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4つ隣の部屋で火事が起き、ひと部屋丸ごと燃えた

火災については死者・怪我人なし、アパートの一室が全焼。
これを書いている自分は、持ち物も全て炎からは免れました。部屋はいまだにすこし焦げ臭い気がします。

火事からしばらく経ちました。この火事は特にニュースにもなっていないようです。当日〜翌日に書いたメモが残っていたので、若干修正を入れ、基本その時に書かれたものをほぼそのまま出しました。



・深夜1時ごろ

・シャワーから出ると、浴室の外からアラームのような音が 最初はiPhoneが鳴ってるのかと思ったが違い、よく耳を澄ますと玄関の外からで、火災報知器っぽい

・とりあえず外に出ても最低限寒くなさそうな服とコートを着て玄関外を覗くと、近所の方が2人ほど廊下に出ている 同じ階で3〜4つとなりの角部屋が発報箇所らしい お兄さんがドアを叩いているが中からは反応がなく鍵もかかっている

・念のため財布を…髪濡れてるし…と部屋に引っ込む カバンに財布とカギとモバイルバッテリーを詰めて、髪乾かす前に一応…ともう一度ドアを開けると、角部屋のドアから煙が出ており「これはマジだ!」とそのまま玄関の外へ

・近所の方の1人が119に電話をしているのが見え(自分は119の存在が完全に頭から抜けていた)もう1人が他の部屋のドアを叩いて「火事だー!」と叫んでいた 自分もその人に続いて叫びながら同じ階のドアを叩いて回る 発火元の部屋のドアから溢れる煙がだんだん増えてくる

・真上の部屋の人は…?とひとつ上の階へ走り、インターホンを鳴らしながらドアを叩きまくる なんと火災の真上の部屋の方が出てきた ひとつ上の階にもだいぶ煙が上がって来ていたのでこれ以上留まるのは危険だと判断して、その方と一緒に階段で外へ避難する 自分の階をさっと覗くとすでに煙が充満していた

・外へ出ると、すでにかなり多くの人が避難しているよう 外から火事だー!と叫ぶ人がいる ベランダ側がひらけていたのでそこに住民が集まっており、出火元の部屋も見え、窓から黒煙が上がっているのが確認できた

・消防車とパトカーが到着する みるみるうちにホースが伸ばされてベランダ側からの放水が開始される 到着はめちゃくちゃ早かったように思う その時には、窓から炎がちらついて見えていたほど、その部屋の火災は大きくなっていた

・女性3人で固まっていたところ、男性が「やあ元気?じゃあ行こっか?」と急に話しかけてくる 面識がなかったので無視をしたがしつこく話しかけてきて、消防隊の方が「お知り合いですか?」と聞いてくれた しかし男は「えーっと、〇〇ちゃんしょ!おひさ!」的なことを言い、1人の腕を掴み連れて行こうとした(後で聞いたらもちろん全然違う名前だった)
周りで聞いてた方かわたしかどちらかが2人の間に割り込むと(この辺の記憶は曖昧)無言で去っていった あとでその男性が警察官に取り囲まれているところまでは見かけた

・警察官が当該階の住民が逃げているかの確認をしていた 当該階なので確認に応じる 何人ですか?と聞かれて最初戸惑ったが、同じ部屋に住んでる人数の話だった ひとりです

・炎は衰えることなく、窓から火が溢れて上の階のベランダまで焦がしていた 一緒に逃げた上の階の方から「寝ていたので、ドアを叩いてくれなかったら気がつかなかった」と伺う 確かに自分も最初は火災報知器と認識できなかったし、寝ていたら気がつかなかったと思う

・だいたいみんな着のみ着のままで逃げてきており、ほぼ部屋着みたいな人もいた 1月初旬の深夜なので外は冷え込み、震えている人も多かった

・火の勢いが衰えないのでこれは自分の部屋も燃えるかもしれないと思い、実家にLINEを送る 家族が起きていて最後までチャットしてくれた 写真を撮っていいものか憚られたが、結局3枚ほど撮影しLINEで送った

・ぽん、ぽんと何かが弾けるような音がする そのたび黒煙がうねる これくらいの時、出火した部屋のベランダで部屋主が助けを求めていたらしい 自分はその姿を見なかったが、彼は何らかの形で無事保護されたらしい

・部屋の中から水が飛び出してくる 内側からの放水が始まったようだった もくもくと上がる黒煙と天井を舐めるように焼いていた炎が、みるみるうちに小さくなっていった

・やがて炎は見えなくなり、黒煙は白く変わっていく

・出火元の真上の階の人は薄手の上着に部屋着とスマホだけで逃げており、手を繋ぐと震えていた 自分は小銭を持っていたので、近くの自販機で温かい飲み物を、と提案したが、自販機の前を消防士が行ったり来たりしたりして、買うタイミングを完全に失ってしまった

・白い煙が細々と吐き出されるようになった頃、改めて消防士と警察官による各階の避難者点呼が行われた 出火元の階は、燃えた部屋の隣が来ていなかった

・同じ階の人たちと話をした 3年住んでいるが、初めて見るような、エレベーターで顔を合わせたことがあるような、そんな人たちだった ドアを叩きながら叫んでいた隣人に感謝を述べた、自分はそこまで頭が回らなかったから、と ドアを叩いたあとに出てきたふたつ隣の住民は、おふたりが騒いでなかったら気が付かないところでした、と言っていた 騒いで良かった

・同じ階の井戸端、もといポンプ車端会議 先ほど腕を掴まれた女性の話をすると「僕、目の前にいたのに、知り合いだと思ってスルーしちゃった!」と謝られた 謝る必要はない、がこんな時にもそういうことがあってしまうのだなというのが分かった

・白い煙もほぼ見えなくなってきたところで、消防士の方が、安全確認のためもう少しだけお待ちください!と住民に伝えた 真上の階の人が個別で呼ばれて行く 真下や斜めの人も 放水時の水や、煤、ガスなどの確認のためなのだろう ポンプ車のそばには旗とテーブルが設置されているように見えた あそこが現場検証の最前線だったのかもしれない

・消防士の方が「もう大丈夫です!まだホースが残っていますので、足元に十分気をつけてお帰りください」と我々を誘導しだした 階段を太いパイプがうねっていた

・真上の人は戻ってこなかったが、あのあとどこで眠ったのだろうか 実家に連絡をしたと聞いたが、どうなったのかは分からず、次の日も部屋は無人のように見えた

・自分の部屋の前に着いたが、なんとなく入るのに躊躇いを覚えた 周りをみると、今日初めて出会った隣人たちと目があった お互いに、火事の後の挨拶なんて習ったことないよ、といった顔で、ぎこちなく、お疲れ様です、おやすみなさい、と小さくお辞儀をして、各々の部屋の玄関を開けて入っていった

・部屋の中は若干焦げ臭いような気がした ベランダに服を干しっぱなしにしていたので取り込むと、途端に部屋中が焦げたにおいでいっぱいになった 服に焦げ臭さが染み付いていた

・時計を見ると、発火からおよそ2時間程度かと思われた すべてもう終わったように思えたが、ベランダの外からは消防車の赤いランプがいまだチラつき、玄関の外はたくさんのひとの声で騒がしかった



今回の火事における反省
・「東京防災」を熟読しておくべきだった

・まあ大丈夫だろう、の正常バイアスに見事に引っかかった 逃げる前に髪を乾かそうとは言語道断すぎる

・非常用持ち出し袋を準備しておくべきだった 財布などをモタモタとカバンに詰めてはいけない 今回は延焼まで猶予が若干ある段階で火災に気がつき、持ち出すものを多少手に取っても逃げることができたが、場合によってはそのまま煙に巻かれて死んでいてもおかしくない すぐ手に取って逃げられるように、枕元に持ち出し袋や必要な物を固めて置いておくべき もしくは物を諦めて即逃げる思考を持つ

・119が頭から完全に抜けていた、また叫びながらドアを叩いて周りに火事を知らせる、という行為にまで考えが及ばなかった

・煙を防ごうと思い至らなかった なんならこれを書いてる時に「煙、危なすぎたのでは?」とやっと気づいた 咳き込んだり、喉を焼かれて走れなくなったりすると習ったが、特に口元に何もせず避難したのはよくなかった

・火事場泥棒のようなものへの警戒は必要だった これは反省というより、本当にそういうものは出現する、という知識を実体験として得ることができた、と捉えることにする

・温かい飲み物は、そっと買って何も言わずに渡すのが1番かっこいい


火災の翌日
・翌日、というより落ち着いてから3時間程度で、出勤のために起きた 今度のアラームは間違いなくスマホだと何度も確認してしまった 自分自身が焦げ臭いかどうかはもうわからなかった

・玄関を出ると、真隣に警察官が立っていて結構な悲鳴をあげてしまった 現場検証はまだ続いていた 警察官は「よく眠れましたか、出勤お疲れ様です」と優しい声で話しかけてくれた 「寒いのでお気をつけて」とだけかろうじて発声し、エレベーターへ「エレベーターはまだ動いてないですすみません!」「あっすみませんありがとうございます!」 煤けた階段を降りて、会社へと向かった

・会社で隣のデスクの人に火災のことを話した 自分はいつもよりだいぶテンションが高かったらしい ほぼ眠れておらず、興奮状態がおさまっていなかったのだと思う 「なんで今日会社来たんですか?」と言われたが、玄関先はまだ人が往来しているし、部屋にいても焦げ臭いしで全く落ち着かないから家を出るしかなかったと思っている

・休み時間、Twitterに火災のことをつらつらとツイートする 鍵垢で、もちろん住所が割れないように…と言いたいところだが、怪我人も出ていない深夜の火事はニュースどころかツイートひとつ見当たらないので、特定されるには至らないのではないか 何が起きたのか、その時に何を思ったのか、記憶が混濁しないうちに残しておかないといけない

・この文章も火災の翌日夜に書いているが、すでに少し前のツイートと若干齟齬が出ている 人間の記憶なんてこんなもんだということがよく分かる

・帰り際、大荷物を持った住民が、火災の隣の部屋に入っていくのを偶然見かけた 点呼の時にいなかった部屋だったが旅行だろうか 帰ってきたら焦げ臭く水浸しであろう部屋のことをどう思ったのだろう

・取り込んだ服がどうしても焦げ臭いので、袋に詰めて捨ててしまった ついでに溜まりに溜まっていたゴミも全て一掃する ここに火がついていたらよく燃えていたことだろう

・冬服や下着を半分ほど失ってしまったので(元々手持ちがとても少ない)明日の休みは服を買いに行くことにする

・買い物には友だちを誘い、火災のことをこのメモを見ながら話すつもりだ

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