見出し画像

【スターバックの本棚】「戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦」

「戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦」/ 鈴木まもるさん 文・絵 あすなろ書房 

この絵本で書かれていることは、第一次世界大戦の時に、戦場で実際にあった話です。イギリス、フランス、ロシア、日本などの連合国軍と、ドイツ、オーストリアなどの同盟国軍が戦ったのです。戦いは大砲や、銃を撃ったり、剣でさしたりなのですが、銃で撃たれないように、「ざんごう」というかくれる場所を掘って、相手と撃ち合ったのです。

その夜もイギリス軍の兵士は、ドイツ軍との銃の打ち合いで、疲れ果てざんごうで休んでいました。その時です。何か聞こえて来るのです。
それは、むこうのドイツ軍のざんごうから、「きよしこのよる」の歌声でした。

12月24日 クリスマスイブのことでした。
言葉は、違うのですが、メロデイは、一緒なのです。こっちも歌おうか。となり、こちらの連合国軍の兵士たちも、「きよしこのよる」を歌い始めるのです。
ドイツ軍もこちらが、歌っているのがわかって、パチパチと拍手の音が聞こえてくるのです。
暗い夜空に、両方のさんごうから色々なクリスマスの歌が流れていました。

翌日、12月25日
ドイツ軍のざんごうを見張っていた兵士が叫びました。「敵だ!」でも、なんだかいつもと様子が違っていて、銃も持たずに、手をふってこちらにも出て来るように誘っているような感じなのです。昨日「きよしこのよる」を歌っていたざんごうからドイツ兵が、手を上げてゆっくりこっちに歩いてきます。それで、イギリス兵もゆっくり歩いていくのです。
どちらのざんごうでも、他の兵士たちが銃を構えたまま、二人が近づいていくのを、息を止めて見守っています。相手の目の色や、髪の毛までわかるほど近づきました。

ドイツ兵が、上げていた右手を下げ、前に出しました。
若いイギリス兵も右手を出しました。
『メリークリスマス』といってふたりは、がっちりと握手しました。
ざんごうにいたほかの兵士たちも、皆出てきました。みな口々に、メリークリスマスと言って握手して、嬉しい気持ちを伝えあいました。
お互いに、家族の写真を見せ合ったり、食べ物やお酒を持ってきて分け合い一緒に食べる人もいます。
若い兵士は、来ていた上着を丸め、ひもでぐるぐるしばりました。
そして、サッカーをはじめました。みな子どものように笑いながら、走り、ボールを追い、ゴールにけりました。

夕方になり、自分たちのざんごうに帰らなければいけません。
みな、笑いながら握手をして、また会うことを約束してそれぞれのざんごうに帰っていきました。

1914年12月25日、クリスマスの日にイギリス軍と、ドイツ軍が戦場でサッカーしたという本当にあった話です。戦場の他の場所でも同じようなことが、いくつもあったそうです。
でも残念ながら、これで戦争は終わりませんでした。クリスマスが終わるとまた、戦争ははじまり、このあと4年間も続きました。

でも、ここでクリスマスを祝った兵士たちは、もう銃で相手を撃つことはせず、命令されると、銃を少し上に向け、空に向かって打ったそうです。大きな攻撃作戦があるときには相手に知らせ、気をつけるよう伝えたそうです。

国を大きくするために戦争するより、大切なものがあることがわかったからこの人たちは、戦争を止めたのです。

信じる宗教や、考え方がどんなに違っても、ふるさとの自然や、家族、子どもを大切に思う気持ちは同じです。他の命のことを思う想像力と、行動する勇気があれば、戦争をやめることができると思います。

最後のページの絵が、世界中の子どもたちが、手をつないで大きな輪になっているんですね。その中に、書かれている言葉は、何でしょう?「この星に、戦争はいりません。」

隆祥館書店にて、常備しています。配送サービスもしておりますので、遠慮なくお申し付けください。宜しくお願い致します。

隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?