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映画『恋する寄生虫』 (ネタバレ感想文 )なかなかSF。孤独なファイト・クラブ。

私は小松菜奈を「ジャンヌ・モローになれる逸材」だと思っています。
いやもう「日本のジャンヌ・モロー」と呼んでもいい。
『渇き。』(2014年)の小松菜奈が最高で最強すぎて、私の頭には未だその幻影が寄生しています。彼女は常に男を翻弄する立場であってほしい。
そんな理想の「ツンデレ小松菜奈」が見られる映画です(<頭に虫が湧いてる感想)。

誰もが生きづらさを感じる時代が生んだ作品

この映画はSFです。
「生きづらさ」を抱えた人がいることを知ってもらうことが目的ではありませんし、「生きづらさ」の現実的な解消を示唆するものでもありません。
この映画の「生きづらさ」はSF的設定です。
言わばサイエンス・フィクションの「装置」。
「生きづらさ」をエンタメ素材とすることに不快感を覚える人もいるかもしれません。
でも私は共感できます。
いいえ、小松菜奈ちゃんにツンデレされたいからではありません。
誰もが何かしら「生きづらさ」を感じている世の中だから(もちろん人によって差はあるでしょうけど)。
むしろ、そういう時代だから生まれた映画だと言えるかもしれません。

この「SF装置」がもたらす「映画的設定」は「孤独」です。
重要なのは、潔癖症でも視線恐怖症でもなく、「孤独」なのです。
孤独が何を引き起こすのか?
林遣都だけを切り取れば、まるで『ファイト・クラブ』(1999年)。
小松菜奈だけ切り取れば、『ブレードランナー』(82年)のレプリカント。
そしてその二人が重なると『ロミオとジュリエット』なのです。

こんな与太話はさておき、私は小粒だけど可愛い佳作だと思います。正直、予想外の拾い物。万人におススメはできないけど。
純然たる男女の恋愛物語を久しぶりに観たせいかもしれません。
ちなみにジャンヌ・モロー曰く「愛はポタージュ」だとか。
「最初の何口かは熱すぎて、最後の何口かは冷えすぎている」

孤独は人を攻撃的にし、誰かと一緒だと優しくなれる

どうやら「孤独」は人を攻撃的にするようです。
この映画の林遣都は「破壊」の方向に向かいます。だから『ファイト・クラブ』。肌荒れするほど過剰に手を洗うのも自傷行為の一種です。『ファイト・クラブ』の殴ることに相当します。
小松菜奈の「孤独」は、林遣都との関係(孤独でない感情を知る)を経て、「自殺」という自己に向けた攻撃性に至ります。
「孤独」がもたらす「攻撃性」は、「他者」か「自己」のいずれかに向かうと言われます。前者が米国に多い銃乱射事件、後者は日本に多い自殺。
そういった意味では、無差別殺傷事件などは日本がアメリカ化してきた一例かもしれません。ま、映画と関係ない話ですけど。

また、映画は寄生虫ですが、人間は「腸の微生物」に支配されているという「説」もあります。
人間の身体は食べた物で構成されています。当然ですね。食べた物を栄養として体内に取り込むことに大きく寄与しているのが腸の細菌。何十年、何百年もの時間をかけて、その人種の生活環境に合わせた腸内環境になっていくと言われています。
実際、欧米人は海苔を消化できないらしいですよ。奴らカリフォルニアロールとか喰ってますが、そのまま排泄されてるんですよ(正確には生海苔を消化する酵素がないらしい)。
この数十年で日本人の食生活は急速に欧米化しました。こうしたことが、「攻撃性」のアメリカ化に繋がったり、不調をきたす人が多かったり、街にマッサージ店が溢れかえっている一因かもしれません。
ま、映画と関係ない話ですけど。
(2021.11.28 角川シネマ有楽町にて鑑賞 ★★★★☆)

監督:柿本ケンサク/2021年 日(2021年11月12日公開)



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