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超常現象研究が日の目を見るには?

2014年に放映されたNHKスペシャル「超常現象 科学者たちの挑戦」。
 
番組のディレクタを務めた苅田章(かんだあきら)は著作の中で、超常現象の存在を示す兆候があるにもかかわらず、それを科学的に探究することが科学の世界でなかなか認められないのはなぜかと問います(※)。
 
そしてその理由の一つとして、超常現象をオカルトとしてはなからイカサマ扱いする偏見を挙げます。


超常現象っぽいこと言うだけで

私は唯物論研究協会というところで、超常現象を唯物論的に説明可能な物理学説として自ら提唱している理論モデル(PF理論)の説明をしたことがあります。
 
もちろん予想されたことではありましたが、全く相手にされませんでした。
 
超常現象など口にした段階でもう村八分というか、「そんなもんあり得んよ」オーラが充満する会場。
 
私としては純粋に科学的に可能性を探求しているつもりですが、あそこまで入り口を閉ざされてしまうと、さすがに苅田さんが言うような偏見のたぐいも感じざるを得ません。

宇宙論はなぜ科学?

苅田は超常現象が科学研究の場に受け入れられない別の要因として、数式で定式化される理論が存在しないことを挙げています。
 
唐突ですが宇宙の始まりを探究する宇宙論の例。
 
なかでも研究者の間で標準的とされるのが膨張宇宙モデルに基づく宇宙論。
 
そこでは私たちの直観に反し、既知の通常物質(としてのエネルギー)はほんのちょっとしかなく、大部分がミステリアスなダークマターとダークエネルギーで占められたもの、としてこの宇宙を描き出しています。
 
ダークマターもダークエネルギーも未だ正体不明。

ですがその存在は無視できない、どころかこの宇宙に存在するエネルギーの大部分はこれらで占められているだろう、とするのが観測からの帰結です。
 
そんな私たちの宇宙が、誕生直後のインフレーションと呼ばれる急激な膨張過程と「真空の相転移」(説明は割愛)、そして高エネルギー・高密度の段階を経て何億年も膨張し続け、今我々が観測する宇宙の姿になったというシナリオ。
 
これが「標準宇宙論」
 
でも、標準と言ったってそれどうやって確かめたの?
 
もちろん宇宙の始まりを直接観測するわけにはいかないし、科学研究の場でよくなされる再現実験もできません。
 
軽元素の存在比、宇宙背景放射の精密観測の結果、超銀河団や泡構造など銀河の大域的な分布の観測など、活用できる観測結果を総動員し、諸々の状況証拠を積み上げて総合した結果、今の段階ではこれが正しかろうということに。
 
そうは言いつつも、ではインフレーションモデル提唱者にノーベル賞与えますかと言うと、そこまでの自信はまだなさそう。
 
苅田さんはディレクタとして以前担当したこともあるこの宇宙論が、当初は突飛すぎるとコケにもされていたものの次第に受け入れられるようになったのは、それが数式できちんと記述できるからだろう、と言います。
 
それが本当かどうかは別として、確かに様々なインフレーションモデルやその他宇宙論を語る時、科学者たちはよく数式を使って説明はしているようですね。
 
ただそれが、どれほど「きちんと」していると言えるのか?
 
裏話をすると、重力も量子効果も大きい宇宙誕生のその瞬間を、相矛盾する相対論と量子論を越えて記述できる基礎理論を、現代物理学はまだ手にしていません。
 
その意味で定式化は全く「きちんと」などしていない。

むしろ相当おおざっぱな議論にとどまっていると言えます。

議論の対象となる理論モデルを

まあしかし、おおざっぱであるにせよ数式が使われているのだから、苅田に言わせればまだマシなのでしょう、そこまですら至っていない超常現象研究に比べれば。
 
「美しい数式によってその存在を理論的に記述し、証明すべきターゲットを定義することがまだ出ていない」のが、本流科学との決定的な違いであり多くの科学者に異端視される原因だ、とは苅田の言。
 
生物物理学者の小久保秀之は、植物の生理反応に与える人の念の影響など、いかにも一般の科学者からマユツバ視されそうな数々の実験を行ってきた実験超心理学者ですが、その彼もこの分野は、実験はよくやれているけれども、理論が全く追いついていない、と嘆きます。
 
数式で表現できるから厳密という訳ではなく、ましてや正しいことの証明になるわけでもない。

しかし現象の背後にあるメカニズムを洗い出すのに、検証対象となる理論モデルが存在しない、というのは科学研究としては痛いのは間違いない。
 
この意味で、超常現象、特にテレパシーや透視、念力など人の認知活動が絡む超心理現象を「数式を使って」描出する私の理論モデル、その成否判定のターゲットを明示する格好の材料となり得るとは言えそうだなと思うのですが、どうなのかな?

(※)「NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦」、NHK出版、(2014)

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