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クラウドソーシングを使った心理調査

海外の心理学研究において,クラウドソーシングの利用が始まり,十年近くが経とうとしている。海外では,クラウドソーシングを利用してデータを収集し,研究を行っている。今後も,クラウドソーシングは利用され続けるであろう。こうした現状に反して,日本では,心理学研究において,クラウドソーシングはまだまだ利用されていない。

そこで,今回は,自分の経験に基づいて,「クラウドソーシング」を使った心理学の調査について説明しようと思う。




クラウドソーシングとは?

クラウドソーシングとは,不特定多数の人の寄与を募り,必要とするサービス,アイデア,またはコンテンツを取得するプロセスである。このプロセスは多くの場合細分化された面倒な作業の遂行や,スタートアップ企業・チャリティの資金調達のために使われる。


つまり,クラウドソーシングとは,ネット上で不特定多数の人に業務の受発注を行うサービスだ。

クラウドソーシングの基本的な仕組みは,以下の通りである。

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まず,クラウドソーシング運営会社がある。そこに,「発注者」と「受注者」の役割がある。発注者は,クラウドソーシング運営会社を通じて,受注者(クラウドワーカーとも言う)に仕事を依頼する。受注者は,発注者の仕事に応募する。発注者は,受注者が仕事を完了すれば,報酬を支払う。

この仕組みの中で,心理学の質問紙調査を行うことができる。


心理学の質問紙調査

従来の心理学研究のほとんどは,「大学生」を対象に調査を行い,新たな知見を提供してきた。しかし,そこで対象となってきたサンプルは,国籍や人種,年齢などの点で偏りがあると考えられる。偏ったサンプルのデータから得られた研究知見は,一般化可能性に限界があると言える。


質問紙調査については,こちらの記事に書いている。

心理学では,質問紙調査をすることが多い。質問紙調査は,紙ベースで行う時もあるが,最近は,Webで行うことが増えてきたのではないだろうか?

質問紙は,例えば,Googleフォームを使って,簡単に作れるようになった。Googleフォームを使えば,Web上で,質問紙調査を行うことが可能になる。


Googleフォームで質問紙を作る方法

最初に,どんな心理尺度を使うかを決めよう。心理学の調査では,心理尺度を用いる。調査目的に沿って,心理尺度を適切に選ぶ必要がある。心理尺度を選んだ後,Googleフォームで質問紙を作っていく。

【手順】
1. Googleドライブにアクセスする。 
 Googleドライブのホーム画面で,左上の「新規」をクリックする。その一番下の「その他」をクリックすると,「Googleフォーム」が表示される。これをクリックすれば,Googleフォーム作成用のページに移動する。

2. 心理尺度の質問項目を入力する。
 質問項目の回答方法には,いろんな選択肢があるので,興味のある人は体験してもらいたい。以下に,選択肢の例をいくつか挙げるが,ほかにもある。

 ・記述式:自由記述式で短文の回答を想定した方法
 ・ラジオボタン:選択肢を縦に並べて表示する方法
 ・チェックボックス:複数の選択を求める際に使う方法

3. Googleフォームを送信する。
 Googleフォームを送信する方法には,以下のやり方がある。

 ・メール
 ・URL
 ・SNS



クラウドソーシングは,クラウドワークスを使う

近年は,多様なサンプルからのデータ収集を目的としたクラウドソーシングの利用に注目が集まっている。特に,海外の心理学ジャーナルでは,クラウドソーシングで参加者をリクルートした研究が急増している。

この記事では,私が使った「クラウドワークス」を紹介する。

クラウドワークスでは,比較的簡単に,データを収集することができた。私は2回ほど経験したことがあるが,2回ともデータは,翌日には集まっていた。集めたデータ数は,250名程度であった。アンケート協力への報酬は,300円から500円ぐらいに設定したが,100円から200円ぐらいでも回答してくれるかもしれない。調査費用は,10万程度である。



調査会社に依頼するより安い

これからは,クラウドソーシングを使って,質問紙調査を行っていくのが良いと思う。私は,学術研究で,調査会社を使った経験もあるが,調査会社は高い。アカデミック割引をされたとしても,10万では調査できない。その点,クラウドワークスは,低コストかつ短時間で,データが収集できたので,かなりお勧めする。




参考文献

白木優馬・五十嵐 祐 (2015). 心理学研究におけるクラウドソーシングの利用. 名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要 心理発達科学, 62, 97-106.

白木優馬・五十嵐 祐 (2018). クラウドソーシングを利用したアンケートデータ収集のノウハウと課題 デジタルプラクティス, 9, 874-885.

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