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「兼任」が組織を終わらせていってしまう。

 ところによっては「兼任(あるいは兼務)」の問題が深刻になっている。ある勉強会をきっかけに、兼任の難しさ、なぜ兼任が増えているのか、について有志と議論を行った。

 ここでいう兼任のイメージは、1人で複数のプロジェクトでの役割を持つこと。なおかつその役割の間で兼務しなければならない必然性が低いような場合の話だ(兼務したほうが効率が良くなる、然るべきケースではない)。

昔は兼任問題よりも「火消し問題」

 はじめてこの辺の事情を耳にした際、意外な思いがした。過剰な兼任の問題は、以前はそれほど顕著にはなかった。5年前、10年前と遡ってみたが、強い記憶は残っていなかった。むしろ、「火消し」問題のほうが多かった肌感だ。

 プロジェクトが炎上してきたため、単純にパワー不足を補うため、あるいは特定の専門性を提供するために唐突にアサインされてしまう。そうした火消し役はストレスやプレッシャーを大きく受けるところがあり、長期化すると疲弊する。昔は、歴然炎上プロジェクトが多かったのだろう。「火消しで駆り出される」ということが珍しくなかった。

組織のフラット化による兼任問題

 昔は縦割りが深い組織構造だったが、現代に向かうにつれて組織のフラット化が進み、それゆえに兼任問題が増えたのではないかという説が議論の中で挙がった。これは納得感がある。

 縦割り組織で兼任しようとすると、基本的にはそのためのコストが高くなる。部署を飛び越えるのは、会社を飛び越えるようなものだった。その部署間での調整は難航する。飛び込み先は別会社の様相なので、本人のストレスも相当に高い。

 組織のフラット化(縦割りの解消)は、数々の進歩を生み出したが、ひょっとしたら兼任のハードルをさげ、職務を難しくする流れも作っているかもしれない。

兼任問題に向きあうのは誰?

 ただ、冒頭であげた「兼任問題」は、大きな組織の中での、一部門内で起きる兼任のケースだという(部署を跨がらない)。それを聞いて、こちらの捉え方が変わった。

 そもそも、組織の縦割りを深め、塹壕化させていくのは(それが成り行きであったとしても)、「目の前のことだけに集中すれば特定の効率性が高まる」という発想にある。この発想自体には別の問題がすぐに伴うことになるわけだが、考え方として存在するのは理解できる。

 問題は、そうした発想の下にありながら、集中を阻害する事案を突っ込んでいくところにある。これは、「戦略上の不具合」が明らかにある。何のための縦割り、塹壕化(目の前のことだけに集中すれば良い状況作り)なのか、ということだ。

 ゆえに、兼任問題とは、現場で解決することではなく、組織課題だという立ち返りが必要だ。

「これはどういうゲームなのか?」

 問題意識が高い人は、真面目で優秀な方だったりするから、すべての問題を自分たちだけで倒そうと頑張ってしまう。縦割り塹壕問題も、兼任問題も。

 だが、兼任問題については戦略不具合なのだから、問題の引受先は組織マネージャということになる。現場に関することは現場で極力解決していく、心意気としては良いけどもそれで倒すには、あまりにも組織でやっている意義がなさすぎる。

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