京セラ創業者の稲盛さんの本を読んだら、仕事でいちばん大切なことがわかった
1年半ほど前、僕は仕事に漠然と行き詰まりを感じていました。
「なんかおかしいな」と思ったのは、1社目の事業が軌道にのった直後のことです。
次にやりたい事業や、目指したいことの構想はある。やる気もあるつもりだ。でも、なぜかしっくりこない。このままやっても、なんとなく途中でうまくいかなくなる気がして、実行に踏み切れない……。
自分が本当にやりたいことが、よくわからない状態になってしまったんです。
このnoteは、僕が仕事における「感情」の大切さに気づくまでの体験談です。すべての人にとって参考になるかはわからないのですが、「最近なぜかモチベーション下がってるな……」と思っている方がいたら、ちょっと読んでみてもらえるとうれしいです!
コーチングをお願いした
「このままじゃヤバいな」と思ったとき、ふとコーチングをやっている知人のことを思い出し、連絡してみることにしました。もともとコーチングには興味がなかったのですが、その人とは仲が良くて、起業前にいろいろアドバイスをくれた人でもあったので、話してみようと思ったんです。
ちょうどこの頃、僕は次にやりたいことの構想を考えていました。それを「こういうの考えてるんですよね」と、彼に共有してみました。
すると「鶴ちゃんは、なんでこれがやりたいの?」と聞かれたんです。当時の僕は、それに対してうまく答えられなかった。「うーん、、なんかおもしろそうだからですかね、、」という感じでした。
で、「それだと、人を巻き込んだりはできないかもね」と言われたんです。
ビジョンや構想には「ロジック」と「感情」の両方が必要だ。でも、この構想には感情が足りない。これでは、人は動かない。「これ、20代でそこそこ仕事がうまくいった人に、よくあるケースなんだよ」ーーそんな話をされました。
これは僕にとって予想外のことでした。
構想をもっとよくするために必要なのは「より有益な情報」や「ロジック」だと思っていたからです。「感情」ってどういうことなのか。もっと詳しく教えてもらいたい! と思って、引き続きコーチングをお願いすることにしました。
稲盛和夫さんの『生き方』を読んだ
コーチングの中で「まずはこれを読んでみて」といって渡されたのが、京セラの創業者である稲盛和夫さんの『生き方』という本でした。
若いころの稲盛さんは就活がうまくいかず、なんとか雇ってもらえたのは、明日つぶれてもおかしくないようなオンボロ会社でした。給料は遅れるし、経営者一族の内輪もめまで起こっていた。
「自分はなんて運が悪いんだ」と思い、同期と愚痴をこぼし合い、毎日「いつ辞めようか」と相談ばかりしていたそうです。
ところがそのうち、同期はみんなやめてしまい、稲盛さんだけが取り残されてしまった。
ヤバい会社にたったひとり残されたら、逆にふっきれたそうなんです。「こうなったらもう180度気持ちを切り替えて、めちゃくちゃ仕事をがんばってみよう」と、毎日研究室にこもって実験した。すると、思った以上に研究成果が上がり始めました。
そしてついに、京セラ創業のきっかけとなるファインセラミックスの開発に、日本で初めて成功しました。
それまでの僕は「心」とか「感情」が大切だということ自体、そもそもよくわかっていませんでした。知識やロジックがあれば、ビジネスはうまくいくと思っていた。
でも、稲盛さんほどの経営者でも「心」次第で、その後の人生がこんなに変化するということには驚いたし、納得感もありました。「僕はこんなふうに自分の心を捉えたことがなかったな」と。
初めて「感情」に対する課題意識が生まれたんです。
「世の中的におもしろそうなこと」の詰め合わせ
そのとき考えていた構想は「なんか世の中的におもしろそうなこと」をいろいろとかいつまんで、ガッチャンとしたような感じでした。「いろんな技術を幕の内弁当にしました」みたいな。
だから、世の中の流行りが変わったら、構想もブレていたかもしれないし、モチベーションが湧ききらなかったりしてたと思います。
昔からそういうことをやりがちだったんです。小中学生のとき、僕は「本を読まずに読書感想文を書く」人でした。ネットで本のレビューとかあらすじを検索して、あっちこっちからいい感じにとってきて一つのものにまとめる。なぜかその能力は昔からあって。
事業の構想も、その延長で考えていたことに気づきました。「これはおもしろそう、あれもおもしろそう、とりあえず全部合体だ、わーい」みたいな。
確かにそんなものを見せられたら「まあ、おもしろいっちゃおもしろいけどねー」みたいな反応になりますよね。
感情の見えない構想じゃ、人は動かない。世の中の流行りじゃなくて、自分が「いいな」と思うものはなんなのか。なぜ、それをいいと思うのか。
そこを明確にして「自分軸の構想」をつくらなくちゃいけない。
そう気づいた僕は、改めて自分自身と向き合ってみることにしました。
自分に与えられたギフトはなにか?
『生き方』のなかでも、特に印象的だった一説があります。
稲盛さんは、ファインセラミックスの分野でみずから多くの新技術や新製品を開発し、京セラやKDDIをものすごいスピードで成長させた、言わずと知れたすごい経営者です。
それだけの実績がありながら、その成果や能力は「自分のものではなく、天からのギフトだ」と思っている。たまたま自分にそれが与えられただけ。だから、その力を使って得た富はひとりじめすることなく、社会にお返ししないといけない。
実際に、京セラは創業して間もないころから、寄付や社会貢献活動に力を入れています。稲盛さん個人でも、200億円かけて「稲盛財団」をつくり、新しい技術や芸術に貢献した人を表彰していたりします。
この「天からのギフト」という考え方は、それまでの自分にはなかったものでした。
自分の知識やスキルは、自分でインプットして手に入れたものだし、その成果もまあ自分のものだよな、と普通に思っていて。
でも、自分にも「天からのギフト」と言えるような特性があるのなら、それを見つけたいなと思ったんです。
小さい頃を振り返った
そのためにやったのが「小さい頃の思い出を振り返る」ことでした。
小さい頃の体験は、いまの自分を形成する重要なファクターです。「小さい頃どんな子だったか?」「どんなことをやっていたか?」「強く印象に残ってることはなにか?」みたいな質問をしてもらって、昔の記憶を思い出していきました。
実家に帰って、親から小さい頃の話を聞いたりもしました。あとは、昔の写真や描いた絵などを見てみたり。
特に印象的だったのは、習い事のピアノが嫌すぎて泣いていたことです。小学3年性のころ、親に言われてやっていたピアノが本当に嫌で「やりたくないー!!」と号泣しながら練習していた。
自分でも忘れてたのですが、僕はこれ以来「納得できないことをやらされる」ことに、ものすごい拒否感を抱くようになったんです。
小4のときにパソコンで漢字変換ができることを知ると、学校で漢字を勉強する意味がわからなくなって、いっさい勉強しなくなりました。テストの点数が悪くて親が呼び出されたりしても、どうしても納得できませんでした。
あと、小さい頃から積み木やレゴ、プラレールが好きでした。あと、ポケモンのゲームを改造したり。なにかを作ったり、組み立てることが好きだったんです。
理不尽なことや、意味がないことをやりたくない。
なにかをつくったり、構想を組み立てることが好き。
どうやらこれが僕の根っこにある欲求であり、特性のようでした。そうやって自分の特性を掘り下げていくうちに、事業構想にも「意味づけ」ができるようになってきました。
僕は、構想を組み立てて「ハック」することで、世の中の「理不尽なもの」や「無意味なもの」を取り除いて、流れをよくしていきたいんだ、と。
これをビジネスに当てはめると「レガシー産業のDX」や「AIやブロックチェーンのような新技術で、新しいシステムをつくること」になるわけです。
自分の仕事は、世の中の「詰まり」を取り除くための手段なんだ。
そう思うと、これまでどこかフワフワしていた構想が、やっと自分のものになった感じがしました。
事業構想のブラッシュアップが、コーチングを受けた目的の1つではありました。だけど、コーチングの中で、構想の話はチラッと出てくるぐらいで、直接触れることはほぼなかったと思います。
極論、ビジョンや構想の内容って、きっとなんでもいいんですよね。
大切なのは「なんでそれをやりたいのか?」「自分のどういう特性が、どう活きるのか?」を自覚することなんだなと気づかされました。
好きなものや趣味が増えた
昔の僕は、趣味も好きなものも、特にありませんでした。ファッションもこだわりがなくて「なんか黒くてシンプルなやつで、毎日同じのを着ときゃいいよね」と思っていました。
とりあえず、ずっと仕事していたんです。
コーチングを受けたことで、自分の中に眠ってしまっていた感性を自覚できるようになりました。そしたら、趣味とかこだわりが少しずつ増えてきた。これはコーチングによる大きな変化でした。
この変化のおかげで、自分のビジョンに「感情的な部分」が足りないということも、なんとなく理解できるようになりました。これまでは本当にロジックだけだったんだなーと。
人って、別にロジックが通っていなくても「なんかめっちゃいいなー!!」と思えるんですよね。熱量や愛みたいなものがあれば、人は動くことができる。それで全然いいんです。
「仕事をいかにうまくやるか」を考え続けるうちに、そんなシンプルなことを見失ってたんだと思います。
感情で意思決定をするようになった
稲盛さんは、人の心についてこんなふうに言っています。
それまでの僕は、①の知性しか自覚できていなかったんです。でも、コーチングを通して自分と向き合ったことで「魂」や「真我」のようなものの存在も、なんとなく感じるようになってきた。
それが理解できたことで「自分の内側から湧いてくるエネルギー」を、ちゃんとコントロールできるようになってきたんです。
これまでは「おかしいな、なんかモチベーション上がらないなー」としか思っていなかった。でもいまは「これは自分の感性とか魂に響かないトピックだから、エネルギーが湧かないんだな。じゃあ、事業としてはやらないほうがいいな」みたいに判断できるようになりました。
逆に「こっちのほうがワクワクするから、こっちにしよう」という決め方もできるようになったんです。
最後の最後はロジックじゃ決められない
「感情」の大切さに気づいたのは、やるべき仕事のステージが変わったからというのも大きいと思います。
1社目がある程度うまくいくまでは、とにかくがむしゃらに働いていました。AI人材育成のためのeラーニング事業だったのですが、大企業を相手にしたサービスだったので、いろんな立場の人から合意をとらなきゃいけなかったりしました。
そういう仕事をするときは、やっぱりロジックが必要だったんです。
意思決定も、ほとんどロジックだけで片付けていました。「あれもこれもロジカルに判断しなきゃ」と思っていた。
でも、最近はわりと「気合とノリ」で意思決定するようになりました。
いま経営陣の会議に上がってくるような案って、たいていどれもロジックは通っています。ぜんぶ正しいんです。そうなると「どれでもよくね?」となって、なにを選んだらいいかわからなくなってしまう。
「これ、もうロジックの問題じゃないな」と気づいたんですよね。
コーチングを受けてからは特に「どれでもいいなら、おもしろいほうでいいんじゃね?」と思えるようになりました。「こっちの方が、自分的にエネルギーが湧くからいい気がする」という感じです。
仕事の「意味づけ」を変えてみる
心のエネルギーが出るかどうかは、仕事の「意味づけ」ができているかどうかで大きく変わります。
僕の場合も「これは自分の特性を活かせることなんだ」と気づき、意味づけができたことで、おなじ事業構想でも捉え方がおおきく変わりました。
たとえば、いつもの仕事に速度制限をつけてみるだけでもいいんです。「普段は10日かかるものを、3日でやってみよう」とするだけで、違うゲームに変わります。
他にも「自分は1ミリも手を動かさずに、他の人に同じクオリティーで仕事をやってもらうにはどうしたらいいかを考えてみよう」という意味づけをしたら、また別のゲームになります。
仕事の意味づけはいくらでも変えられます。だからまずは「どんな意味づけをすると、自分はテンションが上がるのか?」を考えてみるといいかもしれません。
仕事のマンネリ化を乗り越えるカギは「感情」だ
仕事のやり方がある程度わかって、ロジカルに正しく判断できるようになってくると、どうしても仕事が「こなすだけのもの」になっていくんですよね。
やり方をわかっているから、簡単に正しい答えがわかってしまう。そうすると「あとは誰かがやっといてくれないかな」「これ、なんで自分がやってるんだろう」と思えてきて、ワクワクできなくなってくる。
だけど、毎日忙しいし、やらなきゃいけないことは増えていく。わかりきったことを、ひたすら大量にこなすだけ。同じところをグルグルし続けるような感覚になる。
そこから抜け出すには、自分の特性を深掘りして「武器」にしたうえで、それをどう展開していくかを考えないといけません。
自分の武器を知り、自分なりのゴールを設定し、そこから逆算して、目の前の決断をしていく。自分の武器がハッキリすると、ひとつひとつの意思決定に必然性ができるんです。
だから迷わなくなる。ロジカルなだけだと、案外迷ってしまうんですよね。
特にこれからの時代、ロジックはもうAIがぜんぶやってくれます。人間は「これがいい」と心から思えることをやる。愛や熱量や感情による意思決定。これがビジネスにおいてもどんどん重要になってくると思います。
そうやって、シンプルな心にしたがって仕事をする人が増えていけば、世の中もどんどんよくなっていくと思うんです。
最後に稲盛さんの本から、好きな一節を。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
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