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【実体験】奨学金を1000万ほど借りて博士号を取ってみた

この記事は、大学から大学院まで奨学金を借りた人が、実体験をふまえて奨学金についてまとめた記事になります。記事は、これから奨学金を借りて進学する人、奨学金を借りる子どもを持つ親に向けて書こうと思いますので、少しでも参考になれば幸いです。なお、記事の内容は、随時アップデートしていく予定です。

この記事での「奨学金」は、主に、「独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金」を意味しています。

https://www.jasso.go.jp/

貸与奨学金=学生ローン

奨学金と聞くと、教育を受けたくてもお金がなくて受けられない人のために、お金を支援をしてくれるような感じがします。しかし、JASSOの貸与奨学金は、将来返さなくてはいけないのお金です。つまり、「借金」です。

大学から奨学金を借りるとなると、高校生の時に奨学金を借りるかどうかを判断することになります。高校生にとって、奨学金を借りること(借金すること)は理解できないのはしょうがないことかもしれません(実際に自分もそうでした)。借金であると認識ができずに、甘く考えてしまうことがあると思いますが、少しでも奨学金について理解しておいた方が、いろいろな対策を立てられるでしょう。


下記には、そのための参考情報を記載します。

奨学金に関する参考書籍

奨学金を借りずに学校に行った人にはあまりなじみのない話かもしれませんが、下記の書籍を読み進めていくと、その問題の深刻さを知ることができます。

本書では、「非正規雇用に就かざるを得ない人が増加し、奨学金を返済できずに苦しんでいる人が多くなっていること」が指摘されています。しかも、現在の奨学金制度は金融事業化しつつあり、奨学金の利子や延滞金についての取り立ても厳しくなっているそうです。

  • 生活が苦しくて奨学金の返済ができないときでも一括返済の請求がきてしまう

  • 奨学金の返済額を減額したり免除したりする制度を申請しても拒否されてしまう

そのほか、社会構造上の問題もあることが指摘されています。

  • 大学の授業料が高くなっていること

  • 雇用が悪化したり、不安定になったりしていること

  • 日本の平均年収が増えていないこと

近年は、ほとんどの高校生が、大学に進学しますし、企業は、新卒社員に大卒の条件を求めます。こういった社会構造上の問題によって、奨学金を借りて大学進学する高校生が増えてきていると考えられます。

奨学金を借りている学生の割合はどれくらい?

日本学生支援機構の「平成30年度 学生生活調査」によると、奨学金を受給している学生の割合は、大学(昼間部)で47.5%、短期大学(昼間部)で55.2%、大学院修士課程で48.0%、大学院博士課程で53.5%となっています。

https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/2018.html
学校区分別の奨学金受給希望・受給状況(平成30年度 学生生活調査より)

この調査結果より、約半数の大学生または大学院生が奨学金を利用していると考えられます。

JASSOの貸与奨学金

JASSOの貸与奨学金には、国内のものと、海外留学のための奨学金があります。この記事では、国内の貸与奨学金に絞って考えます。

国内の貸与奨学金は、国内の大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)および大学院で学ぶ人を対象とした奨学金です。この奨学金は、下記の2種類があります。

  1. 第一種奨学金(利子なし)

  2. 第二種奨学金(利子あり)

※上記とあわせて入学時の一時金として貸与する入学時特別増額貸与奨学金(利子あり)もあります。

各種の奨学金について詳しく知りたい人は、こちらをご覧ください。

奨学金を借りる時の注意点

奨学金の利率は、ほかのローンに比べて低いですが、そこが注意点でもあります。奨学金を借りると、大学卒業後には、数百万円から数千万円の借金を抱えてスタートしなければなりません。この点は、奨学金を借りてない人と大きな差を抱えて、その後の人生設計を考えなければいけませんし、ライフイベント(結婚や子育てなど)に影響が出る可能性が高くなります。

本当に奨学金を借りて大学に行くべきか、必要以上に奨学金を借りていないかを真剣に考えないと、その後の人生設計が大きく狂ってしまう可能性があります。

奨学金を借りる前に考えること

大前提として、奨学金を借りない方がいいのですが、奨学金を借りて進学する人が増えている以上、そうは言ってられないと思います。そこで、奨学金を借りて大学・短期大学・専修学校・大学院に進学するという前提で、奨学金を借りる前にやった方がいいことを考えてみました。

1.給付奨学金をもらえないかを調べる

自分が奨学金を借りた時代には、JASSOに、給付奨学金という制度はありませんでしたが、今はあります。この制度は、2020年4月からスタートしたそうです。給付型奨学金の対象者となれば、大学・専門学校等の授業料・入学金も免除又は減額されます。
まずは、給付奨学金をもらえないかを調べることがいいと思います。

給付型奨学金は、成績だけで判断されず、世帯収入の基準を満たしていれば、もらうことができるそうです。世帯収入の基準に自分が該当するかどうかは、進学資金シミュレーターによって確認できます。ただし、これは、試算によるものであるため、実際に申し込んだ場合の結果とは必ずしも一致しません。

JASSOの給付奨学金以外にも、給付奨学金がないかを調べるのもいいでしょう。下記のサイトは参考になるかもしれません。

給付奨学金と同時に、「高等教育の修学支援新制度」を利用できるかを考えてみるのもいいかもしれません。この制度は、政府が、教育格差を解消するために、2020年から始まったそうです。

「高等教育の修学支援新制度」とは?
「高等教育の修学支援新制度」は、低所得世帯の子どもであっても本人に勉学をする意志があれば大学・短期大学・高等専門学校(4年生、5年生)・専門学校などへの進学を支援するというもので、世帯年収が一定以下ならば入学金・授業料の減免措置のほか、給付型奨学金を受け取ることができます。入学金・授業料の減免額や給付型奨学金の金額は学校種によって細かく決められています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/757c2fe9cb9da3ac215bd979f01645c7275fb6d7

2.JASSOの貸与奨学金の第一種奨学金を借りられるかを調べる

上記1が無理でも、第一種奨学金だけを借りて大学に行けるであれば、第一種奨学金だけを借りるのがいいです。なぜなら、第二種奨学金は、返す際に利子がつくからです。

ちなみに、第一種奨学金の貸与月額は、こちらから確認できます。第一種奨学金は、申し込むために、学力基準家計基準などの条件があります。学力基準は、高校生活の学力や成績が基準になりますので、進学を考えている高校生は、とりあえず勉強したほうがいいです。

無利子の第一種奨学金は第二種奨学金よりも選考基準が厳しいです。第一種奨学金は、高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であることが必要ですので、3.5を目標に、成績を上げる必要があります。

学力を高めておくことと同時に、考えることがあります。それは、機関保証で借りるか、人的保証で借りるかを選ぶことです。この問題は、親とも相談した方がいいですが、相談する余地がない場合は、機関保証になると思います。

  • 機関保証に加入する(機関保証)

  • 連帯保証人と保証人を選任する(人的保証)

保証制度の比較表(第一種奨学金の保証制度より)

第一種だけではなく、第二種も借りないと大学に行けない場合は、第一種で借りられる最高金額を借りて、第二種で借りる金額を最小限にすることをお勧めします。

3.JASSOの貸与奨学金の第二種奨学金を借りられるかを調べる

これは、上記の1と2を試したけど、どちら無理だった場合や、第一種奨学金の選考基準を満たしていても、貸与金額が足らない場合を想定した方法です。この場合、第一種奨学金と第二種奨学金の併用、あるいは第二種単独での利用を検討すると思います。

この場合、一番気になるのが「利率」ではないでしょうか。第二種の返済には、利率が関わってきます。

JASSOの利率の算定方式は、2種類あります。

  1. 利率固定方式:貸与終了時に決定した返還利率が、返還完了まで適用される方式

  2. 利率見直し方式:貸与終了時に決定した返還利率を、おおむね5年ごとに見直す方式

第二種奨学金については、下記の記事がておすすめします。利率についてもわかりやすく書かれているので、本記事では割愛します。

奨学金を借りることを決めたら

上記1から3までを試して、奨学金を借りることを決めたら、奨学金貸与・返還シミュレーションを行うことを勧めます。これは、貸与総額や毎月返還していく金額、返還が完了となる時期等を試算することができるシステムです。入力することが多いですが、進学後に月々どのくらいの金額を借りて、卒業後に月々どのくらいの金額を返済しないと行けないのかを知っておいた方が、対策が立てられます。
ちなみに、自分はシミュレーションせずに借りた結果、月々の返済額を意識できておらず、卒業後の生活が困窮しました。

奨学金は早く返せるなら、早く返した方がいい

奨学金を借りたあとに待っているのは、借金返済生活です。もし、奨学金の繰上げ返済ができるなら、繰上げ返済を行った方がいいです。
下記の記事では、繰上げ返済をおすすめする理由が書かれているので、その理由が気になる方は見てみてください。

奨学金を借りる前から、返すことばかり考える必要はないと思いますが、返さないといけないという意識を持っておいた方が、無駄に借りなくて済む気がします。

筆者の体験談

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