6才の次女と、すみっコぐらしの映画を観た
前回のnoteでは、10才になった長女の事を書きました。
なので今回は、次女との事を書いてみようと思います。
タイトルにもある通り、
6才の次女と一緒に、すみっコぐらしの映画を観に行った話です。
観に行った映画の題名は、
「映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」
今回のエピソードは、ちょっとだけエッセイ風に綴ってみたいと思います。
それでは、今回も宜しくお願いします。
平日のイオンシネマはあまりにも閑散としていて、すでに営業が終わったんじゃないかと戸惑ってしまった。
週末であれば、ポップコーンやドリンクを求める客でごった返しているはずのイオンシネマのロビーは、販売カウンターに並ぶ客の列はおろか、スタッフの姿すら見えなかった。
ただし、上映時間を示すモニターはこれから上映する映画をちゃんと並べて表示していたし、よく見てるとカウンターの上にちょこんとベルが置いてある事にも気が付いた。
ご用の方はこのベルを鳴らして下さいー
どうやらスタッフは今、バックヤードに引っ込んでいるらしい。
へえ、平日のシネコンってこんな感じなのか。
少し寂しい気もするが混雑がないというのは中々快適だな。そんな事を思いながら、僕はスマホで事前に購入済みだったチケットのQRコードを、それこそ誰も並んでいない発券機にかざしていた。
時間は夕方の16時。
上映開始までまだ30分以上余裕がある。
僕の隣には発券機を睨んでいる6才の次女。
彼女は待ち構えていたかの様に、発券機から吐き出されたチケットを手に掴む。
そのチケットを僕に手渡しながら、ここに来るまでの車内でたっぷり寝たので元気いっぱいですという様子の、とても無邪気な笑顔を向けてきた。
僕が今ここでこうしているのは、他ならぬ彼女の望みを叶える為だった。
「すみっコぐらしの映画が観たい」
娘がそう呟いたのは、もう2ヵ月以上も前の事。
「じゃあいつか行こうね。」
そう返したものの、実際に訪れたのはようやく今になる。
実を言うと、この日がすみっコ映画の上映最終日。
僕は慌てて有休を取り、幼稚園終わりの娘を連れて映画館へとやって来たのだった。
さて、
上映まではまだ少し時間があった。
モール内にあるシネコンから、飲食店が並ぶグルメストリートを挟んだ向こうにゲームコーナーが見える。丁度よい暇つぶしになると思い、僕たちはそこに向かう事にした。
平日のゲームコーナーは、これまた閑散としていて、なんだか時間の狭間に紛れ込んでしまった様な気持ちになる。
メダルゲームやクレーンゲーム、その他のゲーム筐体達は、誰に相手されずとも大きな音と派手な光を放っていて、それが逆に異様に思えた。
前に映画を観に来た時も、ここで遊んだなぁ。
ふと、そんな事を思い出す。
その時に観た映画は「マイエレメント」
それは3つ上の長女が観たいと言ったピクサーアニメで、たまたま予定が空いていたとはいえ、公開初週の週末に家族4人で観に行っていた。
それに比べて、次女が観たいと言った今回のすみっコ映画はどうだろう。公開最終日の平日に滑り込み、僕とふたりだけで観に来る映画となってしまった。
週末の賑わうゲームコーナーで、もう一回だけ!とクレーンゲームをせがんでいた長女の姿と、
がらんとしたゲームコーナーで、今はまだクレーンゲームを遊ぶにはハードルが高く、ガラス越しに景品を見つめているだけの次女の姿。
そのふたつが、目の前で重なった様に思えた。
長女と次女。
親の僕たちはふたりに等しく愛情を注いでいるつもりでいて、無意識のうちに自分たちの都合に当てはめてはいないだろうか。
閑散としているゲームコーナーを満たしている騒音。その僅かな静寂の中に、するりと後ろめたさの様な想いが流れ込む。
結局僕と娘はゲームコーナーをうろうろ徘徊し、彼女が遊べそうな乗り物の幾つかを遊びきると、またシネコンのロビーへと戻ってきた。
上映時間が近づいているからか、先程は無人だった販売カウンターにスタッフが出てきていた。
僕はポップコーンとドリンク付きの鑑賞チケットを買っていたのでそれを差し出し、娘のリクエストしていたチーズソースのナチョスも一緒に注文した。
ところで、
僕は映画の時に食べるこのフードドリンクがとても好きだ。
テーマパークに来ている様な、特別な気分に浸れるからだ。
観る映画によっては控える事もあるけれど、出来る限りそのワクワク感は享受していたい。
だからこそ、すみっコ映画という今回の様なタイトルはその意味でとても有り難かったりする。
ポップコーンとドリンクとナチョスが乗ったトレーを両手で抱えながら、僕たちは入場ゲートをくぐり、奥にある上映シアターへと向かう。
通路脇には、今上映している映画の、あるいはこれから上映が始まる予定の映画のパネルが並んでいる。
娘はそれらをチラリと気にしていたが、僕の手はトレーで塞がっているので、また帰る時にゆっくり見てみようか、と声を掛けた。
娘はうんと頷くと、荷物を持つ僕を気遣ってか、側の棚に並べてあるチャイルドクッションのひとつを自ら引き抜いて運んでくれた。
この子は長女に比べると、とても気が利く子に育った。
僕たちはそこに甘えきってはいないだろうか。
僕も目の端でパネルを気にしていたが、
今日で上映が終わるすみっコぐらしのパネルは、もう撤去されてしまったのか何処にも置かれてなさそうだった。
マイエレメントを観に来た時、長女は鑑賞後にそのカラフルなパネルと一緒に写真を撮った。
次女と長女。
ここでもまた、ふたりの姿を重ねてしまう。
上映シアターに入ると、先客が2組居た。
少し年配の女性ひとりと、娘と同じくらいの女の子を連れた母娘。
僕たちを含めて、皆それぞれシアターの中央寄りの席に座っている。だけど前後の列はちゃんと3〜4列飛ばしで取っていて、上手に間隔は空いてる。
僕たちはその中でも一番後ろの席だ。
席に着くと、母娘の女の子の方がちらっとこちらを振り返ったけれど、娘は気にも留めずにチーズソースのナチョスに手を伸ばしていた。
そしてそのまま、予告が流れている間に、ナチョスの大半を平らげてしまった。
好きなものはなるべく先に手をつけて、もの凄い勢いで食べてしまう次女。
これもまた、姉妹間の格差に対応する為の、彼女なりの処世術からくるものかもしれない。
謝らないといけない事が2つある。
ひとつは、すみっコ映画に対して。
完全に子ども向けの映画だとみくびっていましたすみません。
いや、確かに子ども向けの映画ではあるのだけど、大人も十分に楽しめる映画でした。ほんとうに。
もうひとつは娘(次女)に対して、
どうしても主張が大きい長女の声ばかりが届いてしまうので、君の気持ちをおざなりにしてしまっていたのだと思います。
無自覚な部分とはいえ、これは深く反省すべき事。
映画を観ながら僕は、額を地面に擦りつけんばかりの思いに駆られる。
長女のする事したい事、またはその願い。
その大きさと強さに押されて、すみっこへと追いやられてしまった次女の気持ち。
そんな幾つもの思いたちを観た気がした。
すみっコぐらしが好きな娘。
今日僕も、彼らの事を好きになった。
そして、この映画を娘と観れて本当に良かった。
映画が終わり、上映シアターを後にする。
通路に並ぶパネルの中に、やはりすみっコぐらしは無かった。
しかし、娘はひとつのパネルを見つけると、僕に向かって一緒に写真を撮って!と言ってきた。
ほんとにそれでいいの?
うん、いいよ。
そう答えると、娘はスパイファミリーのパネルの前でポーズをとった。
それは今まさに、大ヒット上映中の映画だった。
パシャリ。
今日観たすみっコ映画じゃないパネル。
それでも、
一緒に大好きな映画を観れた事は、とても嬉しい思い出になった様だった。
僕のスマホの中には、アーニャの横で嬉しそうに笑っている娘の写真がある。
その笑顔を見る度に、胸を締め付けられる様な愛しい気持ちでいっぱいになる。
映画で出会った、あの愛しさたちと同じ様に。
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