ダウンに穴があいたら、妻と結婚して良かったと思えた話
この冬は寒さが厳しく、通勤時にはダウンが欠かせませんでした。
ダウンはとても暖かく、フードもついているのでどんなに寒い日でもへっちゃらでした。
それが今日、電柱の金属部か何かにひっかけてしまい、腕のところが破れて穴があきました。
「ああっ・・・!穴があいちゃった・・・」
数秒の間落ち込みましたが、そのあとすぐにこう思いました。
「妻と結婚して良かった」
3年前、妻と買い物にきた私は頭を悩ませていました。
冬に着るダウンを探しにきましたが、どちらを買うかの選択にかれこれ30分以上かけていました。
ひとつは3万円のダウン、もうひとつはブランドものの20万円するダウンでした。
私の気持ちは20万円の方になびいていました。こっちの方が暖かい気がしたし、見栄えがいいと思えたからです。
「10年着ることを考えたら、こっちのダウンでもいいかなぁ」
高いダウンを買う理由をとにかくかき集めている私に、妻はこう言いました。
「あっちの安い方でいいよ。ここは雪国じゃないし、あっちだって充分あったかいでしょ?」
妻の一言で何やら毒気を抜かれた気がして、私は3万円のダウンを買うことにしたのです。
それから3年間、雪が降るような日でも私は何不自由なく暮らすことができました。
今回そのダウンに穴があいたわけですが、これが20万円のダウンだったら、今の何倍も落ち込んでいたんじゃないかと思います。電柱を蹴飛ばして、家に帰ってもイライラして、妻にひどいことを言っていたかもしれません。
妻の判断は正しかった。
怒りや悔しさよりも、そう思えたことがなんだか嬉しくて、穴のあいたダウンでニコニコしながら歩いていきました。
まだ妻には伝えられていませんが、どんな反応をするか今から想像をするのも楽しいです。
ひょっとしたら穴が目立たないように縫ってくれるかもしれません。
そうしたらきっと腕にはみすぼらしい縫い目ができるでしょうが、私はその縫い目を「幸せ」と言える気がします。
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