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市民とつくる公園 ー 公園における市民協働の実践 #02

3月末をもって公務員を卒業された西東京市 みどり公園課の元職員 高井譲さんの元には、市民協働についてのアドバイスを求める問い合わせが相次いで寄せられているそうです。高井さんに伺う「公園における市民協働の実践」、連載第2回は公園づくりに関するお話です。

▼第1回の記事はこちら

新しい公園の整備や既存公園のリニューアルなどに際して、市民の声を取り入れたり、計画の合意形成を行うプロセスは必須と言えます。そして市民“協働”ではさらに一歩踏み込んで、市民の皆さんがより主体的に公園づくりに関わることが求められるでしょう。連載第2回では、そんな市民協働による公園づくりについて、西東京市での取り組みをご紹介していきます。

実践04:市民と議論を積み上げる

西東京市では、新たに「ひばりが丘さくらの道公園」を整備するにあたり、市民を交えたワークショップを行ったそうです。

高井さん:公園を作る際、よくあるのは役所側が整備計画を3案くらい作って市民に提示し、「どれがいいですか?」と選択をしてもらったり、その案に対する意見を求めるような手法です。しかしそれでは、市民の声を十分に反映させることは難しいと思います。
西東京市では、まず役所がその公園の基本コンセプトを提示します。「ひばりが丘さくらの道公園」の場合は「みどり、健康、市民協働」の3つでした。そして、それをもとに市民の皆さんとワークショップをやっていきます。
最初のワークショップでは、市民の皆さんからアイデアが山のように出てきますが、それを全部実現するのは難しいということも市民の皆さん自身には分かります。ですから、自ずと優先順位をつけながら協議しまとめていくのです。協議の内容やアイデアを元に、基本設計を2案作成し、2回目のワークショップで提示します。そしてさらに話し合いを行い、3回目の市民懇談会で基本プランが決定まりました。

↑ 市民ワークショップで整備された、ひばりが丘さくらの道公園

行政主導で計画を作成するのに比べて、市民の皆さんと話し合いを重ねながら進めていくと時間がかかる印象もありますが、高井さんによればそれもやり方の問題とのこと。

高井さん:時間がかかるというのは、最初に結果を提示してしまうことで、反発が起こってしまったり、異なる意見との調整をする必要が出てきてしまうためです。
ひばりが丘さくらの道公園の例のように、コンセプトをベースとして市民の皆さんと話し合いを積み上げていくことで、議論の手戻りも起こらず、限られた時間内で結論にたどり着くことができます。

↑ 子どもたちが自ら選んだロープウェイは大人気とのこと

実践05:迷ったら市民の中へ

特定の公園の整備ではなく、広域での公園配置計画を作ることも、まちづくりの中では大切です。高井さんはそれまで経験の無かった公園配置計画に臨むにあたりどうしようか悩んで、市民のみなさんを頼ったのだそうです。

高井さん:公園配置計画の策定にあたり、公園の実態調査をすることにしたのですが、色々迷っていたので、その事前の懇談会で市民のみなさんにご意見を伺いました、すると、とてもたくさんの声が集まりました。やはり「公園のことは利用者のみなさんがよく知っている」ということをあらためて思い知らされました。

↑ 付箋に書き込まれた公園に関する情報の数々

高井さん:公園の実態調査にも市民のみなさんに関わっていただきました。平日、休日、朝、夜間など8つの条件で公園の利用状況や公園に配置しているものを調査するという、とても大変な作業だったのですが、20代から70代まで40人ほどの方が参加してくださいました。このように実態調査の段階から主体的に参加していただくことで、市民のみなさんと行政側の基本的な視点は変わらなくなります。ワークショプでも、とても建設的な議論ができました。

↑ 公園フィールド調査

↑ 実態調査のワークショップ

そして公園実態調査で得られたデータをもとに、公園市民懇談会や市民のみなさんとのワークショップなどを行いながら公園配置計画が作られました。

「健康」応援都市における公園づくり
①大きな公園は個性を活かしたリニューアルをしよう
②公園空白地区には新たな公園を設置しよう
③老朽化した公園施設等はニーズに合った更新をしよう
④市民や民間と協働して公園づくりを進めよう
⑤小規模公園や緑地を魅力的に使いこなそう
⑥財源の確保の方法を工夫しよう
西東京市公園配置計画(案)より引用)

#02のまとめ

西東京市みどり公園課が取り組む公園づくりや配置計画の策定では、あらゆるプロセスに市民のみなさんが参加し、そして力を発揮されています。前回の「二人三脚」という表現にも通じますが、行政は市民の目線に立ち、また市民のみなさんには街づくりの視点を持ってもらう。こうして双方の目線を合わせて議論を交わしていくことが、協働による効果をより高めることにつながるのでしょう。


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