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身震

しばらくして、久しぶりに友人に連絡をした。

唯一、心身の不調について話が出来そうな大学の同級生。彼女が精神科に通院していることを知っていた。

「久しぶり。元気にしてる?卒論全然進んでないんだけど、精神科に行かなくてはならなくなったてそれどころじゃないかも。」

陽気な彼女。あまり重い雰囲気にならないよう心がける。

「ひさしぶり。私が行ってる病院で良かったら、紹介するよ。待ち時間は長いけど、良い女の先生だよ。」

なんて話が早いんだろう。伝えられた番号に電話をして、初診の予約をとった。本当は初診の患者は3ヶ月待っているらしいのに、友人の紹介であることを伝えると快く診療時間外に受け付けてくれた。やはり持つべきものは友だ。

「無事に予約とれたよ。本当にありがとう。」

近々会う約束をして、感謝を伝えた。

それにしても3ヶ月待つだなんて、一体世の中はどうなっているんだ。

およそ2週間後、3歳の頃ぶりに精神科を訪れた。

受付はまあまあ広い。真っ白な世界だ。待合では、子供から高齢者までが長時間の待機に疲れたのか、だらんとだらしなく座っており、混沌としていた。

母とはバラバラに通され、ついに先生と対面する。学校の先生みたいに賢そうでキリッとした年配の女性だ。
「よく来ましたね。お友達のことはよく知ってますよ。」

そう言われただけで、ホッとする。

「私、全然眠れないんです。すごく、疲れました。」大学生とは思えない話ぶりだが、素直にそう話した。

「そうだよね。まずは最近どんなふうに過ごしているか、教えてくれる?スケジュールの紙を渡します。心理士とゆっくり書いてください。」

そう言って先生は、スケジュール帳みたいな紙を渡してきた。全く意識していなかったけど、人様に見せられるような生活をしていないな。大恥を描くことになるだろう。でも、仕方がない。

「もう一度発達検査をすると聞いてますが、いいですか?」

「はい。お願いします。」

「今日は眠剤を出しますけれど、精神状態についてこの後心理士に色々と話をしてください。時間は気にしなくていいのいで、なんでも話してね。」

奥から心理士がやってきた。綺麗なお姉さんだ。心理士か。私がなりたかった職業だ。私は患者側だったんだ。惨めだな。

大学の途中で、私は夢を諦めていた。資格を取得するためのカリキュラムを眺めて、とてもじゃないけどこんなの出来ない。そう思ったからだ。

少し心を閉ざした後、相談室に入った。


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