Novokalynove]とケラミク[Keramik]周辺のウクライナ側戦線を突き抜けようと、二次的な突進箇所を切り開いた。

アウジーウカ陥落後のここ数カ月間、ウクライナ軍は急ピッチで新しい防衛線の構築を進めている。しかし、これらの防衛線は、まだその大部分が構築途中だ。現時点でこれら防衛線のほとんどは、強化防御拠点をつなげたものに過ぎず、有効的な防御に必要な多くの要素を欠いている可能性が高い。

オチェレティネの戦線に裂け目が生じたことで、ロシア軍が思った以上に早く第一防衛線内に進入できるようになる可能性が生じている。また、ロシア軍がオチェレティネから出発して、複数の谷間上地形へと進んでいくことで、この状況をうまく利用していこうとしていく可能性は高く、低地に位置する起伏の多い大地を有効に使って、小規模歩兵突撃を続けていこうとする可能性も高い。アルハンヘリシケ[Arkhanhelske]から北へと通ずる谷間は、とりわけ懸念点である。ここの地形を通ってのロシア軍の攻撃は、ロシア軍が第90親衛戦車師団から機械化予備戦力を引き抜き投入する場合、H20高速道路を通る機械化部隊による北進と組み合わさることがありうる。第90親衛戦車師団は通常以上の規模の部隊で、戦闘部隊として5~6個連隊を有しており、その一部が現在、戦闘に投入されている。なお、同師団の装備面の状況は、不明な点が多い。

まだ訓練途中にある第27自動車化狙撃師団隷下部隊を、時期尚早ではあるが前線に送り込むという選択肢も想定しうる。アウジーウカ地区からの北進が、チャシウ・ヤール[Chasiv Yar]付近でのロシア軍による突破の試みと連動することになる可能性はかなり高い。

このアウジーウカ発とチャシウ・ヤール発の作戦はともに、コスチャンティニウカ[Kostiantynivka]の占領を狙っている可能性がある。もしくは、トレツィク[Toretsk]周辺のウクライナ軍に撤退を強いることを意図している可能性もある。ただし、現在のロシア軍がすぐさまこの目標を達成できる見込みは、今のところ大きくない。

だが一方で、ウクライナ軍部隊が引き続き兵力不足と砲弾不足に苦しむことになる場合、もしくは、ウクライナ側の防衛態勢に全般的な混乱がみられる場合、上述したロシア軍作戦シナリオは、今後数カ月という範囲内で(実現可能性は低いとはいえ)現実化する可能性がある。

ウクライナ軍が乏しい予備戦力をここの戦線に絞って集結させることを、ロシア軍が許容する可能性は低い。そのため、今後の数カ月の間でほかにいくつかの激戦地が生じてくることは予想可能であって、そのことはウクライナ側のリソースをさらに圧迫することになる。

今回の連続投稿は、以前の2月に投稿したORBATと同じ情報源に基づいている。以下のデータもまだおおむね有効である。ただし、第1親衛戦車軍には何らかの変動がみられる。また、新たな概要を、もしかすると近いうちに提示することになるかもしれない。

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