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国境廃止 前日譚「ひとつの手記」 前編

Prologue

「α地点」。はじまりの地。
とある集落。その集落は、隣同士の集落と、長い争いを続けていた。争い、は、戦争レベルにものぼっていた。「α地点」のほとんどの人間は、銃なんて普通に持っていたし、大砲まで持っている者までいた。
昔からの伝統、とでも言おうか。伝統なんて生やさしいものではないが…。
「α地点」と呼ばれる島では、国境がなくなる前から戦争が続いていた。
理由はわからない。ただなんとなく、昔からやっていたから。そんな理由で、戦争が起こる。それがこの「α地点」。
集落1と集落2とでもしようか。ともかく、その二つの集落での戦争は、激しさを増していた。
これは、そんな中で起こった、ある男による、歴史を変える、一つの物語。

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生き地獄。一生使わないと思っていた言葉だと思っていたのに。
転がる死体。響き渡る誰かの悲鳴。腹の空きはおさまらず、飢えに苦しむ毎日。
これは戦争だ。終わりの見えない戦争。
俺が死ぬのは時間の問題だろう。そんなことは理解していた。
俺はなぜ生きている?俺の生きている意味はなんだ?そんなものはなかった。誇れることなんて無かった。
でも…
「死ぬ前くらい、意味のあることさせてくれよ……」
俺は手帳とペンを取り出した。この地獄に直面する、「あの男」とその仲間たちのために、必要な情報を書き残すために

集落1と集落2では、戦争が起こっていた。
それにはある因縁が関係していた。
「S」と「北原家」。「S」はまあ、カルト宗教の教団みたいなものだ。集落1に住んでいる(というより存在している)。
俺は集落2---つまり「北原家」の住む集落の人間だ。
その二つの集落で起きたある事件が、全ての引き金だった。
事件は簡単にいうと、宗教が絡んだ厄介な事件。
戦争が起きる前は、「S」も「北原家」も交流していた。(交流というよりかは、信仰していたと言った方がいいだろう。俺からしたら、『北原家』は『S』にどっぷりハマっていた気がする。)
仲は良いように見えた。だが、「北原家」の1番の年上---つまり、あの男の祖父にあたる男が、「S」の集会で、何者かに殺害された
そこから、「S」と「北原家」の間には亀裂が生まれた。それだけではない。
さらに、「北原家」のあの男両親も、今度も「S」の集会で殺害された。
そしてあの男は、戦争を起こした
俺はあの男の身内を殺害した犯人を知っている。
俺は見たのだ。殺害現場を
俺は「北原家」を心配していた。奴らは「S」に染まりつつあった。「S」の掲げる「誓約」は、「戦いこそ全て」。戦いをすることで、ほとんどの物事は解決する。そんな考え方だった。
馬鹿馬鹿しい。俺はそう思っていたのだが、「高市」のカリスマ性は馬鹿馬鹿しい物事にも説得力を持たせる。さすが教祖だ。
ただ俺はその考えに反対していた。俺は祖父や祖母から戦争の話は嫌というほど聞かされてきて、「戦い」というものに嫌悪感を持つようになっていたのだ。じゃんけんなんか参加しない。醜い争いが起きるだけ。全部、話し合いで解決できるはずなのに、なぜ人は戦いを求めるのだろうか。
俺は「S」の集会を見にいった。警備もろくにしていなかったので、こっそり忍び込むことなど簡単だった。特にこんな服を着てこいなんていうものはなかったようで、みんなラフな服装だった。
みんな立って「教祖」を待っており、俺も倣って立っていた。
「教祖」の高市もやってきて、「儀式」が始まろうとした時、前の方にあの男の祖父を見つけた。そこには両親もいた。あの男は来ていないらしい。
俺は奴らの方を見ることに集中していた。その時だった。

パスッ

人の命を奪うには軽い音が響いた。
そして、
祖父は倒れた。
会場はざわめきだした。俺はどうしたらいいかわからずキョロキョロしていたのだが、その時目に留まった人間がいた。
高市和人。やつは拳銃を持っていた。
「『北原家』は殺す…それが俺の使命…フフフ…」
奴はそんなことを呟いていた気がする。
高市和人はそっと会場から出て行った。俺には止めることはできなかった。後悔している。そのせいで、俺が止めなかったせいで、こんなことになったんだから…

To be continued…

参考↓
漫画
「約束のネバーランド」集英社 白井カイウ 出水ぽすか
「セキセイインコ」講談社 和久井健
小説
「さよならの言い方なんて知らない。」新潮社 河野裕
この小説は、以上の作品から影響を受けています。

こういう前日譚みたいなの好きなんですよね…一回描いてみたかったので書きました。
ほぼ引用で書いたので読みにくかったらすみません…
前日譚は次回完結です。

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