凪にしか漁に出てなかった僕が、台風の荒波を喰らって、一回死んだ、日
凪・nagi(風がおさまり、海面に波の無い状態のことを意味する。)
ふるさとの実家は海に面した丘の上にあり、朝起きてカーテンを開けると、目の前に広がる太平洋がいつもの優しい挨拶をくれる。
学校で辛いことがあった日の帰り道の夕方、ふと海の方に目をやると「どうしたの?」と、大らかに広く深いオレンジ色が話を聞いてくれる。
僕にとってのもうひとりの母親が、人間の母のほかに居るとしたら、それはふるさとの凪いだ海だった。
僕の人生は、海岸で波が静かに打ち寄せるような、静寂の中で流