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弱気につけ込む罠に心理的防御を

ある医師曰く
「がん患者の多くは、医者からもらう薬以外に何種類もの、ときに非常に高価なサプリメントを、医師に内緒で飲んでいるのが現実です。」

患者当人とその家族からすれば、心情はよく理解できます、私もかつて経験しましたから。

第四の選択肢「免疫療法」

がんの標準治療としては、1)手術、2)放射線治療、そして3)薬物療法がその主たるものとしてよく知られたところでしょう。

それに対し近年、免疫療法が特に代替治療の界隈で取りざたされているようです。

「免疫力アップ」をキーワードに、様々なサプリが売られ食事の作法が伝授されていますが、医学的には口にするものでそれほど免疫力が簡単に上がったり下がったりするものではないようです。

免疫療法自体は実在します。
効果が認められ保険も適用される免疫療法は以下の四つ。

1)免疫チェックポイント阻害剤
2)サイトカイン療法
3)BCG療法
4)エフェクターT細胞療法
(桑満おさむ「”意識高い系”がハマるニセ医学が危ない」、扶桑社BOOKS(2019)
免疫療法もっと詳しく
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02html

1)~3)は免疫細胞に対するがん細胞の攻撃を抑える防御的療法、4)は免疫細胞のがん細胞への攻撃力を高める攻撃的療法、ということです。

保険が適用されるのはこれらの療法に限られ、それぞれの療法ごとに効果のあるがんの種類も限定されます。
ガイドラインは日々更新され現場の医師に共有されています。

公開された情報と治療方針のもと、しっかりと医師との意思疎通を図り、場合によってはセカンドオピニオンも活用しながら納得のいく治療を受けることが重要です。

それは魔法ではない

本庶先生のノーベル賞受賞でオプジーボ(免疫チェックポイント阻害薬の一種)が多くの人の知るところとなり、いきおい免疫療法の魅力が独り歩きし、代替治療屋の格好のターゲットになっているようです。

しかし、繰り返しになりますが、効果の確かめられた免疫療法は上述のものに限られます。

よく聞く、体温を上げれば免疫力が上がってがんが縮小とかなんとかなんてのも、残念ながら医学的根拠はなし。
まぎわらしいのですが、これはハイパーサーミア(温熱療法、標準治療の一種)とは別物です。

何とか直したい、その一心でできることは何でもする、と。

すがる心に応えている部分があるので、すべてが否定されるべきではないでしょう。

しかし問題なのは、例えば免疫力云々で売られているそれらサプリの中には、明らかに悪質なものがあるということ。

高価、効かないにとどまらず、中には安全性に問題があるものまであります。

さらに問題なのは、それらに頼り信奉するうち、本当に有効な医療機会を失ってしまう事例がある、ということ。

標準治療に不当な評価を下し、逆に売りたいもの(サプリなど)がいかにも効果てきめんであるかのように描出する。

何とか直したい患者やその家族の心にそれらの言葉はいとも簡単に刺さるでしょう。
そうなるともう、是非もなく。
本来治る可能性もあったものでも、そのチャンスは永遠に奪われるでしょう。

事実、手遅れの状態になってから病院の門をくぐる患者が後を絶たない、と桑満おさむ氏は嘆きます。

メタ認知で助かる可能性を最大化

通常は理性的で論理的思考を行う人でも、自分や家族が重病になったとか、何らかの要因で深く落ち込んだ時などには精神的に不安定になり、普段は行わないような不合理な判断・行動をとり得ます。

誰でも理性が揺らぐときがある、ということを頭に入れておいた方が良いでしょう。

それはいつ起こるのでしょうか?

健康問題でしょうか?人間関係のトラブルでしょうか?時間に追われている時でしょうか?

冷静さを失った時、「今自分は冷静さを失っている」と気づけるかどうかがポイント。

「今、自分は理性を失いかけているかも知れない。気を付けよう。」

自分へのこんな問いかけ、第三者視点でのメタ的な問いかけが役に立ちます。

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