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時間経過とともに減っていくお金

ちょっとした 例え話し…

昔、バイカル湖には、たくさんの魚がいた。漁師もたくさんいたが、穫りきれない魚がいた…ところが、ある日、そこへ銀行がやってきた。そして「もっと大きな船と機械を買えば、もっとたくさん魚がとれますよ」と、漁師たちにふれて回った…最初は、漁師たちも断っていたのだけれど、銀行は「私たちがお金は貸します。たくさん魚が穫れれば収入を増えるのだから、お金はすぐ返せますよ。もちろん、分割でいいですよ」と。
そして、漁師たちは、銀行からお金を借りて大きな船を買った。もちろん漁獲量を倍増させ、収入も倍増して、みんなは贅沢をすることができた…街は一変した…

ところが、ある日、魚が一匹も穫れなくなった…「魚は穫りきれない。たくさんいる」と誰も心配しなかったが、結局、魚を穫り尽くしてしまったのだ。そして、漁師たちには、返しきれない借金だけが残った。銀行は、借金のカタに船を取り上げ、家を取り上げて去っていった。

まぁ、これは例え話し。

でも、大きなお金が動くことと、人の暮らしや環境がどういうふうに関係しているのかということが、よく表現されている話しではあるように思う。

銀行のすっぴんの姿についても。

かつて、NHKのBSで放送されたドキュメンタリー番組「エンデの遺言--根源からお金を問う」(1999年)。その番組を1冊の本にまとめたのが河邑厚徳さんの著作「エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと 」(NHK出版/文庫版 講談社+α文庫) 。

この本について、紀伊国屋さんのwebショップの解説には「ファンタジー作家ミヒャエル・エンデに導かれて『暴走するお金』の正体を探りに旅立つ。『老化するお金』『時とともに減価するお金』など、現代のお金の常識を破る思想の数々を紹介する。欧米に広がる地域通貨の実践―米国のイサカアワー、ヨーロッパの交換リング、スイスのヴィア銀行などをレポートする」とある。

なぜお金持ちは寝ているだけでお金が増えるのか?
なぜたくさん働いても貧しさから抜け出ることができないのか?
なぜ借金がこんなにかさむのか?

エンデのファンタジー世界からお金の本質が見える。

バイカル湖くんだりまで銀行員さんが出かけていかなければならないのは、毎年、売り上げを拡大していかなければ、株主に怒られちゃうからなんだろう。そして、株主たちは、そのことによって、人の暮らしや自然環境が破壊されても、おかまいなし。

ときにお金は、現実に生きる人々の生活を破壊し、ときに人を殺す。

でも、その「お金」こそがフィクションなんだから「時とともに減価していくお金」だって現実のものにしようと思えば現実にできるはず。でも、それを阻んでいるものがある。

やっぱり「人間の欲」かな。

産業活動、つまり企業の活動が環境に大きな影響を与えてきたし、「消費者」であるところの僕らも加担して来た。明治の頃の足尾銅山問題や、高度成長期のスモッグ(工場排煙)、公害病、そして、現状のマイクロプラスチック問題…企業が主導、消費者が共犯となって地球を汚し、自分たちの健康(命)も侵されていった。

今やわかりこった話。でも、お金持ちになりたいし、そういうことで羨望の眼差しを浴びてみたい…その気持ちにも変わらない。

その道具が「お金である」という考え方からも離れられない。

そうだ。

越えていかなければならない山は自分の中にあるのかもしれない、と。

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと
河邑 厚徳/グループ現代 著(講談社+α文庫/2011年)


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