道を開けろ、5年連続社内カースト最下位のパシリ社長が通る。
ぼくちんの1日は従業員に高級コーヒーを淹れさせていただくところから始まる
社長とはなんだろうか。巷にはいろいろな種類な社長がいる。
大手企業のブイブイ社長
真っ黒に焼けたイケイケ社長
おとなしそうな堅実社長
農家出身の朗らか社長
虎視眈々と売上を狙うギラギラ社長
気がついたら会社になった優秀飛び出し社長
個人事業主から法人化した努力社長
親から継いだボタ餅社長(嬉しいとは限らない)
ぱっと見普通社長(金の使い道イカれてる)
TikTokとかショート動画で「社長!」って呼ばれるインフル系社長
しゃっちょ〜もう少し安くなりませんかァ〜?ですぐ1万円にする社長
私はどんな社長なんだろうか。
なにかあればすぐ呼ばれて問題対応し、足りないものがあれば「社長、あれないですこれないです」と膨れ上がる経費に冷や汗をかき、暑いと言われればエアコンをつけ、寒いと言われれば床暖をつけ、用具置き場がないと言われれば小屋を建て、空気清浄機も導入、各デスクにUSB扇風機も準備した。年末にはサンタ社長となってオードブルを全従業員の家まで届け、クリスマスプレゼントも1人1万円分くらい渡す。バレンタインももらうがホワイトデーは血の涙が溢れ出す。出張があればメンバー全員をランチに連れ、従業員の裁量で自由に使ってもいい経費枠も与えた。月に1回は従業員同士で食事に行く時に使えるランチ補助もスタートしたうえ、正社員は週休3日、水曜休み、リモートワークOK、副業OK、休日はうちのウッドデッキのBBQに自分から遊びに来る始末。パートの時給も地域相場+200円はあたりまえ、昇給あり、交通費別、服装自由、子連れ出勤OK、肉体労働無し、シフトも柔軟に対応する。土日休み、長期休みもありだ。従業員同士もとても仲良く人間関係も良好。従業員同士でよく遊びに行くらしい。私がどこかに出張した時は全員分お土産まで買ってきちゃうし、おまけにみんなの仕事前には日本トップクラスのスペシャリティコーヒーをアイスかホットか従業員の好みに合わせて1杯ずつドリップして淹れてあげる。無論、残業も無しだ。シフトを増やしたいという声から、新しい事業まで作った。離職率は今のところ0%だ。
20代で会社を起こしここまで5年、従業員を1番にと、走り続けてきた。
褒めてくれるのは猫だけ
ここまで頑張った自分をちょっとくらい褒めて欲しいが、妻は「へーよくがんばったね(棒読み)」という感じなので、残念ながら期待はできない。
猫だけが擦り寄ってきてくれる。「おまえだけだよ〜」なんて顔を近づけたらほっぺに全力の肉球が跳ね返ってくることは2人だけの秘密だ。
言い忘れていたが、妻は副社長だ。うちの優秀なブレインだが、たまにオーバーヒートして動かなくなる。再起動に時間がかかるのが悩ましい。
さて。
改めて、私はどんな社長なんだろうか。そこまでブイブイは言ってないだろうし、多少はギラついてるかもしれないけど別にツーブロで日に焼けているわけでもない。
(ああいうブイブイ系社長は、社内でもあんな感じなのだろうか。どちらでもいいのだが)
私はどうだろう。180センチ120キロもある巨漢のくせして、みんなのために背中を丸めてコーヒーを淹れ、買い出しに奔走し、お土産を献上し、従業員のカウンセリングをし、妻の機嫌をとり、誰よりも早く起きて仕事をして誰よりも遅く寝ている。地域行事にも顔を出し、代表業も忘れない。誰よりも従業員は大切にしてきたつもりだ。
超進化。
起業して5年が経ち、今日も今日とて、何気なく従業員のカップにアイスコーヒー用の氷を入れている時に、雷が落ちるように気がついた。
これ、パシリだよな…。
ん?これ、完全にパシリだよな…
俺、パシリじゃないか!!
キラキラ社長なんてとんでもない、私は5年の歳月をかけて、見事なパシリ社長へと超進化していたのだった。
私のパシリスキルは並大抵のものではない。なんてたって、5年の重みがある。社内でのカーストもぶっちぎりの最下位だ。
でも。
意外とパシリ社長も、悪くないのだ。今回はその話をしたい。
死んだ目をした店員ってどうよ
こんなことを言うと変に思われるかもしれないが、会社というのは社長が中心になるとだめになる。
※経営論なんて腐るほどあるので、あくまでも私の意見として聞いていただきたい
例えばよくある指標として、「顧客満足度」というのがある。アンケートだったりなんだったりで数値化できたりすることもあるが、ようは「お客さんが喜んでくれているかどうか」という話だ。
お客さんの感動は想像を超えたところにあるのは有名な話だが、私はそれ以前に「お客さんを喜ばせているのは誰か」が大切だと思っている。
特にうちの会社は、BtoCの業態のため、従業員は直接お客さんに会う。
お客さんが来店した時、対応する従業員の顔が死んでいたらどうだろう。
客:すいませーん!(キラキラ)
従:はーい(死んだ目)
こんなやりとりでお客さんは喜ぶだろうか。
笑ってしまうが、これが意外とよくあるのだ。
どれだけ素晴らしい商品やサービスがあっても、提供するのが人間である以上、「提供する時の瞬間」でその価値は何倍にも跳ね上がるし、何分の1にまで下がる。
つまり、最終的にお客さんを幸せにしているのは私ではなく、従業員なのだ。
客:すいませーん!(キラキラ)
従:はーい!(キラキラ)
理想はこうであってほしい。
でも人間というのは難しい生き物で、楽しい雰囲気を出せ!笑え!ニコニコしろ!と言われたところで、その仕事が楽しくなかったり、従業員自身が幸せじゃなければ、すぐに「スン!」と冷静で冷たいもうひとりのボクが顔を出す。
そんな時にお客さんが来てみようものなら、
客:すいませーん!(キラキラ)
従:はーい(死んだ目)
この構造になってもおかしくない。
お客さんの幸せは従業員に任せる
では、従業員を幸せにするのは誰なのか。
それが私たち経営者なのだ。
従業員が幸せだから笑顔になり、対応してくれる従業員が楽しく幸せそうだからお客さんも嬉しくなり、嬉しくなってまた来てくれるお客さんを見て私も幸せになる。
つまり、
・お客さんの幸せを望む前に、従業員の幸せがないといけない。
・お客さんを幸せにするのは従業員、従業員を幸せにするのは経営者、経営者を幸せにするのは従業員とお客さん
お客さんも従業員も幸せになれば、自分も幸せになっていく。この順番を間違えてはいけないし、どちらかが欠けると、経営者は幸せにはなれない。
つまり、会社の中心は従業員であり、経営者は従業員の幸せのために奔走しなければならない。なぜなら、従業員が幸せだったらあらゆる観点から勝手に売上が伸びていくからである。
従業員がお客さんを幸せにしてくれているんだから、俺たちは従業員を幸せにしよう。
そんな若者の成れの果てがこの私、パシリ社長なのである。
よっ!あんたも俺と同じく孤独な社長だな
ところがどうだろう。ちょっと居酒屋に行ってみたら、聞こえてくるのは愚痴、グチ、ぐち。
楽しくない、大事にしてくれない、まじありえねぇ、きもい、終わってる、辞めたい、時給あがんねぇ、やる気出ねぇ、だるい、めんどい。
同級生に会ってもそうだ。同じような会話が繰り広げられる。
サラリーマン、個人事業主から法人化、社長、雇用主と、いろいろな視座を経験してきた私は、どちらの気持ちがわかるが故に、なんだかいたたまれない気持ちになる。
・みんな大事にされてないのかな。
・そりゃそうなるわ。
・でもその会社の社長が思ってることもわかるわ〜w
・もっと大事にしてあげればいいのに。
思うところがいっぱいある。
結果自分は社内パシリになったが、これまで書ききれないほどの施策をしてきた。それが従業員にどう変化をもたらして、どういうことが起きたのか、たくさん経験してきた。
この経験を、孤独と戦う世の社長戦士に発信して、少しでも楽になって欲しい。
社内の空気が悪いのって本っ当にキツイ。
死ぬほどわかる。
もはやパシリ道とも呼べるこの経験で、1分でもあの空気が薄らぎ、1回でもあの空気にならないで済むなら。
…そんなことを考えていたら深夜になってしまったので、物は試しとnoteをはじめてみた。
果たしてこんな悲壮感漂うパシリ物語を読んでくれる人がいるか、全くわからない。
でもこの日本のどこかに、あなたと同じように孤独を感じ、自分がパシられることで社内の空気が一変して売上まで上がってしまったパシリ道を極めた
男が、今日も律儀に従業員にコーヒーを"淹れさせていただいている"ことだけは知って欲しい。
あなたは1人じゃない。
孤独な男はここにもいる。
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