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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ④ mao nakazawa 『magazine一服』(東京都中野区)

47都道府県から ZINE を募集している COLLECTIVE 。過去2年とも『東京』からのエントリーが少なかったのですが、 今年は申し込みの半数以上が東京で驚いております。奇しくもコロナの閉塞感が執筆や編集作業に向いていたのかもしれない。少なからず加速させたのはまちがいない。長時間 SNS に向き合うと考えたつもりになるし、わかった気になる。家にいると外的な情報よりも内的な感情が醸成されるので、吐き出したくなる。ストレスにならないようならないように。

まわりに影響されず、内側でグルグルまわって吐き出された言葉や態度は、ある種、生生しいくらリアルで、陳腐で目をそらしたくなるだろうけれど、世間の狭さも見識の狭さも、ぜんぶこれ以上でもなくこれ以下でもなくあなたなのだと言える。普段の(コロナ以前の)言葉や態度は思いのほかよそ行きで格好つけていたのだと痛感する。陳腐だろうが平凡であろうが、これがニュー・ベーシック。ニュー・スタンダード。フラットでニュートラル。なら、いまこそちゃんとカッティングエッジ。剣をペンに!

と、いいながら、東京以外の ZINE も熱望したい。

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不定期に制作している ZINE の第三号。テーマは退廃主義。

コロナ禍で『逆』に健康な体を取り戻した人も、なにが『逆』だよと憤り不健康(酒浸り)になってった人もいるでしょう。ぼくは根っからの後者なノで、コロナのおかげで心も体も肥えてしまった。

平凡な毎日。刺激のない日々。気づいたら部屋が暗くなっていて、蛍光灯をつけるの連続。今朝半分だけ吸ったたばこに火をつけ、ウイスキーを炭酸で割ってレモン汁を入れて飲む夜に、郵便や光熱費の明細と一緒に乱雑にテーブルに積み上げられた ZINE を手に取って何気なくペラペラとめくり始める。『一服』というタイトルが心地がいい。炭酸も氷もなくなって、『き』で飲むようになる頃には読破。いつの間にかバーで知り合った名前の知らない誰かと一晩飲み明かしたような気持ちになれる ZINE だ。

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ストロングゼロ線上のアリア

ZINE のジャンルを細分化していくと時々『酒』というジャンルが現れる。レトリックな言い回し、酩酊感のある写真や構成で引き込む。居酒屋トークのような対談やインタビュー、正解の見えないモラトリアムな『あとがき』なんかも特徴だ。この『一服』ももれなくここに分類される。もう一度言う「心地がいい」。酒好きは全員ストロングゼロという名の線上に立ってるいるのではないだろうかと思うほどの記事の親近感。ちょっとだけ心の弱いぼくらに寄り添ってくれるような、深い夜の BGM のような、気の利いた酒の肴(アテ)のような味わいの1冊でした。

編集長は写真もインタビューもライティングも手掛ける多才っぷり。見事。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:mao nakazawa (東京都中野区)
カメラマン・エッセイスト
1988年生まれ、東京都出身・在住。
https://www.cameranakazawa.com
【 地域の魅力 】
新宿から二駅なのに程よく下町で、人が確かに暮らしているという空気が良い。古い喫茶店や雰囲気の良いバーがあり、愉快でふざけた街。単身も多いが、古くから住む人たちやファミリーもそれなりにいて、ごちゃごちゃしていて一貫性がないところが東中野という街をよく表している。
【 地域のオススメ 】
① COFFEE BAR GALLAGE … コーヒーとお酒のお店。なぜか写真好きが集まるイカす音楽(主にジャズ)が流れる店。ほぼ毎日入り浸っている。
https://gallage.jp

② BAR SMoke salt … とにかく美味しい。バーの面白さがぎゅっと凝縮しているような店。怪しいけれどお酒への愛が溢れる店主が好き。
https://ameblo.jp/barsmokesalt

③ 日登美 … ダジャレマスターにどうしても笑ってしまう。優しいお店。
https://tabelog.com/tokyo/A1321/A132104/13013559

④ Anchor Mills Bar … 革製品の vasco というお店の裏にあるバー。バーとしてメニューは多くはないが良いお酒を抑えている。ここのパスタを夜中食べに行くのが好き。コロナ明け後、無事再開したようで嬉しい。
http://vasco-tokyo.com

⑤ 喫茶ルーブル … 夫婦が営む古き良き喫茶店。休みの日の朝ごはんはここでホットサンドを頼み、ゆったりと過ごすのが至福。
https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131901/13144581


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