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アフターピルと彼と私。

ゴムなしのセックスについて書きたい。
苦手な人は見ないでほしい。



私はゴムなしのセックスが嫌いだ。

どれだけ好きな相手でも、ゴムをしない時点で一気に冷める。
別れへのカウントダウンが始まる。

理由は2つ。
1つは、まだ母親になる覚悟ができていないということ。
"自立している" とさえ胸を張って言えないのに親になるなんて想像もできない。結婚も未知の世界だ。

2つ目は、自分の自信のなさ。
これが一番大きい。1つ目の理由もここからきているのだと思う。

誰になんと褒められようと、私はこれでもかというほど自分に自信を持てない。この自信のなさは主に恋愛で発揮される。
"好き" と言われても "私の事を好きになるはずなんてない" と思ってしまう。
だからいつも両想いには時間がかかる。
相手が誠心誠意、精一杯の勇気を出してかけてくれた告白の言葉も、あっけなく散らしてしまったりする。
付き合ってからはいつ失っても傷つかないよう、淡白なふりをしてしまう。
本当は大好きなのに、失う時の悲しみを考えて、そっけない態度で距離を保とうとしてしまう。

自他ともに認める不器用女だ。


だからこそ順番は守りたい。
どれだけ好きで、愛していて、この人と結婚したいと思っても
順番が変わるだけで私は不安になる。
"子供ができたから仕方なく一緒になるのではないか"
絶対にそう思ってしまう。
だからゴムなしのセックスは嫌いだ。


アフターピルを飲んだあの日、
混み合う院内で看護師にものすごい勢いで怒られた。
相談したいこともたくさんあったのに。
何一つ言えず、何も聞けず、ただただ怒られて、薬の説明を受けて、そのあとの対応も聞いて、また怒られて、帰ってきた。

私の中出し相手は結婚予定の相手だったというのに。
そんなに怒らないで欲しかった。
命を大事にする病院で、生まれてくる赤ちゃんを心待ちにしている人が集まる産婦人科で、子供が欲しくて頑張っている人の隣で、私はアフターピルを依頼した。当然の報いかもしれない。

でもひとつだけ言わせてほしい。

レイプされている可能性もあるんだから、そんなに最初から怒らないで欲しかった。もう少しだけ、せめて話を聞いてから、なぜアフターピルが欲しいのかを聞いてから、怒ってほしかった。
いずれにせよ、私は怒られる運命なのだけど。


1つ歳上の彼氏からはずっと結婚の話をされていた。
私もこの人と結婚するんだって当たり前のように2人の未来を描いていた。
なのに、パカってされていない、という理由で私はプロポーズともとれる言葉を何度も保留にして、一緒に住む話も冗談のようにはぐらかした。

"パカってするから指輪のサイズ教えて"
"そんなの測ったことない"

聞いておいてしてくれないんだろうな。
自分の気持ちに防御線を張りつつ少し期待して、一緒にサイズを測りに行ったこともあった。今でも覚えているだろうか。

結婚をせがむ彼、もう少し待ってほしい私。
半年ほどこのやりとりを続け、ようやく私の気持ちが結婚を受け入れた頃、ちょうど彼の誕生日がやってきた。

休みを合わせて、少し早めのお祝いをした。
奮発して高いレストランでコース料理を堪能して、彼の希望で東京タワーの見えるホテルに泊まった。

言うまでもない。アフターピルを飲んだのはこのあとだ。

もともとゴムが苦手な彼氏。
私の心の準備ができていないこともあり、いつも私の気持ちを優先して気にかけてくれてはいたが、この日はテンションが上がったらしい。あの日、私は人生初の中出しセックスを経験した。
あとからだんだん不安と焦りが込み上げてくる私に、"もう順番逆でもいいでしょ。ダメだった?"なんて彼は呑気に聞いてきた。私の初めてをよくもそんなにあっさりと何事もなかったかのように扱ってくれるな、と少し寂しさを覚えた。

既にこの頃には、彼は私のことを彼女とは呼ばなくなっていた。冗談とも本気ともとれない口調で、妻、奥さん、嫁、とコロコロと呼び方を変えては私を呼んでいた。
私も気持ち的には婚約していたけど、パカってしてほしくて、あのとき一緒に測った指輪のサイズの意味を確認したくて、わがままにも、"彼女"であり結婚も婚約もしていないことを強調してきた。

はずなのに。

彼の言葉を借りれば、あの日は私もテンションが高かったんだと思う。
いずれ結婚するわけだしいいか、と思って拒否の意思を示さなかった。
完全に落ち度は私にある。

だからアフターピルをもらいに行ったのも72時間ギリギリだった。
できてたら結婚が形になるからよし。
いや、でもいずれにせよ結婚するならちゃんとパカってされたい。
でも待っててもされないかもしれないからよいきっかけかもしれない。
そんなことをグルグル考えていたら48時間が経過していた。

迫りくる時間。
結局パカってされたい、順番を守りたい、この欲求に勝てずに私は病院に足を運んだ。怒り心頭の看護師によれば、なんともタイミングよく、あの日は危険日だったらしい。もはやアフターピルなど効かないかもしれない。

私の思いなんて露知らず、彼は呑気だった。
いつもと変わらず私と接し、いつも通りの生活を続けていた。
なんなら海外出張にも行ってしまった。
子供出来てたら一緒に頑張ろうな、なんて呑気なLINEが届いた。

結婚すると心に決めた相手でも、やはり順番は守りたい。
形になっていないと私は不安だ。
"結婚しよう"
"うん"
たった2行のこの確約が先に欲しかった。
保留にしていたのは私の方なのに。
どこまでも私はわがままで、自分に自信がもてない。

"子供ができたからじゃなくて、好きだから結婚しようって言われたい"
あとから吐き出した私の言葉はあっという間にかき消された。
パカってされる日は来ないかもしれない。また心に防御線を張った。

形で示してほしい私。そうは思ってなさそうな彼。

ゴム無しセックスから浮き出る違い。

"結婚"という同じ未来を見ているのに。


"外に出すからいいでしょ"
よく聞くそのセリフに女は何度激怒してきただろう。

父親になる自覚と母親になる自覚を比較すると、圧倒的に男の人の方が自覚に時間がかかる、とどこかで聞いた。本当だろうかと疑う反面、セックスの度にいつも納得をする。

いつだって女は気持ちを形にして欲しくて、言葉が欲しくて、はっきりまっすぐわかりやすく伝えてほしい、生意気な生き物だ。

一方で男の人は、事実に気持ちを貼り付けていく。
一緒にいるってことは好きってこと
パパになってもいいと思ったから中出しした
わかってはいるけど、物足りない瞬間は間違いなくある。
少なくとも私はそんな女だ。


プロポーズなんて、女子を喜ばせるためだけのイベントなんだろうな。
プロポーズなんてなくてもいいって言ってる男の人、よくいるもんなあ。

私がパカってされる日はいつか来るのだろうか。

未熟ですが、精一杯気持ちを文章にしていきます。よろしくお願いします。