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【スターバックの本棚】『時代のカナリア』

『時代のカナリア』 湯川れい子(著)/ 集英社

時代のカナリア

戦後、女性初の音楽評論家としてDJとしてジャズやポップスを日本に紹介し、ラジオやテレビの寵児となった湯川れい子さん。

ビートルズの単独インタビューやエルヴィス・プレスリー、マイケル・ジャクソン、シンディー・ローパー、オノ・ヨーコら世界の大スターとの交友でも知られ、この本ではジョン・レノンとオノ・ヨーコの秘話も明かしてくれています。
そんな湯川さんが今、絶対的に伝えたいのが「戦争反対!」と「差別反対!」。太平洋戦争の最中に子供時代を過ごし、父と兄を失い、疎開も経験。だからこそ無責任な命令と人命の軽い扱いには憤りを隠さず声を上げ続けてこられました。
さらに仕事上の「女性差別」や「いじめ問題」にも堂々と意見を公開し、フリーで仕事を続ける女性がキャリアを積む過程で直面した、さまざまな差別や壁を乗り越えた話には説得力があり、現代の働く女性への熱いエールにもなります。

「イギリスのロックグループで、ビートルズ以降のロックシーンに大きな影響を与えたレッド・ツエッペリンが、昭和46年(1971年)9月に初来日したときのこと広島公演を控えた9月27日の朝、彼らは原爆ドームと平和記念公園にある原爆資料館を訪問。
そこで「知らなかった広島の惨状」と「人類の非道の現実」を目の当たりにし、資料館を後にした時は目を真っ赤に泣きはらしていました。
彼らは、その夜の公演の収益の約700万円を「被爆者救済」のために使って欲しいと広島市に寄付したのです。(中略)
何ものにも縛られない、自由な心と身体の生き方そのものを表現する音楽が、ロックなのではないかということ。ロックとは、政治的な圧力にも、権威にも、お金にも屈しない、音楽することで連帯し、人種も言語も超えて、自由に平和に生きることを目指す音楽的な表現に他ならないということなのではないでしょうか。」本書より抜粋
彼らに、ロックとは何かを教えられた気がしました。

この本は、夢を追い続ければきっとかなう!とひたむきに生きた働く女性の昭和史であり、現在のさまざまな問題への“正論”提起でもある。世の中が戦争へ歩むときの空気や、地球環境の変化・食料不足がもたらす情勢の変化などにも警鐘をならす。まさに時代のカナリアとしての「大切なことを伝えたい!」と願う渾身の一冊です。

二村知子さん画像

隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/

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