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海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。5. 博士課程でやり残した事 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。5. 博士課程でやり残した事 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

目次

  • 日本の大学院

  • イギリスの大学院から合格通知

  • 海外大学院生活 -博士の始まり-

  • 博士課程の環境

  • その他もろもの。労働許可証とか

  • 博士の休日

  • 今思う、ベストな大学院と専門

  • 研究能力について

  • 学士課程時代からの色々な進路

  • 論文の続き

  • その後のキャリアと全体感

  • 博士課程でやり残した事

  • 研究方法論

  • 勉強とか進路とか

  • 博士は色々難しい

  • 博士のコース設定

  • 理想の大学院

  • 大学院後のキャリアプラン

  • 大学院と社会と国家

  • 博士号に対する見解

  • エピローグ

博士課程でやり残した事

今回も専門用語があって、多少難しいかもしれないが、学部教養課程でも読める事を心がけて書いている。留学や研究に興味がある人は、専門用語は雰囲気を掴んで、全体感を感じて欲しいと思う。

何か、Ph.D候補生時代で後悔してる事はある?朝のオフィスでのライコスメールチェック。会社のメールもあまり見てなかった。ライコスでPOPが仮に使えるなら、全部webにまとめればよかった。多少、プライベートと仕事を混ぜてもよかったかもね。厳格に分けすぎた。ちなみに、デスクモーニングの習慣は既にあった。

就活でも、ライコスを使ってれば、webアプリでポータブルだし、メルアドの連続性もあったし、そっちのが良かったと思う。朝食はバターを塗った食パンとブラックコーヒーだった。

多様体、非線形ダイナミクス、非線形制御の教科書と論文での勉強。非線形は多少勉強した程度。当時の専門は適応ロバスト制御理論。論文の定期観測。例えば、IEEE。自分の研究がオリジナルであることを証明するために、論文を読みまくったが、最新号を定期的に読むという習慣がなかった。博士と名乗るからには、それくらい、するべきだったかもしれない。

サマーインターンをしたら、尚可だったかも。例えば、デンソーUK、ジャガー、ゴールドマンサックスJP。家計の足しになるし、そもそも、就活をする必要がなくなる。

ノートパソコンを買うこと。中古のデスクトップPCを持っていて、Linuxを入れて使っていた。OS無しで15000円で買った。性能的にはまあまあ、いいが、引っ越しの時に機動力がおちてメンドイからノートのが良かったと思う。サマーで稼いで買えば良かった。

安宿巡りでヨーロッパ中を旅する院生。当時でも出来なくないかな。今はMacBookAir、スマフォ、テザリング、Github、zoom、Airbnbがあるから、いいよね。今なら、旅する院生もいいんじゃないかな。

デジタルラグランジアンの論文をM.Phil論文のイントロダクションか最低でもAppendixに挟みこむ事。内容はもちろん理解してるものの、指導教官の専門分野と微妙に違うから遠慮した。何のための適応ロバスト制御理論か分かりやすくなるし、その方がよかったのかもしれない。

論文のどこかでMori-Tanakaに触れて、マイクロメカニクスとは何か?合金とは何か?制御のかかった材料とは何か?の議論を20ページくらいすればよかった。そうすれば、数値実験とその考察抜きで、解析のテクニックに頼り過ぎているものの、理論的深遠性を認められて、学士課程終了後、2年でPh.Dだったかもしれない。

ちょっと、パリにでも行って、リフレッシュして、発想の転換をすればよかったのかもしれない。

全論文のLaTeXのソースコードを取っておく事。日本に戻って、どこかになくした。ハードカバーのM.Phil論文はあるけどね。

ジオシティーズでホームページを作って、ライコスのメルアド、ゴールドマンサックス宛に出した英文カバーレター、英文CV、デジタルラグランジアンの論文、適応ロバスト制御の論文、Newton-Maxwellのエピソードを初めとした、いくつかの英語で書いた論考を全世界に公開すればなお良かったかもしれない。

Webって、そもそも、そのための物だし。

研究方法論

Disturbance Observerはどういうきっかけで研究を始めたのか?研究室の机でコーヒーを飲んでいるときに突如思いついた。「あれ、observerってnominal systemの式が全く実システムと一緒じゃん。ということは、実システムをobserverで追っかけて、trajectoryが収束すれば、observerに対する制御入力は実システムに対するdisturbanceとか不確実性になるはず」。

実際、計算してみると案外正しい。解析解も2次元はすぐに出せた。

プロトタイプのレポート3-5ページを書いて、指導教官に持っていって、デジタルラグランジアンと合わせて、これで行きたいと話したら、Goサインが出た。そして、N次元、工学的には事実上の無限次元の適応disturbance observerの証明を作り上げ、M.Philが授与された。

コーヒーを飲んでもアイデアを突如思いつかなんだけど、天才なの?天才じゃないよ。まあまあ頭いいけどね。集中して、考え抜くこと。ダラダラでなくね。大抵、その場では解決策も関連するアイデアも思いつかない。その後、遊んでいる時、カフェでまったりしている時、寝起き、シャワーを浴びている最中に突如アイデアを思いつく。

研究ノート作って、何か実践したら、研究者になれるのだろうか?考察の結果、何かここ、おかしいな。こうしたらどうかな?という事は直面するはず。こういうのを仮説立案とか修正仮説立案という。仮説を立てられて、PDCAサイクルを回せれば、研究者には多分、なれるよ。簡単なようでいて、仮説を立てるのは案外普通の人には難しいらしい。検証もそう。ゼロベースもそう。それができるなら、そこはその人のエッジになるだろうね。

そもそも、研究ノートって何?ノート見開き右側だけ、時系列にその日やった研究内容と考察などを記述。グラフなどはプリントアウトして、糊付け。ヘッドラインの欄に日付とタイトルを書く。これを毎日続け、ちょっとづつ書いていく。ノートを逆から開いて、左側にタイトルをページ番号と共に、並べていく。これは見出しになる。こういうのを確か、ログっていうんだよね。ブログのログも多分、そこが語源。

これを学部3年からやれば、修士を1年で終わらせて、一段階飛び級卒業くらいはできるはず。研究者にならなくても、例えば、ビジネスの場、例えば、マーケティングでも仮説思考は役に立つ。マスターは出たほうがいいと思うよ。

注:ここが筆者が学士課程でしくった所。仮説ドリブンを知ってたら、学類3年の非線形システムダイナミクスの実験レポートを数値シミュレーションで拡張して、3年のうちに卒論書けたはず。あのレポートに数値シミュレーションの拡張と2−5ページの考察を入れたら卒論として認められて、事実上の飛び級はできただろうね。元々のレポートはたしか、LaTeXで10ページくらいあった。そして、飛び級してなくても、学類4年で修論に挑む。そういうオチかな。ちょっとおしかった。学類生は普通、仮説ドリブンを知らないはず。大学の先生方は是非、学生に教えて欲しい。

筑波には元々、非線形をやろうと思って、編入した。図書館、ネット接続環境(当時はまだ、ADSLも光回線もない)、その他、ファシリティの問題もあるけどね。そこで、上記のレポートを出す時、興味深いと思って、教授にどういう研究してるんですか?と聞いたら、研究室の案内をしてもらって、こういう事をしてるんだよ、とか、できる学生には英語の分厚い本渡して、間違い探しをやらすんだよ、と色々教えてもらった。そして、いくつか、紙に書いたお題を設定してもらって、こういう事やってみない?と夏休みの前に渡された。夏休みに取り組んだけど、当時の筆者にはちょっと難しくて無理だった。それでも、実験はAなんだけどね。

ここで、この数値シミュレーションなんなんですか?と聞けばよかった。非線形ダイナミクスの数値シミュレーション(実際は実験に近い)、なんの意味があるんですか?と聞けば、仮説ドリブンとかPDCAの概念を教えてもらえたかもね。そしたら、上に書いたような結果になったかもしれない。ちょっとおしかった。こちらのコミュニケーション不足かな。

ピエゾの存在は学類3年で知っていたから、あとデジタルラグランジアンによるスマートマテリアルシステムのモデリングに必要なのは複合材料の基礎。たしか、複合材料の単位は3年2学期に取ったから、学類3年12月からモデリングを初めて、学類4年5月くらいにモデリングを終える。その前の学類3年2学期に非線形ダイナミクスの数値実験による研究を3ヶ月して、事実上の卒論終了。

やる事は多分、数値実験と可視化によるベクトル場のヒートマップとリャプノフ関数、3次元周波数応答、線形スライディングモードと非線形漸近収束安定の比較の研究。このくらいなら、当時でもできたかな。飛び級はできなくても、指導教官と卒論はこれでいいと握っておく。残りの1年弱で非線形スマートマテリアルシステムの特徴量を取り出した低次元の非線形ダイナミクスで仮説ドリブンの数値実験を繰り返して、学類4年の1弱年で40ページくらいの英語の事実上の修士論文を書いて、修士二段階飛び級卒業。UMIST(現マンチェスター大学大学院)かUCL(ロンドン大学の一部)Ph.D課程にRA付きでフルスカラーシップで留学。ロバスト制御なら、Coventryだけど、非線形なら、ちょっと違う。本当は環境的にもレベル的にもWarwickがいいけど、これは日本からの情報収集だけでは分からない。

モデリングとダイナミクス、2つの英語の論文がそろっていたら、RAは出たかもしれない。RAは難しいんだけどね。たしか、UCLはちょっとTOEFLの点数足りないから、ギリギリかな。

飛び級修士で博士候補生なら、学振出すから筑波に残りなよ?五分五分かな。ポスドクか助手でバークレーとかマンチェスター大学大学院行けるなら、戦略的に残った方が得かもね。

ただし、全部後付。一応、書いておく。学生の参考になるかな。

今回はここで、終わり。続きはまた次回。

著者略歴

金輝俊 / Hwi Jun KIM
戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクト

ハイテクITベンチャーのProduct Manager / Chief IT Architect、Webベンチャーのグループリーダー、外資系IT企業のProject Manager 兼 Systems Architectなどを経験。会社を離れて数年後、Webベンチャーと外資系IT企業グローバル本社は、それぞれ東証マザーズとNYSEに上場した。

ファッションテックベンチャーのグロースハック室 室長 兼 システム開発部スペシャリストに。30人4部門を参謀長として指揮統括し、約10億円の株式による増資に成功。シーリズCへと導く。その後、起業。NMD Soft, Principalとして活動を開始。

社会貢献活動として、原爆の実相を伝えるためと、東日本大震災の解析のために、Nagasaki Archive、Hiroshima Archive、Mass Media Coverage Map of The East Japan Earthquakeなどの開発と一部企画に関わった。

主な著作にThe Real M.Phil Thesis: The Mathematical Foundation of Smart Material Systems / Yet Another Mori-TanakaMBA Thesis: The Modern Strategy from Japanがある。

筑波大学 第三学群 工学システム学類 学士(工学) First Class (イングランド基準。70%以上がA評価)

Coventry University大学院 Control Theory and Applications Centre, Master of Philosophy (Upper Master, Research Degree)。飛び級入学。返済義務無し奨学金付き。

主な受賞にアレスエレクトロニカ展Honory mention、経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。

詳細なプロフィールはこちら:https://www.khj1977.net/profile/

以上

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