マッキンゼーホッケースティック

この記事は下記の本を個人的に解釈して書いています。
詳細を読みたい方は以下からお願いします。

マッキンゼー ホッケースティック戦略―成長戦略の策定と実行 クリス・ブラッドリー https://www.amazon.co.jp/dp/B07YTGJ33Q/ref=cm_sw_r_li_dp_XE47YK2NKTK948MZ9TR0https://www.amazon.co.jp/

はじめに

人口減少からの既存市場の縮小とAIなどの技術革新により大胆な戦略立案が必要になっています。
一方で過去の実績は保守的に未来の計画は飛躍するホッケースティック的な計画と度重なる計画の見直しによるヘアリーバック的な成長曲線になりがちではないでしょうか?
ホッケースティックとは初期は赤を掘り、Jカーブを描いて成功するPL上の曲線のことを指し、何回も描き直すことで後から見たらPLの計画が背中の毛のように何度も曲線が生えているような状態を指します。
なぜ計画がうまくいかないのか、どうやったら計画がうまく行って何回も描き直す必要がなくなるのかそんなものがテーマになった本です。

現状

まずなぜ書き直しが起こるのかというと、株主やアクティビストの出現により大胆な計画策定が必要になっています。
一方で社内政治や保身、その場しのぎなどの抗力により計画が実行されない状態があります。
よくあるのが見られるのが過去の売上成長、業界動向、地域の多様性の変化ですが、統計的にこれらの要素は変動要因ではないことがわかっています。
企業の成長には10の要因があります。
売上(規模)、債務水準(レバレッジ)、研究投資、業界トレンド、地理トレンド、プログラマティックM&A、リソースの再分配、設備投資、生産性向上の仕組み、差別化促進
このうち、プログラマティックM&A、リソースの再分配、設備投資、生産性向上の仕組み、差別化促進がすぐに改善可能な項目です。

課題

課題が8つあり、それぞれにシフトチェンジが必要です。
①戦略的な会議が機能していない
現場の要素が多く、企業としてどうあるべきかの議論をする場がないこと。

②承認がゴールになる提案
承認=予算獲得になることから提案が承認されるまでを見た提案が多いです。

③ピーナッツバター的な投資
予定調和、これまでのやり方を継続するための投資が多いです。結果起こるのが新しい施策へ舵を切れないことです。

④予算承認
②、③に付随しますが、これまでにない大胆な施策よりも今まであるものへの予算承認が多く、リスクをとるインセンティブがないです。

⑤予算編成
抜本的に改革すればするほど全てが予定通りに行うが難しい一方で、予算をきっちり決めることで変化に対応することが難しい状態があります。

⑥事業部門ごとのリスクの議論
事業部門ごとに目標値を置くことにより、保守的な目標策定がされます。これにより、実際にはリスクへの対策が必要ないところまで保守的に策定されます。

⑦一元的な数値評価
意義のある失敗やリスクに応じたインセンティブ設計がないためのリスク許容性がない評価がされることが多いです。

⑧年次計画から1st Stepへの落とし込みの欠如
年次のざっくりとした計画は必要なのですが、ではまず何をするのかに具体性がないことでアクションが不明確になります。また数値が出ない時に実行がされたのかに評価を置くことができなくなります。

解決策

①戦略的な会議が機能していない
定期的な議題・計画の見直しが行われないことから変化に対応することができず、全体を見た時に何を議題するべきかブレることが問題です。
WeeklyからMonthlyの見直し、その上で3Yearまで見通すことが継続的に必要になります。

②承認がゴールになる提案
一番話すべきは承認されるであろう提案に対してではなく、会社としてやり直しのきかない議題になります。
業界における会社の立ち位置、戦略の前提条件についてです。

③ピーナッツバター的な投資
満遍なく投資をするピーナッツバター的な投資では軸がぶれてしまいがちです。10事業があった時に1つに絞るような集中が必要になります。
データ上この1つに絞り込むところは判断が明確なことがわかっています。やるべきは社内政治を打開し、成功確率に応じたインセンティブ設計をすることで意義ある失敗を認めること、ポートフォリオを比較することです。

④予算承認
業界動向と企業の地力により起こるであろうモメンタムケースについてではなく、目標へのギャップを埋める大胆施策への意思決定に対しての予算承認が必要です。

⑤予算編成
リソースを流動的にすることが必要になります。計画の見直しが必要になるため、予算も流動的にする必要があります。
例えば予算の80%は各施策確保するが、進捗に応じて残りの20%を再分配するなどが必要になります。これにより予算がないとできない施策に対して投資することが可能になります。

⑥事業部門ごとのリスクの議論
事業部門ごとに目標を設定することで責任感は生まれますが、目標未達の事象を嫌ってリスクを過度に評価しがちになります。会社としてどう進むのが必要かを考えるために、事業をポートフォリオとして見てリスクの妥当性について比較検討することが必要です。
絶対に必要なもの、投資するもの、リスクを分けて考えることにより会社全体で見た時のとるべきリスク、立てるべき目標を定義することができるようになります。

⑦一元的な数値評価
数値のみで見た時に実現度の観点から既存の施策が支持されがちになります。しかし成功した時にリターンが大きいのはこれまでにない施策になります。これまでにない施策は成功確率が既存に比べると低いので軽視されがちになります。ここを成功確率によりインセティブ設計することで期待値に沿う評価をすることができます。

⑧年次計画から1st Stepへの落とし込みの欠如
年次の比較的大枠の計画は方針を示す意味で必要ですが、これでは実行までにもうひと整理が必要になります。
また結果に引っ張られ実行に目が行きません。6ヶ月の動きに分解した後1st Stepを定義し、短期の結果よりも実行がなされたかのモニタリングと進捗に合わせたリソースの再分配にインセンティブを与えることが必要です。

実行方法

ではどのように実行をしていくのか。10日に分けたアクションプランがありました。
1〜2日目
kick off このまま業界動向と自社が動いた時にどんな成長をするのかのモメンタムプランを描きます。目標とのギャップから議題を洗い出します。

3日目
方針の選択肢の議論を開始します。この時点で優先度の変更があったもので議題を更新します。

4日目
会社の方向性を大きく変える大胆な施策についての議論を開始します。そしてこの時点で優先度の変更があったものの議題を更新します。

5日目
施策の中から会社としてやり直しのきかない優先度の高い議論を行います。10の選択肢から1に絞り込む議論をします。その上で成功確率の90%のものなのか、50%のものなのかを分類します。そしてこの時点で優先度の変更があったものの議題を更新します。

6日目
優先度の高い議論で実際にやるものに絞って、10の選択肢から1に絞り込むものを決定します。そしてこの時点で優先度の変更があったものの議題を更新します。

7日目
優先度の高い議論で実際にやるものに絞って、改善・成長の施策、リスクを分けて議論します。この時にポートフォリオを見た時に取り組むべき施策を決定します。そしてこの時点で優先度の変更があったものの議題を更新します。

8〜9日目
優先度の高い議論で実際にやるものに絞って、KPIの設計、主要因の分析、リスクの対策を検討した後、チームコミットを決めます。そしてこの時点で優先度の変更があったものの議題を更新します。

10日目
1st Stepで行うことを決めます。6ヶ月の詳細の計画を決めます。そしてこの時点で優先度の変更があったものの議題を更新し、10日間の成果を祝います。

まとめ
全体を通してリスクを許容して、改善の度合いの大きい大胆な戦略・施策に絞り込んでリソース分配すること、優先度の高いものに取り組みそれ以外は切り捨てる、定期的に議題の整理をすることが繰り返し見直されながら進んでいることがわかります。
現場を見た時には詳細のオペレーションを見ることの重要性がある一方それでは抜本的な計画をすることができず、ピーナッツバター的な投資とそれによるヘアリーバック的な計画の見直しを誘発してしまいます。
限られた議論の時間を使って一番必要な議題に決定を出すシンプルなやり方が書かれているように思いました。
言うは易く行うは難しなのですが、その後の実行の時間を見たらその決定で何を議題とするのか、どこまで決定するのかはかなり重要なテーマな気がしました。リスクを取り大胆な決定をすることは恐怖を伴いますが、期待値を無視した本能的な決定では変革はないということなのだろうと思いました。
何に時間を使い、何をアウトプットとして出すのか考え直すきっかけになる本でした。

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