記事一覧
【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #41
第5話 呻く雄風――(11)
ごうごうと唸りを上げる風の音で、俺は意識を取り戻した。
視界の端に、真っ白な白い髪がちらついている。
身につけている服は、今しがた思い出した記憶と同じ、秘色色の着物だ。
自身の身に起きた変化を確認しているうち、足が地面につく。そこでようやく、ここがグラウンドであることに気がついた。
三年五組の教室を出ようとして、あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。
【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #33
第5話 呻く雄風――(3)
土地神を探す、と宣言したものの、手がかりは皆無である。
この土地を守っている神様の癖して、社のひとつも構えていやしない。先生やアサカゲさんの記憶と感覚だけが、まだ在るのだと証明しているだけ。
だから、年々力が弱まっていったのだろう。
願いや信仰によって生まれる神様は、人間から忘れられれば、消滅はどうしたって免れない。ゆっくりと、人間からしたら気の遠くなるような