四十九院紙縞

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  • 単発短編小説

    一話完結の短編小説置き場。

  • 短編連作小説『透目町の日常』まとめ

    短編連作シリーズ『透目町の日常』をまとめました。基本的には一話完結なので、気になった作品からご覧いただければ幸いです。

  • 長編小説『陽炎、稲妻、月の影』まとめ【完結済】

    記憶喪失の地縛霊と霊能力者の女子高生が、校内の心霊現象を解決していく物語です。

  • 長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】

    周囲から孤立している「僕」と自称狛犬の少女が、神社で歌の練習を通して仲良くなっていく話です。

最近の記事

【短編小説】末継将希について

幼馴染・今野悠汰の証言 「お久しぶりです。前に会ったのは、俺らが小六のときでしたっけ。ほら、あの頃は俺と将希が同じゲームにハマってて、よくお家にお邪魔させてもらってたんスよね。五回に一回くらいの頻度で将希のお母さんが作ってくれたクッキーが美味しかったの、よく覚えてます。懐かしいなあ。  ……この度は、御愁傷様です。今日は、将希の話を聞きたいってことでしたけど、具体的にはどんな話を聞きたい感じですか? ……将希の最近の様子、ですか。  そうですね……俺から見た将希は、ずっとい

    • 【短編小説】鬱で療養中の「私」が昔馴染みの雪女と雪だるまを作る話

      『雪解けのときはまだ遠く』  小学生の頃、雪が降っている日に限り、同い年くらいの女の子とよく遊んでいた。  雪が音を吸収し、世界に一枚布を被せたような静寂さが支配する世界では、私と彼女の笑い声だけが響き渡っていた。雪だるまを作り、氷柱を使ってチャンバラをし、かまくらを作り、雪合戦をした。  彼女は、少し――いや、かなり、不思議な子だった。  烏の濡羽色のような瞳も髪の色も、ただ美しいと思うだけだ。私が不思議に思ったのは、彼女がいつも、こちらが寒く感じるほど薄着であることだ。私

      • 【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #44 【完】

        最終話 今日も明日も明後日も――(2)  アサカゲさんは祠の前にしゃがんだかと思うと、その戸を開け、中から一枚の紙を取り出した。四つ折りになっていて、なにが書かれているのかまではわからない。 「祠が空っぽなのは如何なもんかと思って、仮でこれを入れてたんだ」 「……見ても良い?」 「ああ。ほらよ」  ぶっきらぼうに頷いたアサカゲさんから、仮の御神体としていた紙を受け取り、広げる。  そこには、小学生が描いたであろう、女の子と背の高い着物姿の人の絵が描かれていた。 「アサカゲさ

        有料
        100
        • 【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #43

          最終話 今日も明日も明後日も――(1) 「よお、一週間ぶりじゃねえか」  目を開けて一番に視界に飛び込んできたのは、苛立ちを顕にしている女子生徒の姿だった。 「ええと……」  あまりの怒気に怯み、俺は言い淀む。  私立境山高等学校、第二教室棟一階の廊下にて。  目の前に立つ彼女は腰に手を当て、少しだけ見上げるようにして俺を睨みつけていた。  急な展開に驚きこそあれ、それまで意識を失っていたのが嘘のように、はっきりと冴え渡っている。  だから俺は、旧知の相棒に挨拶をする。 「

        【短編小説】末継将希について

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        • 単発短編小説
          1本
        • 短編連作小説『透目町の日常』まとめ
          14本
        • 長編小説『陽炎、稲妻、月の影』まとめ【完結済】
          44本
        • 長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】
          39本

        記事

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #42

          第5話 呻く雄風――(12)  とても幸福で温和な時間に浸っていたいところだが、いつまでもこうしているわけにもいかない。 「さてと。時間もあんまりないし、後片づけしよっか」 「は? 時間?」  疑問符を浮かべたアサカゲさんに、敢えて回答はせず、俺はついっと人差し指で円を描いた。  三年五組の教室で発生した風は、そこに居る三人を優しく抱え上げると、グラウンドへと運び出す。始めこそ悲鳴を上げられたが、害がないとわかるや否や、アトラクションに乗っているように楽しんでくれた。同時に

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #42

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #41

          第5話 呻く雄風――(11)  ごうごうと唸りを上げる風の音で、俺は意識を取り戻した。  視界の端に、真っ白な白い髪がちらついている。  身につけている服は、今しがた思い出した記憶と同じ、秘色色の着物だ。  自身の身に起きた変化を確認しているうち、足が地面につく。そこでようやく、ここがグラウンドであることに気がついた。  三年五組の教室を出ようとして、あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。  状況を把握しようと周囲を見回すと、少し離れたところに〈よくないもの〉が寄り集ま

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #41

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #40

          第5話 呻く雄風――(10)  私立境山高校が建てられてから、どれくらいの年月が経った頃だろうか。  気がつけば校舎は増え、多発する心霊現象の所為で、校内の複雑化が進んでいた。  その日も俺は、生徒の賑やかな声に耳を傾けていた。  放課後に入り、部活動に勤しむ生徒の声が聞こえてくる。  しかし、その声の中に、聞き慣れない声が混じっていた。 「どこ? どこにいるの?」  それは、幼い女の子が泣きながらに発した声だった。  迷子だろうか。  慌てて気配を探る。  すると、声の主

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #40

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #39

          第5話 呻く雄風――(9)  この土地に人間が定住するようになってほどなく、俺は生まれた。  いや、生まれたという言葉は正確ではないか。神様というものは、人間の願いが寄り集まった結果、それを叶えるものとして顕現する。だから「生まれた」というよりかは「発生した」という言葉のほうが、張本人としてはしっくりくる。  ともかく、俺が土地神としてこの土地を見守るようになったのは、ここに高校が建てられるよりも、世界規模の戦争が起こるよりも、もっともっと昔、人間からしたら気が遠くなるよう

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #39

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #38

          第5話 呻く雄風――(8) 「――三人とも下がって!!」  なににも触れられない俺では、三人を遠くへ突き飛ばすこともできない。  だから俺は咄嗟に〈それ〉と三人の間に入り、せめて盾になれたらと、右手を突き出した。確かこのリストバンドには、防衛機能どころか、反撃を繰り出す魔改造が施されていたはずだ。  刹那、教室の窓が割れ、稲妻に似た閃光が走り、大きな破裂音を轟かせた。  あまりの反動の強さに、気がついたら俺の身体は床に転がっていた。思っていた数十倍は殺意が高く、俺はこの状況

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #38

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #37

          第5話 呻く雄風――(7)  翌日。  アサカゲさんは、朝からグラウンドで、封印の儀式を行う為の下準備を整え。  ハギノモリ先生は、協力してくれる霊能力者たちを出迎え、念入りに打ち合わせを行っていた。  急な午後休校となったが、生徒たちからすれば、金曜の午後が公然と自由になって嬉しそうな様子である。みんな口々にどこへ遊びに行こうかと話し合いながら、校舎をあとにしていく。先生たちが校内放送や巡回を行って、早急に下校するように促しているが、生徒の足取りの軽さを見るに、そう難航は

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #37

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #36

          第5話 呻く雄風――(6)  次の日も、事態は悪化の一途を辿っていた。  ポルターガイスト現象は増加し、空気の澱みに耐え切れず意識を失う生徒も出てきた。ほとんど紙一重な状況で授業は通常通り続けられているが、生徒にも不安の色が強く出てくるようになってきている。もうあまり時間の猶予はない。  死者の魂の通り道にある、境山高校。  その土地の空気を清浄化して守ってきた土地神。  どうにかして場の浄化だけでもできないものかと、昨日から今日にかけて、あれこれ試してみたものの、全て無駄

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #36

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #35

          第5話 呻く雄風――(5)  イスルギさんがとっくの昔に去ったあとの屋上で、俺は一人、ぽつねんと考えていた。  予想だにしなかったイスルギさんの言葉に、なにかの間違いではないかと思って聞き返しはしたのだが。 『昔から何度も会ってる人の気配はわかる。間違えてない』 『姿は昔と違うけど、気配は一緒。あなたが土地神』  というように、間違いなく俺がここの土地神であるの一点張りである。  そうして俺が動揺から立ち直れないうちに、イスルギさんは俺との会話自体が面倒臭くなったのか、さっ

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #35

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #34

          第5話 呻く雄風――(4)  次の日。  状況を鑑み、生徒の身の安全を確保する為、放課後の部活動は停止となった。  これは当然の判断と言えよう。  なにせ、〈よくないもの〉は徐々に増幅していっている。ポルターガイスト現象は頻発するようになり、それを生徒や教職員が恐怖し不安に陥り、空気はさらに澱んでいく。完全に悪循環だ。  昨日までは精々机や椅子、生徒の私物が少し動く程度だったのだが、今日になって、それらは宙に浮き、遂には窓ガラスを割るに至った。幸いにしてまだ怪我人は出ていな

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #34

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #33

          第5話 呻く雄風――(3)  土地神を探す、と宣言したものの、手がかりは皆無である。  この土地を守っている神様の癖して、社のひとつも構えていやしない。先生やアサカゲさんの記憶と感覚だけが、まだ在るのだと証明しているだけ。  だから、年々力が弱まっていったのだろう。  願いや信仰によって生まれる神様は、人間から忘れられれば、消滅はどうしたって免れない。ゆっくりと、人間からしたら気の遠くなるような長い時間をかけて、今も死にゆく最中なのだ。  であれば、仮に土地神を見つけ、この

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #33

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #32

          第5話 呻く雄風――(2)  二年四組の教室で倒れていた生徒の数は、三人。  気を失っていたことから病院に搬送されたが、全員外傷はなく、命に別状もなかったそうだ。意識が戻り次第、ハギノモリ先生が事情を聞きにいくことになったそうだが、その日のうちに病院から連絡が来ることはなかった。  しかし事情を聞くまでもなく、三人が倒れた原因は明らかだった。  教室内には、こっくりさんを行ったと思われる形跡が残されていたのである。  こっくりさん。  それは複数人で行う降霊術や占いの一種で

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #32

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #31

          第5話 呻く雄風――(1)  厄災の始まりは、夏休み最終日だった。 「おいろむ! 居たら出てこいっ! ろむ!」  午前十時、アサカゲさんの焦る声に、俺は意識を覚醒させた。  目を開けると、そこは第一教室棟一階の廊下で、すぐ近くにはアサカゲさんの姿もあった。 「ど、どうしたのアサカゲさん。ゴキブリでも出た?」  微睡む意識を強引に呼び戻したそれに、緊急を要する事件が発生したのかと思ったのだが。  そこにはアサカゲさんが直立しているだけで、妙なものは見当たらない。 「居たか。居

          【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #31