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日本という、このすばらしい国 その15

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

お天道様が見ているという国、日本。

私のかつての知り合いの顧客企業の一つに、セキュリティシステムを開発している会社がありした。認証技術という分野のセキュリティシステムです。その企業の開発者と話をしていたときに、最終的に人間と人間が顔を合わせてコミュニケーションをとっていく現実的な社会に限って言えば、セキュリティシステムの基本的なコンセプトは「人間性善説」で機能するが、コンピュータネットワーク社会になり、人間と人間が顔を合わせてコミュニケーションをとっていく必然性がない仮想的な社会においては、セキュリティシステムの基本的なコンセプトは「人間性悪説」で機能せざるをえないと嘆いていました。

何が言いたいかというと、たとえば企業内で発生する様々な業務データをデータベース化して、社員全員で共有していこうというシステムを構築しようとした場合、そのデータベースにアクセスできる社員を特定していく必要があります。つまりアクセス権限を付加する仕組みが必要になります。一番安上がりの方式がパスワードを入力する方式です。次がICカードを使う方式で、その次が指紋認証方式で、その次ぐらいに虹彩認証方式がありますが、どの方式にも管理者が不可欠です。その管理者が確信犯的に悪事を行うと、どんなに高度な認証方式を構築しても、セキュリティはいとも簡単に破綻してしまいます。一体誰を信じればいいのかという究極の選択に迫られます。

事実、我が国で多発している個人情報漏洩事件のほとんどの原因は、データ管理者による内部犯行です。パスワードが漏洩した。暗号が破られたという類の犯行は皆無と言ってもいいのです。データ管理者が、白昼堂々と個人情報を外部に持ち出しているのです。そこで、結論としてでてきた認証方式が、“誰も信じられない。そもそもデータを移動させることに問題がある”という結論です。

そこで日常を使っているパソコンから、ハードディスクを取り外してしまいました。USBとかメモリーカードという外部記憶装置も、すべて利用できないようにしてしまいました。いわゆる「シンクライアント」という、データを一時的にしか読み込むことしかできないパソコンの登場です。つまりデータベースが格納されているサーバコンピュータにアクセスできても、データの移動はできないのです。「見るだけしかできないパソコン」が登場したのです。サーバコンピュータとのアクセスが終了した時点で、パソコンの側には一切データが残らないのです。そのようなパソコンを「シンクライアント」といいます。人間を信用しない認証方式です。人間は、誰も見ていないという状況下では悪さをしてしまう可能性を否定できないという意味での「人間性悪説」です。コンピュータネットワーク社会での話ですが、「人間性悪説」の行き着くところは、すべてのアクセス権限の許諾業務をコンピュータに任せてしまう。人間が一切タッチできないようにしようとする認証方式の導入です。

我が国には、古来「たとえ誰も見ていないかもしれないが、お天道様はみているゾ!」という暗黙の了解(社会通念)があったような気がします。それは宗教でも法律でもない、森羅万象のすべてに神が宿っているという敬いであり畏れだったような気がします。言葉社会に文字という文明が播種されたことにより、我々は、隠された意図を記述した書物との対峙を余儀なくされました。そして今度は、言葉&文字社会に、デジタルという文明が播種されたことにより、我々は人間不在の仮想社会との対峙を余儀なくされています。

「一つを得れば、一つを失う」という物事の道理を認識するまでもなく、私たち日本人は、豊かな自然環境に位置する日本列島という風土によって育まれてきた民族です。ひとつの試みにすぎませんが、これからは日本という国に居住し、日本という風土に影響を受けて、日本語という言葉を話すようになった人間を、日本人と呼称することにしよう。日本で生まれた、両親が日本人である、国籍が日本である、ということは事実としては大事なこととして尊重はするが、たいした問題ではない。日本という国に居住し、日本という風土に影響を受けて、日本語という言葉を話すようになったということが重要な意味を持っているという、新しい文明史観を築き上げていく必要があるのではないでしょうか。(つづく)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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