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「自分の影響力に自覚的になりなさい」ー自分と世界との関係性の本だった。『リーダーシップに出会う瞬間』(有冬典子著)


『リーダーシップに出会う瞬間』は、自分の人生を愛をもって十全に生きようとすることと世界との関係の話だと思った。

「わたしを生きる あなたと生きる」というのが、著者の有冬典子さんが大事にしている言葉だという。

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自分を愛することは、実は、そんなに簡単ではない。

「誰だって自分のことは愛している」というのが、よく言われるように思うけど、そうではないと思う。

自分を愛することと、自分のエゴを守ることは、まったく違うことだからだ。

エゴは、生きている以上、持っていて仕方のないものだ。傷つけられそうになれば、相手を攻撃したくなったりする。だけど、それは「自分を愛している」からそうしているのではなくて、ただの防御だ。

自分らしく生きていこうとするなら、知恵を使って、相手とどうしたいか、話し合いたいか、避けたいか、それとも本音で語り合おうか、など決めるだろう。

自分を愛するとは、エゴのままに動くことではない。欲望や恐れにハンドルを奪われることなく、自分の弱さや醜さも見つめ、それを含めて愛するのだ。

自分を愛するには、成熟度が必要だ

そして、それができてこそ、他人を愛することができるのだろう。

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「わたしを生きる」を実践するには、自分のエゴに振り回されず、本当の願いにアクセスしなくてはならない。

有冬さんのいう「あなたと生きる」というのは、具体的な誰かの話ではなく、彼女が世界と「ともに」どう生きていくか、という覚悟の言葉なのだと思った。

その境地が「慈愛」なのではないだろうか。

そして、その「慈愛」の実践が、この本を出すことだったのではないかと私は思った。

この本では、有冬さんが学んできたことが、惜しげもなく出されている。

(有冬さんは、様々なことを意欲的に学んでいるけれど、特にこの本のあとがきで書かれているのは、成人発達理論を学んだことだ。

「成人意識の発達理論研究所 ACdT Lab」では、基礎理論にとどまらず、マスターコースやファシリテーターコースまで修了されたという。そんな真摯さでひたむきなところが、この本をロングセラーにし、全国に彼女のファンを作っている理由だろう)

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さて、ストーリーは、青木という30歳の女性主人公が、昇進の声をかけられるところから始める。「いい子」でいることに慣れていた彼女は、自分はリーダーになるのに向いてないのでは、と思う。

夫との関係でも、つい「いい子」を演じてしまい、自分の本音に向き合うことをしてこなかったのだ。だけどある日「自己犠牲は保身だ」と彼女は気づき。。。

主人公の青木さんの眼を通し、私たちは、疑似体験をしながら、まるで自分の目の前に、様々な登場人物があらわれているように感じる。

つまり、私たちは、青木さんと一緒に経験しながら、学びの旅に出ることができるのだ。

一緒に悩み、苦しみ、でも希望を持つことのできる旅へ。

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この物語において、悪人は出てこない。

特に、一見すると感情的な上司「小林さん」が、本当はどういう人だかを青木さんが知る場面は、とても印象的だ。

青木さんは、小林さんをジャッジするのではなく、冷静に、穏やかに、尊敬と愛をもって関係性をつくる。

人は、表面的なところでなく、本当の想いでつながることができるのだ、という例である。

私は、ここに、有冬さんの今いる境地を感じた。

読者に、これを見せた。

私たちは、この本によって、表面でなく、深いところで人とつながることのできる世界ー新しい世界の出現を感じることができる。

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主人公の青木さんは、著者自身の過去をある程度投影した存在に思える。けれど、今の有冬さんは、そのステージを超えているに違いないと私は思った。

「慈愛の境地」に行っていると、青木さんが考えるようになる「森尾さん」という人物がいる。

森尾さんの言動を、読者に納得させるように描けるのは、著者である有冬さんが、それを体現しているからだろう。

著者の有冬さん自身が、森尾さんと同じ境地にいて、それの実践として、この本を出し、その知恵を世界に分け与えたのではないだろうか。

つまり、想いを世界に具現化したということだ。

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表現とは、すばらしいものだと思う。

有冬さんの「わたしを生きる」は、おそらく執筆という表現を通して実現し、それが、他者の心に触れ、誰かを刺激する。

彼女は、この本をエゴのために書いたのではないだろう。そうではなく、おそらく、世界に、小さくでも、影響を与えるためではないだろうか。

それは、世界の何かを変えるだろう。

より美しく、私たちの世界が変わる。

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世界を変えるのは、こういう、ひとつひとつなのだと思う。

もちろん、有冬さんのような人は一人ではない。

あちこちに、世界がもっと美しいものであってほしい、人は愛をもとに生きてほしい。せっかくの人生を十全に生きてほしいと願う人がいる。

「読んだ後に行動を起こしたくなる本にしましょう」と言われたとあとがきにあった。

その通り、これを読んだ人は、知識を得るというよりも、実は、著者の有冬さんの「あり方」に影響を受けるのではないだろうか。

「リーダーシップとは影響力だ」
「自分の影響力に自覚的になりなさい」

とは、この本で書かれている言葉だけれど、まさに有冬さんは、それを実践しているのだろう。

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戦うよりも、美しい世界を可視化すること。

有冬さんは、この本で、素晴らしい世界を見せた。主人公の精神的な発達を通して、私たちは、人というものの可能性を感じることができる。

私たちは、もっとすばらしい存在になれる。人を信じることができる。もっと優しく美しい世界をつくることができる。


わたしを生きる あなたと生きる

その実践が、この本という、私たちへのギフトなのだろう。


「リーダーシップに出会う瞬間」とあるけれど、仕事上のリーダーシップに悩む人「だけ」が読むのはもったいないと思う。

仕事だけでなく、それ以外の対人関係に困っている人、悩んでしまう人。

新しい世界のあり方を考えている人。コミュニティーや組織について考えている人。

そして、自分の人生をどうやって十全に生きていくかと考えている人。

この本を読めば、多くの人が、自分と世界との関係に思いをはせるのではないだろうか。

そんな風に「自分の影響力に自覚的」な人が増えれば、きっと世界は、もっとよくなると思う。


読んだ後に「行動を起こしたくなる」。そして、それはあなたを少し変えることだ。

それは、世界を、少しだけ変えること。


『リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス』(有冬典子著/ 加藤洋平監修・解説)



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